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失恋して凹んでいたら異世界で聖剣の主になってしまいました!?  作者: ルビィ


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第2話 異世界転生!?

「え?」


 聞きなれない女性の声にハッとして振り返ると、公園の片隅に見慣れないのぼりが立っているのが見えた。

 のぼりには”占い”と手書きで文字が書かれている。手作り感満載ののぼりだ。

 その横には小さなテーブルと椅子が置いてあり、そこに腰かけた女性が私を見ていた。


 他に人影はないので声をかけてきたのはこの女性だろう。

 私はゆっくりとその占い師らしい女性に近づいた。

 長い金髪に青い目。外国人の占い師だろうか。すごく流暢な日本語だったけど。

 まあ、今はそんなことはどうでもいい。


「……そうです。もうこの世の終わりなんで話しかけないでください」


 きっぱりと言って踵を返した。

 すると占い師が慌てて声をかけてくる。


「まあまあまあ、お待ちなさいな! そんな顔で帰ったらお家の方が心配しますわ。お金はいりませんから座ってくださいませ。あなたのお悩み、聞いてさしあげますわよ?」


 お悩み……?

 占い師は椅子を指さして微笑んでいる。


 なんか胡散臭いけど……まあ、ちょっと時間つぶしてから帰ってもいいか。

 私が椅子に座ると、占い師がお茶を淹れてくれる。

 胡散臭い占い師が入れたお茶。

 はっ、もしかして……何かヤバい飲み物だったりして……?


「……毒入り?」

「あら、飲まなくても構いませんわよ」


 占い師は呆れつつも笑った。

 私の脳内でいろんな犯罪とか事件とかの記憶が駆け巡った。

 怪しい人にもらった怪しい飲み物といえば、毒かヤバい薬か……。

 ……なんて、まさかね。

 ま、それならそれでいっか。


「いただきます。そういえばこの世の終わりでした。これで死んでも本望です」


 一気に飲み干した。

 普通にお茶の味がした。

 うん、そうだと思ったよ。


「まあまあ。それで? どうしましたの?」


 占い師は目を細めて微笑んだ。

 私は話した。

 何もかも。


「私……バカですよね。告白もしてないのに失恋です。こんなことなら、もっと早く好きだって言えばよかった。そうすればその時は振られて泣いても、勝手に勘違いして颯太に迷惑かけ続けることなかったのに」


 涙がポロポロ零れる。

 見ず知らずの他人だと思うと気を使わなくていいし、醜態を晒しても恥ずかしくない。

 ただ黙って話を聞いてもらえることがすごくありがたかった。


「颯太に会ってからのこと全部なかったことにしたいです」

「それでこの世の終わりですのね」

「そうですよ。おかしかったら笑ってください」

「フフフ……まあ若気の至りってやつですわね」

「笑いましたね」

「フ……コホン、それで? あなたはこれからどういたしますの?」


 占い師に見つめられて考える。

 ……わからない。

 これからどうすればいいのよ。


「……無理。もう颯太に顔合わせらんない……」


 うつむいて額をテーブルにのせる。

 そのまま声をあげて大泣きした。


「仕方がありませんわねえ……残念ですが過去はやり直せませんわ。ですが、未来は変えていけます。その気があれば」

「え?」

「一緒にお茶してくださったお礼ですわ。ひとつだけ、お嬢さんの願いを叶えてさしあげましょう」

「……」


 ポカンとしてる私に占い師が微笑む。

 願い……?


「さあ、お嬢さんの願いは?」


 願いって……何よ。

 今さら何願ったってしょうがないじゃん!

 私はちょっと、いやかなりイラッとして、ものすごい勢いで頭を回転させた。


「む……胸が大きくなりたい!」

「は?」

「めっちゃスタイル良くなって、髪もこんなボサボサじゃなくてサラッサラで、えっと…とにかくめっちゃ美人になりたい! その……颯太に釣り合うくらいに!」


 頭をフル回転させて考えた末の願いがそれだった。

 願いなんて……!

 そんなのどうせ叶うわけないじゃん!

 どうでもいいわ!


 占い師は驚いた顔をしてしばらく固まっていたけど、やがて肩を震わせて笑い出した。


「ウフフフフッ、面白い子ですわね。気に入りましたわ! 一つって言ったんですけれど……いいですわ。その願い、叶えてさしあげましょう!」

「え?」

「覚悟はいいですわね。あなたは……」


 ──その瞬間、光に包まれた。

 眩しくて目を開けていられない。

 な、なによこれ!!!


 占い師の声が遠くに聞こえる。


「……ですわ。わかりましたわね?」

「え? 何!? 聞こえない!!!」



 座っていたはずの椅子の感覚が消えて身体がグラッと傾いた。

 足の下にあるはずの地面がない。

 何も見えない。

 ──そして



 ──気がつくとうつ伏せに倒れていた。


 湿った土のにおいがする。

 さっきまでいた公園じゃない。

 夕方だったはずなのに、ここは昼間だ。


「ここ、どこ……? え? それに、私……?」


 起き上がろうとしてまず感じた違和感。

 手をついて上半身を持ち上げると自然に目に入ってくるソレ……。

 胸が……デカい。


 え? え?

 えええええええええ!???


 慌てて立ち上がって自分を見下ろす。

 ミニスカートにロングブーツ。

 上にフード付きのハーフコートを羽織ってるけど、インナーはチューブトップで胸の谷間がまぶしい。

 でも全体的には華奢な感じで……多分、いや間違いなくスタイルが良い。

 鏡がないから顔は見えないけど、胸くらいまでの長髪は輝くようなプラチナブロンドでサラッサラ。


 まさか。

 ……まさか。

 願いを叶えるって……コレ!?


 しばらく呆然自失していたが、徐々に冷静になる。

 気を取り直して辺りを見回すと、ここは鬱蒼とした茂みや木々に囲まれている。

 どうやら森の中のようだ。

 建物っぽいものは全く見えない。

 注意深く辺りを観察していると、見た事のない植物が多い。


「もしかして……日本じゃない?」


 いや、日本じゃないだけならまだいい……。

 その可能性を思い浮かべて唇をかんだ。

 考えたくない。考えたくはないけど……。


「まさか……異世界、とか……?」


 ありそうな想像を口にしてみると、なぜかいろいろと腑に落ちた。

 そして同時に、背筋が凍った。


 怖い……。


 何の知識も準備もなくいきなり知らない世界に放り出されてしまった。

 これからどうやって生きていけばいいのか全然わからない。

 よくある異世界ファンタジーでは神様とかが出てきてちょっとは説明してくれたり、イイ感じのスキルをくれたりするものじゃなかったっけ?

 私にもそうしてほしかった!


 絶望で崩れ落ちるように膝をつく。

 そうして、なすすべもなくしばらく座り込んでいた。


 もしこの森に獰猛な肉食獣や、ファンタジーでお約束の魔獣やらがいるとすれば、いつ私がその餌になってもおかしくない。

 そうでなくても、自力で食料を調達できなければ遠からず飢え死にする。


 勘弁して……。サバイバルとか無理だよぉ……。


 あの怪しい占い師は意地悪な神様だったのかもしれない。

 だとしたら、もっとマシな願いを言えば良かったんだろうか?

 サバイバルに役立つ知識とか、能力とかを願っていたらきっと役に立っただろう。

 でもそんなの、今さら言っても後の祭りだよ!


 ……あれ、ううん?

 ちょっと待って、これってもしかして……私の……せいだったり……?

 ああ、そっか……私があんな願いを口にしたせいで……?


 だって、あんな願い叶うわけなかったんだ。

 元の世界では。

 だから……だから、別の世界で私の願いを叶えてくれたってことなんじゃない……?

 なんだ、そっか。そういうことか……。

 ……残念ながら、ちっとも嬉しく感じないけどね。


 これから颯太も、家族もいない全然知らない世界で、一人ぼっちで生きていかないといけないんだ。

 ……無理。やっぱりどう考えても無理だよ~!


「あの……」


 私が絶望していると、ふいに後ろから聞きなれた声が聞こえた。

 誰もいないと思ってたのに、人がいた!

 まさかと思いつつ、ゆっくりと振り向く。


「あの、大丈夫ですか?」

「え……っ」


 息を吞む。


 声をかけてきたのは颯太だった。

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