63話近づく終わり
我威亜は警戒していた。たった今、目の前に現れた惣代と言う男、こいつの隠された理力の量に……。
「あんた、一体何者だよ」
「な~に、ただの教師だよ」
惣代がぶっきらぼうに答える。めんどくさそうに、だが生気を感じないその声は、心の中を見透かされているようだった。
「そろそろ始めるかい?」
惣代が我威亜に向かって提案する、我威亜が刀を構えた。今までとは違う、目つきも雰囲気も……。
少しの静寂、雨が葉に落ちる音、木々が揺れる音、次の瞬間、一瞬で2人はぶつかり合っていた。
力ではやはり我威亜に分があるらしい、惣代は力を込めていた。腕に血管が浮き上がっている。
我威亜の雰囲気が今までとは違い、ものすごく静かだ……。
我威亜がさらに力を込める。惣代は我威亜の腹を蹴り、我威亜を後へ飛ばす。
惣代は足に力を込め、一瞬で我威亜の目の前にまで移動する。2つの剣が横に振られるが我威亜は体を下に下げ避ける。体が柔軟だ。我威亜はその状態から飛び上がり惣代の顔に続きをくらわせる。惣代が少し後に後ずさり
剣を突き出す、我威亜は顔を横に反らし避けるが頬を少し掠る。
また静寂次の瞬間2人の姿が光の線のように見えるほどの動きで動く。見えるのは線のようになった2人と、武器がぶつかり合うたびに現れる火花だけ。
常人には見えないような動き、舞うように戦う惣代と、力任せに見えるが確実に相手を殺す技術を持つ我威亜、にても似つかぬ2人のの戦いが森を揺らす。
2人の動きが止まる。惣代の首元には我威亜の刀、我威亜の首元にも惣代の剣が。
力は同等。次の瞬間2人は下がる。そして一気に前にでる。我威亜の突きを惣代が空を舞うように避け、体を下げながら着地し、足の腱を狙い、刀を振るう。
だが我威亜は予想外の行動にでる、左足を後に思い切っきり下げたのだ、体を下に下げていた惣代に攻撃が当たる。
惣代は木にぶつかり、鼻から血が噴き出す。やはり亜巍斗族、力が桁違いだ。
我威亜はその場から動かない。
「あれ?どうしたんだい?今、ドドメ刺せたろ?」
惣代がニタァと笑いながら言う、その顔には確実に悪意がこもっていた。
「今、あんたに近づいたら俺は死ぬ気がした。お前、一体何を仕組んでいる?」
「野生の勘ってやつかい?」
「そんなところだ」
ふーん、と惣代が気怠けに言ったあと、姿が消えた。そう消えたのだ、一瞬、瞬きする瞬間に、次の瞬間惣代が我威亜の後に現れる。
我威亜は対応しようとするも間に合わず、浅いが肩から腹まで斬られた。
血がボタボタと落ちる。
「教えていなかったね、僕は痣村惣代。能力は影の間を移動する。そして、君の命を絶つ、張本人だ」
「面白いじゃねぇか!」
我威亜が笑う。刀を両手でもち、上から振り下ろす。惣代は何かを感じ取ったのか、空とノアに向かって叫ぶ。
「避けろ!!」
2人が体を動かすが間に合わない。爆風と大きな斬撃があたり一帯を吹き飛ばす。
だが飛んだ先にワープゲートがあり、空とノアは回収された。
そこにいたのは神埼だった。
「ふぅ……、間に合ったみたいでよかったぜ。惣代もうここに守る生徒はいない、全力で戦っていいぜ!」
神埼はそう言い残すとワープゲートの中に入っていった。
「それじゃあ、神埼の言う通り、本気で行こうか」
惣代の理力が一気に放出される。我威亜ですら目をみはるその理力量、惣代の目つきが変わる、2つの剣を構える。
我威亜も刀を構え、待つ。次の瞬間一閃の攻撃、攻撃の少しあとに音が響く、なんと我威亜の左耳がきり落とされた。だが惣代も腹を浅く切られている。服に血が滲む。
(本気を出せばこの惣代という男、俺と同等くらいか?)
2人は無理向き、剣を交える。大きく、耳をつんざくような轟音、熱が、火花が飛び散る。理力でコーティングした武器同士、壊れる可能性は限りなく低いだろう。
2人の武器が弾かれ、2人は少し後に下がる。
そしてまたぶつかり合う、はずだったが、惣代が影に潜る。森の木々が揺れる。どこから出てくる。
次の瞬間、我威亜の後にあった。落ちる葉っぱの影から惣代が飛び出す。
(影の大きさは関係ないのか!)
予想外の攻撃、我威亜は刀でギリギリ攻撃をとめる。刀で惣代を弾く。空中、はいれる影はない。無防備な事を確認し、我威亜は惣代のほうへ飛び上がる。
そのまま大きく拳を振りかぶり、左フック。惣代は海のほうへ飛ばされる。海に大きな水しぶきが起き、そこから惣代が飛び上がる。
(これが、亜巍斗族のパワーか、校長から聞いてたけど……)
「さすがに僕でも厳しいかも……ね」
初めての弱音、惣代が水を蹴り、飛び上がる。我威亜がが地面をけり、惣代のほうへ近づき、また殴り飛ばす。今回は防いだのに、直線に飛ぶものだから止まれない。
「ここは……無人島?どのくらい離れてる……一応学園の建ってる島は見えるな、でもこんな場所に島なんてあったのか」
そこに我威亜が降り立つ。周りを見渡しながら、ゆっくり歩いてくる。
「なんでそっちは戦うんだい?」
惣代が武器を下ろし聞く。
「この世から異能をなくす。それが出馬の目的だ、俺とグラムは昔、出馬に命を救われた。だからあいつに協力する」
「過去話に花を咲かせるのもいいかもね……」
その提案に我威亜は賛成のようだった。刀を下ろし、2人は海辺に座る。
そして我威亜はゆっくり話始めた。自分の過去を、敵の前でありながら。武器を捨て。まるで古くの友人同士のように……。




