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第11回 ドキドキ学園生活!?

 病院からの帰り道、湊は颯真と色々話をしていた。


 「目が変化した事に抵抗感は無いのか?」


 依然として彼の目は光り輝いて居るが、彼は普通そうだった。むしろより活力が湧いて出てくるようにさえ湊には感じられた。


 「何言ってるんだ?俺が幽霊となった俊也と話したいと思ったからこうなっただけだ。その先不都合を感じても、最初の出来事で帳消しさ」


 「そうか」


 湊はどこか安心したように呟いた。


 終電はとうに過ぎていた。真夜中を少年達は歩いて行く。


 「それで、お前はウチでお世話になるって事で良いのか?」


 「いや、それは無い」


 えっ、と颯真の顔からは血の気が引いていく。


 「まあ、最後まで話を聞いてくれ。あくまで君に迷惑はかけられないって話だ。学校にはこれから通ってみようと思うし、俺達の関係が途切れさせるつもりは無いよ」


 「そうか。で、湊が受かった高校って言うのは?」


 「君と同じ高校だよ」


 「マジで!!クラスは一緒にしてくれよ。じゃあ、これからもよろしくな」


 そういって、颯真と湊は熱い握手を交わした。


 「ああ」


 颯真は湊が送っていくことにした。どうやら、家に書き置きを残しているらしく、親にばれたら外出禁止令が出るのは目に見えていたらしい。ただ、それでも俊也に会えたのだからそれくらい安いもんだと彼は笑っていた。


 「じゃあ。いつか学校で」


 玄関前で颯真が別れを言う。


 「ああ、またな」 


 颯真は、玄関の奥へと消えていった。多少の音を消す術をかけたので、当分は大丈夫だろう。彼が怒られたのならば、それはそれで仕方が無い。


 よし、と湊は気を引き締め、制服が眠っている実家へと舞い戻った。


 











 両親は、家だけを残して何処かに行ってしまった。俺が、親に気を回すことが出来なかったからこんな風になったのかもしれない。勝手に人生に見切りを付けて、勝手に行動した。その事を間違いとは思いたくは無い。ただ、そうあっただけなのだ。


 祖父母も両親も此処には居ない。ただ、この家を守る事だけは出来る。神凪も一緒だし。でも、相続税とかどうしようとは言っても俺は人間じゃないから適用されないと思いたい。


 「まあ、取り敢えずは学校に連絡だな」


 久々に入った自分の部屋。すぐに目に付いたのは親が机においたであろう制服と高校のパンフレット、そして手紙であった。


 まずは、手紙を手に取る。


 『ごめんなさい。私達はあなたの苦しみを分かってあげられなかった。ニュースを見たわ。もしかしたら、あなたはなくなっているのかもしれない。でも、あなたは最後まで誰かの為に生きようとしてた。自殺は自分勝手かもしれないけれど、人類の発展のためになるならなんて普通は出来ないわ。私達はあなたを恨みはしません。最後まで足掻いた息子を誇りに思います』


 裏面には両親と祖父母の名前がそれぞれ書かれていた。


 「俺が生きている事を分かっていたのか…?まさかな」


 少し上手くいきすぎている現状に違和感を覚えつつも、湊は部屋を後にした。


 寂れたリビングの中で過去を覗き見た。分かったことだが、あの家は相続放棄されていた。祖父が夢のお告げによって刀の所有権を湊に譲った時のように、今回もお告げのような物で誰かが言ったらしい。


 とにかく、礼は言っておこう。もう自分からは会いに行くことは無いだろうが、十五年間過ごしてきた場所を何も言わずに離れるのは気が引けた。


 「さようなら。今までありがとう」


 最悪と最高、二つの置き土産が半日の間に送られてくると言うことを湊は予想していなかった。


 ついでに家の所有権も無くなったので、先程の約束の意味も無い。


 颯真にああいった手前、自分の目的に為にも学校には行かなければならない。今はまだ死んではいけないのだ。


 それなのに、どうすれば良いのだろう。とりあえず、まずは電話だな。


 空はもう明けていた。













 「はい。はい。ええ、八代湊さまですね。合格通知はお持ちでしょうか。はい。ええ。それでは30分後に正面玄関に方にお待ちしております」


 怪しい。怪しすぎる。いくら何でも住所不定の怪しい男からの電話一本、30秒で入学が認められるんだよ!!ただ、いくら力を持つ存在になったとしても、歴史という流れの一部に過ぎないのはさんざんこの目で見てきたため、もう驚くことも少なくなった。


 「いざ、ドキドキ学生タイムだ!!」


 寝癖は直した。シャワーは、俺には必要ないが狂水の乱舞(アクアパッツァ)を用いて一応しておいた。やはり便利だな、この能力は。制服のしわ伸ばしもしておいたし、外見に関しては何も言われまい。堂々としてれば良いんだ。堂々と…。


 はは…。自殺未遂までしたのに張り切りすぎとか言われたたどうしよう…。つい、余計なことまで考えてしまう。感情が俺には必要なのかどうか、アイツ(ブレイン・ロッド)が言っていた意味を理解するためには言い機会かもしれない。


 朝7時。いや、その五分前にはすでに付いていた。学校に着くや否や、すぐに校長室へと呼ばれた。


 「君が八代湊君だね。制服がとても似合っているよ」


 校長先生は、長い顎髭を蓄えた、いかにもといった様な人であった。


 「湊君。まずは、よく学校に来ようとしてくれた。あんなことがあったのにも関わらず、君はこの選択をした。正直私は君の選択は間違っていると考えているのだよ。それでも、君の目を見て確信した。君は、君自身が選んだ道を正解にするつもりなんだと。それだけで、君はこの学校に入学する資格はあると思う」


 そう言って校長は湊の肩をぽん、と叩いた。


 それからは、住所が無いことを特例として認めてくれ、嫌に手厚い対応を保証してくれた。俺の情報は高校も把握しているため、恐らく退魔師協会の口添えだろう。


 「君がこの学校でどのように成長していくのか、楽しみに待っているよ」


 最後に校長はこの言葉で話を終えた。実りある会話も終わり、湊は校長室を後にした。そしてすぐに目に入ってきたのは、三つ編みをした可愛らしいスーツ姿の女性であった。


 「初めまして。一年一組の担任をしています、二宮アンナです。みんなからはアンナちゃんって呼ばれてます。どうぞ、よろしく~」


 ああ、彼女とはすぐに事を構えることになりそうだ。 


 「みんな~。今日は二ヶ月遅れだけど、新入生がいま~す。どうぞ~、入ってきて~」


 ざわざわと教室内の緊張が高まっていく。廊下越しに湊はクラスメイトが誰なのか湊は確認していた。


 わお。睦さんに高坂、颯真までいる。


 これも退魔師協会からの…。いやいや、ここは颯真の取り計らいと考えよう。取り敢えず今は目の前の出来事に集中だ。


 ドアを開けると、クラスの皆の視線が湊を滅多刺ししていた。


 「八代湊です。これからよろしくお願いいたします」


 何の面白味も無い自己紹介。だが、これでいい。


 「なーんの面白味もない自己紹介有り難うございましたー。では、湊君には窓側の一番後ろの席に座って貰いましょう」


 「ありがとうございます」


 アンナは俺に対して嫌そうな顔をしていた。無論、そうだろう。こんな人でなしが来ると知って、普通の対応が出来るはずが無い。


 湊はそのまま席に向かい。着席した。


 「湊。まさか今日だったなんて!!」


 隣の席の颯真が、小声で嬉しそうに話しかけてきた。


 「ああ。俺もビックリだよ」


 彼の目は元通りになっていた。


 湊の前には睦が、颯真の前には高坂がいた。だが、二人とも俺に対する反応は何も無かった。


 その後は湊一人の為にレクリエーションをしてくれ、諸々の作業で一日を終えた。授業進路の妨げになるのでは無いかと伝えようとしたが、学校側の配慮を無下にする訳にもいかず何も言わなかった。


 クラスメイトからすれば授業が潰れてラッキーという奴らがほとんどであった。そうで無い人には埋め合わせをしなければ…。


 「それでは、湊君は残ってお話がありますので私に付いて来て下さい」


 帰りのホームルームが終わって連れて行かれたのは、誰も居ない体育館の倉庫の中であった。彼女の雰囲気からして、こうなることは分かっていた。


 人払いの結界が、此処にはあらかじめ敷かれているらしい。


 「なあ。何で化け物がこんな所に来ている?存在している!!」


 怒気をはらんだその声が、湊の体をなめ回す。湊は堂々とした態度でその質問に答えた。


 「俺は、これからを生きていく人々の前例にならなくちゃいけない。意図せずして抑えきれないほどの力を持って生まれてきたことに意味が無いなんて言わせないために。俺は死ぬわけにはいかない。居場所を作ってやらねばならない。それが、俺が今も生きている理由だ」


 「ねぇ。死んでよ。ウチの弟はあの病院で死んだというのに。なんであなたは生きているの!?ねぇ、どうせ生きていくのであれば、死者の国で生きててよ。現(・)実(・)世(・)界(・)で(・)生(・)き(・)な(・)い(・)で(・)よ(・)!!」


 嗚咽と哀愁が混じり合った声。何も言わずに湊はそこを出て行った。


 そうだよな。俺の事が怖いよな。でも、俺はこの学校に通わなければならない。俺には経験が必要なのだから。


 突如、ドンッと扉をぶち破る音が聞こえてきた。


 「そこまでご乱心とは・・・」


 「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


 ここは己の技術で対処をするしか無い。


 相手の胸を穿つ掌底。これだけで勝負はあった。


 そして、争いを終結させる切り札がここにはある。


 「二宮先生、俊也は成仏できました!!」


 倉庫に打ち付けられた彼女は、弱々しく声のする方を向いた。


 「何を!!あれ…?颯真、君…」


 「湊がやってくれたんです。これ以上、他の誰かが苦しまない様に。俺が前に進めるように。湊を学校に来るように行ったのは、俺のせいです。湊の苦しみを少しでも和らげてあげようと思って、彼を誘ったんです。もし責めるのならば、俺も責めて下さい」


 「嫌よ、そんなの。彼を励まし続けてくれたあなたを恨むなんて出来るわけ無いじゃ無い!!家族である私すらも俊也のことを守れなかったというのに…」


 沈黙が流れる。その静寂を破るのは、湊の役目だった。


 「先生。俺を嫌いなら嫌いなままで良いです。むしろ、その方が正常です。こんな化け物、見たくも無いですよね。ですが、先程も言った通り俺はまだ死ねないんです。この世界のこれからのために、やることがあるので」


 彼女は呆気にとられた顔をしていた。


 「ふふっ。何それ?そんなの私に命令すれば良いじゃ無い」


 「いえ、しませんよ。あなたの執念が無駄にはしたくありませんから。それに、執念という物は天にも届きうるほど恐ろしい物になり得ます。人や神や悪魔といった概念すら、そこには無いでしょう。ついでに言うと、やはりあなたは笑った顔の方が良いです」


 「なっ!!」


 彼女の赤面した様子は、睦や環奈にも勝るとも取らないだろう。


 「おーい。痴話喧嘩はもう良いか。早く帰ろうぜ!!」


 実の親友とのわだかまりを痴話喧嘩というその度胸。颯真が一番苦しいだろうが、それは胸の内にしまっておくことにした。


 ついでに、倉庫の破損をこっそりと治しておく。


 「「先生、また明日」」


 「ええ、また明日」


 私は懲戒免職かしら。生徒に暴言を吐き、あまつさえ人気の無い場所で暴行しようとした。これでは、どっちが悪人か分からないじゃ無い…。


 「先生」


 「こここ、校長先生!!!」


 目の前には、校長先生や何やらどす黒いオーラを放つ少女と、呆れている少年がそこにいた。


 「彼らは退魔師協会の物だがね、一歩間違えば大惨事になっていたんだよ」


 何らかの魔術で顔は見えないが、彼らはこの学校の制服を着ていた。


 「ですが、湊君は私達に事前に連絡を送ってきました。彼女の憎しみを分かってあげられないかって」


 少女が口を開いた。


 「アイツは大馬鹿野郎だが、しっかりと考えている奴だ。お前はどうだ?」


 少年も私に問いかけてくる。


 「私は…」


 「よい。湊君もそれを分かってこの学校に来ている筈だ。今後ともよろしく頼むよ」


 「は、はい。精進します」


 そう言うと、彼らは校内へと戻っていった。


 一体何だったというの?あそこまで正体を明かして、何をさせるつもり。


 「何にもありませんよ、先生」


 「きゃあああああああ!!!どこから出てきたの!!!」


 「先生。さっきまでの威厳は何処に行ったんですか?せっかくの美人が台無しですよ。まあ、実を言うと戻ってきたんです。俺は、先生のことを何(・)も(・)知(・)ら(・)な(・)い(・)ので。と言うわけで、デート(食事)に行きましょう!!デート(食事)に行けば嫌われる理由も、好きになって貰える理由も、何でも分かる!!!勿論、お(・)代(・)は(・)ぼ(・)く(・)が(・)持(・)ち(・)ま(・)す(・)ので安心して下さい」


 目の前の少年はそう言って、ニコッと笑った。だが、彼の目は何処か虚ろな気がした。


 「あなた、私の調べによるとお金は持ってないんじゃ無かったの?と言うより、私まだ仕事残っているし!!!!」


 「仕(・)事(・)と(・)か(・)い(・)う(・)物(・)は(・)僕(・)が(・)終(・)わ(・)ら(・)せ(・)て(・)お(・)き(・)ま(・)し(・)た(・)よ(・)。後、やはり先生の情報収集能力は素晴らしいですね。大丈夫です。お金はきちんともっていますし。それではデート(食事)に行きましょうか!!」


 「コイツ、デート(食事)に行こうしか言えないカラダになってやがる!!!」


 何なんだ、この威圧感は…。先程彼は私の地雷を踏んだのと同じように、私も彼の地雷を踏んでしまったというのか。


 「やだなぁ。只一緒にご飯を食べるだけですよ。睦さんと高坂はいつも一緒にご飯を食べているらしいので、その復讐と言う体にでもしておきましょうか。さあ、何が良いでしょう。和食?中華?フランス料理?先生のこともっと知りたいなぁ~。あんなことをされてしまったら、相手のことを知りたいと思うのは当然じゃ無いですか」


 いい加減にして欲しい。仕事を終わらせた?何を言っている。私の何がコイツの逆鱗に触れたのよ!!


 「ああもう、うっざい!!!一緒に行くから煮るなり焼くなり好きにしなさい!!!」


 つい、悪態をついてしまった。彼は何も言わずに此方をじっと見つめていた。


 「えっ?具材を煮たり焼いたりしているビーフシチューが良いって?うん。先生は良いことを言いますね。おいしいですよね!!ビーフシチュー。じゃあ行きましょうか」


 声は明るいが、目は死んでいた。


 「急に冷静にならないでよ。って、ひいっ!!!!ごめんなさい、ごめんなさい。私が悪かったからぁ、誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


人払いの結界によって彼女の声を聞く物は誰も居ない。


 「そうですね。何がいけなかったのか、ゆっくり考えながら行きましょうか」


 彼女のような人は多く居るだろう。そのためにも、俺は強く生きなければならない。二度と、あのような悲劇を繰り返さないために。


 美(・)味(・)し(・)い(・)ご(・)飯(・)を(・)食(・)べ(・)れ(・)ば(・)、き(・)っ(・)と(・)仲(・)良(・)く(・)な(・)れ(・)る(・)は(・)ず(・)だ(・)よ(・)ね(・)。


 夕焼けは、何も言わなかった。



 



 「「何あれ・・・」」


 校長室で彼を監視をしていた睦と高坂の二人は、彼の恐ろしさに震え上がるしかなかった。


 





 


 

 

 


 


 

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