シーン4 あかりの苦悩
雷牙達が去った荒野で、あかりは力なく座りこんでいた。そのそばには大剣を背負った男が所在無げに立っている。
あかりに踏んづけられていたその男は、あかりに踏まれていた事は全く気にする様子もなく、むしろあかりが落ち込んでいるのでは無いかと気に病んでいるようだった。
そして彼の危惧通り、あかりは落ち込んでいた。
「弧次郎さんが……マスクドガイ雷牙が……あたしの敵だなんて……」
「そうか……。仲間だったのか……?」
男の問いにあかりはいったんうなずいて、何度も首を横に振った。
「仲間って言うか……憧れてたんです。
強くて……厳しいけど優しくて……悪を許さない正義の心……。
でも……」
あかりの言葉、そして先ほどまでの経緯。男は察してうなずくと、ゆっくりと口を開いた。
「仲間を失う事は辛い。
しかし、仲間が変わっていくのを見なきゃならないのはもっと辛い。
……そういう事か」
この人にも、同じような経験があるんだろうか――。
あかりは男の顔を見上げた。
「はい……」
その時、スマホが鳴った。
待ち受けに弧次郎のいないスマホ。メッセージ着信の通知が表示されている。
「あれ、メッセージ……?」
あかりはすぐにメッセージアプリを開き、内容を確認した。
「智恵からだ……。
……え? ホーキくんが消えてる?
そっか、じゃああたしのパートナーの弧次郎さんも消えてるのかも……。
もう一度、弧次郎さんを妄想し直せばいいのかな……?
でも……。本物が悪になってるのに……」
アプリの画面を見つめながら苦悩するあかり。
男はその太い腕を組んでからりと笑った。そして当たり前の事を話す顔で口を開いた。
「なら、無闇に探すより、身を潜めていた方がいいな。
落ちついて自分のパートナーを取り戻すんだ」
「え、でも……」
あかりは男の顔を見上げる。男は無骨な顔を不器用に歪めた。微笑んだつもりなのだろう。
「パートナーなんだろう?
なら、迷う事はない。状況がどんなに変わろうが、自分のパートナーを信じてやれるのは、自分だけだ」
「……そっか……そうですよね……!」
呟くあかりの瞳に光が戻る。その光は炎となって燃え始めた。
「よぉぉし、燃えて来たぁ!
もう一度! あたしのパートナーの弧次郎さんを、取り戻す!」
あかりは拳を握って立ち上がった。その顔にもう迷いはない。
男は大きくうなずいた。
「その意気だ」
男はそう言って一息つくと、頭をバリバリと掻いた。
「すまんが俺はもう行かなくては。
俺も、大切な仲間を捜している途中だからな」
そう言って、男はくるりと背を向ける。
「はい! ありがとうございました!」
男の背中に、あかりは勢いよく頭を下げた。




