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私は啞然として、しばらく店長の所作を目で追った。鉄板の上で食欲をそそる肉汁が、じゅうじゅうと爆ぜている。スーツの男は、続いて出されたナイフとフォークを取ると、躊躇なく肉を切り、口に運んだ。
動画はすでに食肉加工場の様子を紹介していて、もう少女の姿はどこにもない。
「どうして、こんなに残酷なことを」
「今、残酷とおっしゃいましたか」西松は私の目を見て、言ってきた。「どうして、これを残酷だと思います?」
「だって、最初は明らかに女の子が愛情をそそいで」
言いながら、私の自信は少しずつしぼんでいった。その間もスーツの男は、牛が解体される場面を観ながら、むしゃむしゃとステーキを食っている。
「愛情」西松は無感情に言ってから、なおも続けた。「ペットと食肉用動物に、何か違いはあるでしょうか」
私が黙っていると、西松がさらに言葉をねじ込んだ。
「もはや愛情をかけられなくなった『家族の一員』は食肉か、または、それ以外になる、ということですか?人間の愛情が生き物の生殺与奪の権を握っているとすれば、人間というのはさぞ偉大な存在なのでしょうね。ところで、あなたは体を洗ったことがあるでしょう。顔を洗ったこともあれば、歯をみがいたこともあるでしょう。その際、体内の夥しい数の菌が死滅します。それは残酷ではないのですか?」
「それとこれとは」私は言ったが、西松の口は止まらない。
「今も屠殺場では、数多くの動物の首が切り落とされています。その事実に蓋をして、あなたのような『善良』な人が、加工後の肉だけを『肉』としておいしく召し上がるのであれば、それもいいのでしょう」
ふと足に違和感がし、視線を落とした。見覚えのある銀色の液体が床に流れ出し、すでに靴底がそれに浸っていた。
反射的にひざを振り上げようとしたが、うまくいかなかった。液体が靴、皮膚を通り越し、骨をがっちりと握りしめているようで、私の脚はびくともしなかった。
「面接があるのでしょう。そろそろ行ってもいいのですよ」
西松の顔には楽しみが増えたのか、笑みが上塗りされている。横の男は変わらぬペースで肉を食べている。そして、私の脚は動かない。
「く」
体が動かないどころか、今度は通路奥へと引きずられ始めた。テーブルの縁を全力でつかんでも、銀色のおびき寄せる力に抗えなかった。液体はもはや尾てい骨から背骨へと浸透し、そこから内部へ一気に枝を張り巡らしているようだった。それゆえに、私の体を引く力は、時間が経つごとに取り除きがたいものになっていった。
「どうしたのですか、お行きなさい。面接が始まってしまいますよ」
液体が舌骨を通り、眼球に達すると、視界までもが銀一色になった。得体の知れないあの店の中も、西松の姿も見えないが、声だけは聞こえる。どの方向かはわからないが、引っ張られていく感触も、まだ感じ取ることができる。
ついに耳まで聞こえなくなった。外界の音が脳に伝わったのか、それとも記憶が反復されただけなのかは定かでない。頭の奥で、ふざけ尽くしたあの忌々しい声が反響する。
「面接があるのでしょう」




