10月13日(木)13:00
「ただいま……」
「やっと戻ってきたか。遅かったな」
「思いの外、人が多くて時間がかかってしまった……」
疲れたような声を出しながら教室へと入ってきた四月一日くんは、大事そうに深さのある紙皿を両手で支えている。そして腕には、お馴染みのパン屋の袋がかかっていた。なるほど。両方買ったんだね。
「パン買ってスープも買ってたらそりゃ時間かかるわ」
「人が分散する分買いやすくなるのではないかと思ったんだが、全然そんなことなかった」
「購買のスペースが広くなるわけでもないし、単純に混雑が増すだけだな」
まだそんなに寒くないとはいえ、おいしいスープは当然人気商品だ。売り出せば多くの生徒が買い求めるし、パンと一緒に食べようと思う人だってきっと大勢いるはずである。今回、四月一日くんは無理に限定品を狙いにいかなかったようだし、普通に購買へ行って普通にパンを買おうとしている間に、スープの方もどんどん人が増えて大変な混み具合になっていったのだろう。
「やはり購買は戦場だな。限定品など関係なく、単純に早く行くほど有利になって、結果的に時間も有意義に使える……」
「確かに、購買であたふたしてる時間って無駄以外の何ものでもないよね。早く買えるにこしたことはない」
「結局、スープ売りがどこから来ているかも聞けなかった」
「あ、聞けなかったんだ」
「どんどん生徒が来て忙しそうなのに、のんびり話しかけるわけにもいかず……」
「お前にもそういう常識はあったか。まあとりあえずさっさと食えよ。せっかくスープ買ったのに冷めるぞ」
「う、うむ」
疲労感からかなんなのか、なぜか突っ立ったまま購買の感想を述べていた四月一日くんだったが、五十嵐くんに促されてようやく自分の席に腰を下ろす。そしてそのまま、大事に手に持っていたお皿をゆっくり口へと運んでいった。
「……え、うまっ」
「だろ」
「四月一日くんの心からのうまい、いただきました」
隣の席の四月一日くんはどうやら購買のスープが大層お気に召したらしい。




