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失恋して凹んでいたら異世界で聖剣の主になってしまいました!?  作者: ルビィ


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第6話 聖剣の主

「ん? どないした?」

 ルスさんが振り返る。


「聖剣の主……やっぱり……」


 颯太……やめて。

 そんなキラキラした目で私を見ないで。


「やっぱりそんなことだろうと思ってたよ! リア! 君が聖剣の主だったんだね!!」

「ち、違うから!」

「は? なんやて?」

「どういうことだ?」


「そんな歴史上の人物に出会えるなんて、この世界……ゴホン、ここに来て、君に会えて良かった! 心から嬉しいよ、リア!」

「違うってば~っ!」


 私の手を握り込んで見つめてくる颯太。颯太の期待が重くてつらい!

 私はただの莉央なのに!

 否定する私をスルーして、颯太は森で私が剣を見つけたことを周囲に話して聞かせた。


「まさに、彼女だけが剣に導かれてそこにたどり着くことが出来たんです! 俺は偶然にも一緒に行動していたお陰でその場に居合わせることができました! 今思い返すと、奇跡の瞬間でした!」

「お~そないなことが……いくら探しても見つからへんかったのに」

「た、確かに、あの実力ならあり得る……!」

「女神じゃなくて聖剣の主様……!?」

「只者じゃないと思った……やっぱり推せる!」

「ぜひ聖剣の主様とお手合わせしたいです!」


「何という事だ……。我々は聖剣を探していたが……聖剣の主様を見つけてしまったということか……!?」


 グラパ団長さん、さらに息が荒くなってガクガク震えてるように見えるけど……大丈夫?

 やっぱり体調悪いんじゃない?


「あの、颯太はああ言ってますけど、本当に違うと思うんですよ。この剣はすごいですけど、私はたまたまそれを手に取っただけですから」

「いや、その剣はリアにしか振れないはずだ。俺には持つこともできなかった。皆さんも試してみるといい」

「なるほど。ではリア殿。不肖私、グラパにその剣を握らせていただけますかな?」

「あ、どうぞどうぞ」


 私は団長さんに剣を差し出す。

 団長さんが受け取る……と思ったら、彼は剣の重みに耐えかねてかそのままぐらっとバランスを崩して膝をついた。

 しばらくうんうん唸っていたが、どうやっても剣を持ち上げることができないようだ。


「お……重い……。私には無理だ……」


「すげえ……やっぱり本物じゃん!」

「団長! いやリア殿! 俺にも! 俺にも試させてくれ!」

「俺もだ!」

「ぼ、僕もお願いします!」


 他の騎士さんたちも代わる代わる剣を手にするが、誰も振るどころか、持ち上げることもできなかった。

 颯太は勝ち誇ったようにニヤニヤしているし、私は逆に呆然だ。

 まさか、本当に私なの!?

 聖剣の主なんて肩書、荷が重くない!?


 団長さんを中心に騎士さんたちが揃って跪いている。


「大変失礼いたしました。聖剣の主様をお迎えできたこと、まことに光栄です。是非とも我が領主様にご紹介させてください」


 えええええ~~~~!?


 人に会えてホッとしたのも束の間だった……。

 私がぼんやり想像してたのは、小さな村みたいのがあって、そこで親切な人にいろいろ教えてもらって、何か仕事を探せたらとか……そういうのだったのに。


 聖剣とか、領主様とか、初めての異世界でハードル高いよ……もう帰りたい!

 帰れるとこなんてないけどね!


 彼らの話によると、ここはルーベイル王国のカロリエ領。

 カロリエ伯爵が治める土地らしい。

 彼らはカロリエ伯爵に仕える騎士団の者だという。


 元々騎士団には行くつもりだったし、他にあてもないので仕方なく皆さんについて行く。


 彼らの言った通り、森を抜けるとすぐに煉瓦作りの無骨な建物が見えた。

 建物の前には幅広い道が通っていて、目の前には緑豊かななだらかな斜面が広がっている。民家らしき家が数件見え、そのさらに奥には山並みが続いていた。

 いつの間にか日が傾いてだんだんと辺りが夕陽に染まっていく。 

 日本の都会とはかけ離れたのんびりしたのどかな風景だ。


「領主館に知らせを送りました。おそらくこのまま直接行っても歓迎されるとは思いますが、もう夕刻ですしこちらで着替えなどされて明日改めて向かわれてはどうかと思いますが、いかがでしょうか?」

「着替え……」


 団長さんにそう言われて改めて自分の服装を見る。

 そういえば、誰も何も言わないから気にしてなかったけど、返り血浴びてるしかなり酷い恰好だった!


「は、はい! そうさせてください!」

「できるだけ準備をしていきたいのでそうしてくださると助かります」


 颯太も私に続いて言う。

 ん? 颯太は私ほど汚れてないと思うけど、何を準備するんだろう?


 大きな鉄板張りの門扉を開けると、騎士さんたちが大勢待ち構えていた。


「おお~あんたが聖剣の主様!?」

「すげえ美少女じゃん!」

「胸でけえな!」

「握手してくれ!」

「聖剣に触らせてくれ!」


「うるっせえな! むさくるしい野郎どもはすっこんでな!」


 私に向かって集まって来た騎士さんたちを蹴散らすようにその後ろから出て来たのは、周りの人たちに負けないくらい筋骨隆々の女の人だった。

 女の騎士さんもいるんだ!

 かっこいい!


「おお、マリア、丁度いい。リア様を身綺麗にして着替えさせたいんだが頼めるか?」

「ああ、もちろんそのつもりだよ。まかせな!」

「リア様。これはマリア。柄は悪いが根は悪い奴じゃないから安心してくれ」

「はい、マリアさん、リアです。よろしくお願いします!」


 団長さんに紹介してもらい、マリアさんについていく。

 颯太は団長さんに連れられて反対側へ歩いて行った。


「その剣、鞘はないのかい?」

「え、ええ、このまま岩に刺さってたので……」

「ん~そのままってのもなんだねえ。とは言えうちに置いてあるやつじゃ形が合わなそうだし……」

「確かに、このままだとちょっと……こう、自由にしまえたらいいんですけどね」

「は? 何言って……」


 私は異世界にありがちな空間収納みたいなのをイメージしたんだけど、まあ、そんな上手い事できるわけないよね。

 ……と思った瞬間、剣が私の手から消えていた。


「えっ!?」

「は!? はああっ!???」


 ない。さっきまであった剣が。

 まさかと思いながら、私は剣を取り出すイメージを浮かべてみた。

 剣が当然のように現れた。


「……」

「ちょ、ちょおっ……! な、なんだよ今のは!?」


 私はもう一度剣をしまい、出す行為を繰り返した。

 間違いない……この剣は出し入れ自由のようだ。

 いや、めっちゃ助かるけど!!!


「どうやら、出したりしまったりできるみたいです……」

「はああああああああ!?」


 マリアさんは驚いてしばらく固まっていた。

 うん。私だって驚いたんだから、そりゃ驚くよね……。

 颯太に話したらきっと眼をキラキラさせて喜ぶんだろうな。

 颯太の嬉しそうな顔が目に浮かぶよ……。


 その後、ようやく再起動したマリアさんに案内されてお風呂に入った。

 異世界の生活レベルはどうだろうってちょっと心配してたけど、ちゃんとお風呂があったよ! よかった!

 なんでも数年前に隣国で温泉が流行って、その影響でこの国でもお風呂に入る習慣が広まりつつあるのだそう。

 異世界で初めてのお風呂、あったかくて気持ちよかった!


 そしてお風呂から上がると。

 脱いだ服の代わりにフリフリのワンピースが置いてあった。

 ……なんで?


 そして──鏡!

 鏡があった。

 異世界で初めて自分の顔をちゃんと──

 え? え? えええええ!?


 予想はしてたけど! でも! 予想よりめっっっちゃ綺麗! 可愛い!

 流れるような金髪に翡翠色の目。お人形さんみたいだよ。

 これが……本当に私!?


「おー似合う! ちょっと大きいけどまあそこはご愛嬌だわ。あたしゃこう見えても可愛いものが大好きでつい買っちまってさ。けどなかなか着る機会がなくてね。こりゃこうしてあんたに着せるためだったのかもしれないね!」


 私の動揺には気づかず一人でうんうんと頷いてるマリアさん。

 確かにこんなに可愛かったらなんでも似合うよ! 我ながら!

 はあ……私こんな顔だったのか……。


 綺麗になりたいって言ったけど、そう思ってたけど。

 ……なんていうか、限度があるというか……。

 聖剣の主もだけど、中身に対して分不相応すぎる感じで落ち着かない。

 こんな気持ちになるなんて思わなかったよ!


 それから夕食に誘われ食堂に向かった。

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