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父上、私の夫を盗らないで!  作者: ひろの
第二章 ブランド戦争編

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25/29

第25話 冒険がデートなの??

(えー!!

 ちょっと待ってー!!

 冒険?

 ってことは危険なんだよね?


 私、あの熱帯雨林の中で死にかけたんですけどー?)


「ん?」


ヴァルが笑顔で首を傾げた。


「あ、いえ……」


(あー、なんか話の流れで旅行にでも行く気分になっちゃったけど。

 これってもしかして、ヴァルからしても新婚旅行のつもり?!

 いや、仮にそうじゃなかったとしても、デートか何かだと思ってる?


 ん~。普段奥手のヴァルだから、誘ってくれるのはすごく嬉しいけど……。


 なんか違うぞー、ヴァルー!!)


「それに……」


ミレイユの混乱をよそに、ヴァルが平然と続けた。


「これは君の事業だ。

 君が中心になって、私たちがそれを支えたい」


「ヴァル……」


(いや、ありがたいけどー。

 ありがたいよ、その気持ち。

 でも熱帯雨林の冒険~!?)


ヴァルが、ミレイユの手を握った。


「一緒に、行こう」


「……」


(温かい手に、優しい目。

 嬉しいと思う気持ちもあるの。


 ……あぁ、押し切られちゃう~)


「はい!」


ミレイユは力強く頷いた。


「一緒に行きましょう!」


二人は笑い合った。


(ヴァルと冒険。トラウマがぁ……。

 でも、考えようによっては二人で危険を乗り越える旅って……。

 物語みたいで素敵なのかも。


 うん!いっくぞー!!)


そこへ、父が割り込んできた。


「もちろん私も同行します。

 目的の果実を見つけたとしても、そこまでの開拓ルートは実際に見ておいた方がよいので」


(え?二人きりじゃないの?

 もう!父上、いつも邪魔する!

 いっつもいっつも!私の夫を盗らないで!)


「さらに護衛は15人用意します。ベテランの探検家を揃えます」


(え?それじゃムードも何もないじゃない!)


「あぁ、手配を頼む。安全第一だ」


(……なんだ。二人きりの冒険を期待してたの私だけか)


「ミレイユ、とても危険な冒険になるが、確実に成功させるぞ!」


ヴァルが軍人らしく凛々しい顔を向けた。


「あ……はい!」


(二人きりじゃない……ま、そんなの当たり前か。


 ってことはさ。冒険する意味あるー?)


◇◇◇


その夜、寝室にヴァルがやってきた。

突然だったので驚いたが、ミレイユはヴァルを招き入れ、二人でベッドに並んで座った。


「ミレイユ」


「はい」


「昨日のデート……」


ヴァルが照れくさそうに言った。


「楽しかったか?」


「……」


ミレイユは少し黙った。

正直に答えるべきか迷ったが――。


「ごめんなさい」


そのまま素直に謝った。


「仕事のこと、考えてて」


「……」


「ヴァルとの時間、ちゃんと楽しめなくて」


「いや」


ヴァルが微笑んだ。


「わかってる」


「え?」


「君が頑張ってるのは、よくわかっているんだ」


ヴァルがミレイユの頭を撫でた。


「だから、今度は――」


「今度は?」


「一緒に冒険しよう」


ヴァルが優しく言った。


「仕事も一緒にするんだ。

 そうしたら二人で共通の目標に向かって頑張れる。

 一緒に楽しむことだってできる」


「……!」


胸が熱くなった。


(ヴァルが理解しようとしてくれてる。

 私の気持ちを)


「ありがとう、ヴァル」


「いや」


ヴァルが照れくさそうに笑った。


「夫婦だから」


「……」


「一緒に頑張るんだ」


「はい!」


ミレイユが力強く頷くと、ヴァルがそっと抱き寄せた。


(温かい。優しい。

 うん、頑張ろう!


 ヴァルと、一緒に)


◇◇◇


翌日から伯爵邸は慌ただしくなった。


冒険のための道具を用意する者。

探検家と打ち合わせて、最適なルートを計画する者。

護衛部隊を編成する者。


ヴァルや父上も、その準備に加わっていた。


「ミレイユ~?」


聞き慣れた声に振り返ると、母上が笑顔で立っていた。


「母上!」


「ねえ、これ何?」


「あ、はい。

 ニャルシア・ベリーとニャグネム・サンメロンのサンプル確保と、採取ルートの確認をするため、ヴァルと一緒に冒険してきます。

 皆さん、そのための準備に追われています」


母上が怪訝そうな顔をした。


「冒険……?」


「えぇ。

 とはいえ、ヴァルと二人きりというわけではないので、旅行気分にもなれませんけど」


「へぇ……?」


「母上?

 ヴァルって、もしかしてデートに誘うくらいの気持ちで冒険を持ちかけてきたんですかね?」


母上が盛大に噴き出した。


「ぷふっ!

 あーそうかも!ヴァル様らしいね。

 うんうん。それならきっと楽しくなるよ!」


「母上、他人事みたいに言ってー!

 冒険って危険なんですよ!」


「ははは、頑張ってね、ミレイユ。

 そういうことなら冒険してもいいんじゃない?


 いってらっしゃーい!

 お土産、期待してるぞー?」


「あー、はい」


そう言うと、母上は辺りを見回し、時折笑みをこぼしながら男爵邸へ帰っていった。


「何しに来たんだろう?」


少しだけ考え込んでいたミレイユが、突然目を見開いた。


「そういうことなら??」


(待って待って!

 それって本来なら冒険なんてする必要ないってことの裏返し?


 デートだったら行ってらっしゃい。そうじゃなきゃ、そんな馬鹿なことやめなさい。


 母上が言いたかったのは、そういう意味??)


「あ!!」


ミレイユが思わず大声を上げると、辺りの使用人たちが驚いて振り向いた。


「あ、驚かせてごめんね、何でもない」


(私は農家のおじさんが栽培してないから、現地で調達するしかないって思い込んだ。

 でも、ホテルにはちゃんと商品が揃ってた。


 これって、現地から仕入れる物流ルートが、すでに平民ネットワークにはあるってことよね!!)


「市場の人たちに聞かなきゃ!!」

挿絵(By みてみん)

【あとがき】


第25話をお読みいただきありがとうございました!


いや、デートか旅行みたいな流れになってますが、トラウマの残る熱帯雨林です。

本当は嫌ですよね(笑)


でも、仕方ないかと思った所で、また母上登場!

さて、この冒険どうなることやら??

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