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夢幻戦隊MSガールズ  作者: 硫化鉄
第十話 「彷徨」

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シーン3 智恵の悩み

 部屋に取り残された智恵は、一人考え込んでいた。


「新しいパートナーか……。

 そうだ、あかりと美佳は弧次郎さん達に会えてるのかな……?

 もしかしたら、弧次郎さん達も消えてるのかも……。

 教えてあげなきゃ……!」


 智恵はスマホを取り出して、あかりと美佳にメッセージを送った。

 アプリを閉じても、待ち受けにホーキングの姿は、ない。

 智恵はスマホをポケットにしまうと、ひとつため息をついた。


「パートナー……。

 アインシュタイン……? エジソン……?

 最先端で……不可能なんかない科学者……。

 ホーキング博士……。

 ううんっ! ホーキングなんか……っ!」


 モヤモヤする心、そのせいでまとまらない思考。

 智恵は頭を振った。

 身体を小さく丸めて座っている智恵の耳に、彼方から飛翔音が響いて来た。

 その音の主は急速に近づいて来て、窓の外に降り立つ。


「よっ、と。

 どうだ? 新しいパートナーはできたか?」


 窓から覗き込んだのは、アキラ・ユーマだ。

 智恵は顔を上げ、立ち上がった。


「うっさいわね。そんなに早くできるわけないでしょ!」


 強い言葉で言い返す智恵。だが彼女は、心の中がホッとするような安心感や喜びで満たされて行くのを感じていた。無論そんな感情は一切表情には出さない。そんな感情が生じているなんて、認めたくなかった。

 アキラは智恵の剣幕をいなすように、あっさりと言葉を返す。


「だろーな。まぁ、ゆっくり考えればいいんじゃねーの?」


「そういうわけにもいかないのよ。早く戦う力を取り戻さないと……」


 智恵は素直に、自分の中の焦りを口にした。

 安心しているとか喜んでいるとか、認めたわけではない。でも、強がるのも、反発するのも、もうどうでも良くなっていた。

 アキラはニヤッと笑った。


「そう焦るなって。焦ったって良い事はねぇ。また納得のいかねえパートナーが出来ても仕方ねえだろ?」


「それはそうだけど……」


「まぁ、ここに敵? が来たら、少しは俺様が保たせてやるよ。

 お前が大っ嫌いな魔法で、だけどな」


 アキラは窓枠に肘をついて、智恵と目を合わせ、ウインクして見せた。


「……うん」


 こくりとうなずく智恵。


「へーえ、なかなか素直じゃねーの」


「今出来るだけの事をやらないと……後で後悔するからね」


 智恵は決意のこもった目をアキラに向けた。


「……だな。

 未来にいかなる運命が待ち受けていようとも、それを突破する知恵と力と勇気があれば、必ず打ち勝てる。

 そして、その知恵と力と勇気を手に入れるには、絶対にあきらめずに今をしっかり生きることだ。

 大切なのは、今。……なんてな」


 その言葉。

 智恵はアキラが言ったその言葉を知っていた。


「……! その言葉……。どこかで……!」


 智恵がハッとした、その時。


「さぁて、そろそろ頃合いかねェ?」


 窓の外から、女の声が響いて来た。


「……だれっ!?」


 窓の外に立つアキラの横に並んで顔を見せたのは、黄仙だ。

 黄仙はアキラに寄り添って立つと、部屋の中を覗き込んだ。


「あーあ。他の二人はお城だの北極だのいろんなところに行ってんのに、あんたは自分のお部屋かい?

 ずいぶんと夢のない夢だねェ?」


「ふん! ただの部屋だと思ったら大間違いよ!

 ここは……あたしの秘密基地なんだから!」


 黄仙は高笑いして智恵を見下ろした。


「おーーーーーっほっほっほ!

 秘密基地と言ったって、これだけ無防備に接近されてちゃ世話ないね!」


「ま、しゃーねえわな。

 俺様が出入りしてたし、考え事はあるし。

 秘密基地の防御には意識行ってなかっただろうしなー」


 面白そうに笑いながらアキラが言う。智恵はアキラを睨みつけた。


「そ、そうよ! ちゃんと責任取りなさいよね! あんたのせいなんだから!」


 だがアキラは、智恵の抗議など全く意に介さず、タバコを咥えた。


「俺様のせい? いんや、俺様のおかげ? 手柄? どっちかっつーとそっちじゃねーの?

 たいした事でもねーけどな」


 そう言ってタバコに火をつける。


「ど……どういう事よ……」


「おーーーーーっほっほっほっほ!

 ヌルいねえお嬢ちゃん? 最初からこの魔法使いは、あんたの敵なんだよ!」


 横を向いてタバコの煙をふーっと吐き出すと、アキラは智恵を見下ろした。


「セキュリティがあんのは、最初に来たときに身を以てわかったからなぁ。

 油断させて、そっちの意識をカットさせてもらったっつーわけだ」


「あんた……最初から……」


 悔しさに表情が歪む。騙された事より、裏切られた事より、自分が簡単に心を許しそうになっていた事が何より悔しかった。

 アキラはそんな智恵を眺めながら、上に向かってタバコの煙を吹き出した。


「チビ巨乳も悪くねえが、見てみ? こっちの爆乳。

 俺様、結構かなりおっぱいフェチなんだよねー」


「最っ……低……!」


 悔しい気持ちは、そっくりそのまま怒りに変換された。

 呪詛のような智恵の呟きを気にも留めず、アキラはからかうように、窓から顔を突き出してくる。


「へへーん、だったらどうする? イケメン科学者のパートナーはどうした?

 変身出来ないお前じゃ、単なるガキだもんな!」


 そのままアキラは集中し、呪文を唱えた。


「……集え! 光の矢!」


 瞬間、光の矢が無数に生成され、アキラの周囲に集まった。


「フォトンアローーー!!」


 光の矢は智恵の秘密基地に襲い掛かり、その全てを破壊した。ただ一人、基地の主である智恵を除いて。


「……ごほっ、けほっ……」


 もうもうとたつ埃の中で咳き込む智恵。アキラたちとの間を遮る壁ももう無い。


「これでお前の大事な秘密基地もスクラップだなぁ」


 嘲るようにそう言って、アキラは黄仙に視線を送った。


「おい、爆乳ねーちゃん、あとは自分でやんな!

 俺様、女子にイジワルするのは好きだが、痛めつけるのは趣味じゃねーんでな」


 黄仙は愛用のムチを取り出してニヤリと笑う。


「わかってるよ。あたしだって活躍したいさね。

 さぁお嬢ちゃん、覚悟おし?」


 黄仙のムチが風をまとい、渦を巻いた。


「くっ……! 一体どうしたら……!」


 必死で考える智恵。だがなす術は……。

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