8話 規格外
此方も投稿予約です。ちゃんと出来てるかな?
翌日はクラス決めをするための簡単な試験と魔力測定を行うらしい。幾つかのグループに別れ、1グループ30人くらいでそれを受けることになった。着てくる服は体操着、つまりブルマである。
これは・・・この世界で生まれて初めて抱く妙な敗北感。俺がブルマを履いている。その筋の者なら泣いて喜ぶのかもしれないが、俺にその趣味は無い。外にでたくない、だが出なければならない。
涙を堪え、俺は意を決して学園塔へ向かった。
そこにはやはりセシリーがいた。だが何と俺は別方向から声をかけられた。
「あら貴女は」
「あ、これはどうも、セリーヌ様」
ここまで護衛してきたセリーヌだった。
「学園に入学されるのなら仰ってくだされば良かったのに」
「いえ、仕事とプライベートは公私混同しないように心掛けていますから」
「流石冒険者ですね」
「あら、貴女冒険者でしたの?」
ウザイ奴が来やがった。聞き耳立ててんじゃねえよ。
「アリスさん、この方は?」
「セシリー様です、フランソワ公爵家のお嬢様です。セシリー様、此方はセリーヌホルスト様、ホルスト純男爵家のお嬢様です」
「お初にお目にかかります、セシリー様、セリーヌホルストと申します」
「そう、それで? 貴女冒険者ですって?」
「駆け出しのFランクです、ここに来るまでAランク冒険者パーティーに混ざり、セリーヌ様の護衛依頼を冒険者としてこなして来ました」
「アリスさんはヒーラーだそうでして、大変重宝されていましたわ」
「貴女回復魔法が使えるの?」
「まあ、一応」
「ならば私の班に入れてあげてもよくてよ」
「班ですか?」
「あら知らないの? 授業のいっかんで、学年は自由に5人パーティーを組むことが出来ますの。合同訓練はそのパーティーで行動するんですのよ」
「そうなんですか。ですが身分差が有りすぎますので、私のような者はセシリー様の班に相応しくありません。農民は農民らしく、余り物の班に入れて頂きます」
「そ、そ、そ、それもそうね。まあヒーラーが居なければ、特別に入れてあげてもよろしくてよ!」
ふん、誰がテメエの班なんぞに入るか。そうこうしている内に先生が来た。
「ではこれから適性検査と試験を行う。この検査と試験の総合点数がこれからお前達のクラス分けをする目安となる。
クラスは全部で5クラス、1クラス30人前後だ。最上位クラスはAクラス、一番下はEクラスだ。先に学科テストを行うぞ。全員前から順に席につけ」
そのテスト、俺にとっては小学生の時に覚えたショボい内容だった。
次に魔力測定だ。
「この板に手を置いて全力で魔力を流せ! 色が変わるので、その色で判断する」
全力か。 ビギッ! パリン!
「・・・これぶっ壊れましたよ?」
「ん!? おかしいな、ではこっちを使え」
ビギッ! パリン!
「またぶっ壊れました。不良品じゃないですか?」
「そんな事は・・・いや、お前はもう良い」
「え!? ・・・はあ」
その日の夜、俺はAクラスだと知らせが届いた。そこにはセシリーとセリーヌもいた。
「あら、貴女もAクラスでしたの。農民風情がAクラスとは、随分と他の生徒がだらしなかったようですわね」
「ばかじゃないの? 貴女何も知らないのね」
「何ですか貴女は、誰に向かってその軽口を開いていますの」
「私はエリザベート フォルテシア」
「な! 王女殿下!?」
「学園内は身分差関係ないわ、それとその子、私と同じ聖女候補よ」
「な!? ・・・・」
「アリスさん?」
こいつがもう一人の聖女候補か、まさか王女さまだったとはな。
「初めまして、私はエリザベートフォルテシア、この国、フォルテシア王国の第三王女であり、貴女と同じ聖女候補です」
「そうですか、初めまして、私はアリスです。この学園で学ぶ栄誉を頂き、王家の皆様には大変感謝しております」
「それは関係ありません。この国の法に従って、魔力を持つ者は全員学園で学ぶ事になっているだけです。別に今の王家がどうこうしたわけではないわ。これはあくまでもこの国の伝統なの」
「それでも感謝をすると言う謙虚な心を持つ事が、この国で聖女候補としてお役に立つ為の資質と考えております」
ここは嘘でも謙虚さを示す所だ。王族と顔を繋いでおくのは悪くない。
「成る程、既に聖女候補として貴女は振る舞っているのね。良い心がけだわ」
「お褒めにあずかり光栄にございます」
「へえ! このクラスには聖女候補が二人もいるのか。俺はギルバートオーラル、オーラル公爵家の次男だ。よろしくな、アリス、そして王女殿下」
「よろしくお願いします。ギルバート様」
「俺に様はいらねえって。さっき殿下も言ったろ? 学園では身分関係ないって」
「有難うございます、ですが暫くはご勘弁ください。出来る限りご要望にお応えする努力を致します」
「まあいいか」
畜生、王女が余計な事言いやがるから目立っちまったじゃねえか。
その後Bクラスに他の聖女候補の3人が固まっていることが解った。何れも貴族で有った。そして何と、今回の特待生は俺だけ、一般国民から魔力がある者は、今年は俺一人だったようだ。
更に俺は猫のように襟首を王女に摘ままれ、昼飯の食堂に連行された。
そこにはさっきのセシリーとセリーヌ、それにギルバートやコレンルーカスと言う伯爵家の三男も一緒に来やがった。
「嘘!? 貴女!? もう攻撃魔法が使えるの!?」
「え!? あ、はあ・・・え? 殿下はまだ使えないんですか?」
「貴女聖魔法のレベルは幾つなの?」
「7ですが?」
「お、おかしくありません!? 一体何をやったらそんなばかけたレベルになるの!?」
「使えば使うほどレベルって上がるんですよね?」
「だからこの短期間でどうやったらそんなに使えるのよ?」
「いや、ポーションを作っていたら、いつの間にか」
「ポーション!? 貴女ポーション作りをしていますの!?」
セシリーまで混ざりはじめた。
「まあ、田舎なんで、特段やることもなくて」
「根本的に生活環境が違いすぎますわ」
「つまり、アリスはポーションを作っていたからレベルアップが早かったって事?」
「そうなるわね、魔法レベルと言うのは使用回数によってレベルアップしていくの。ですから普段からヒールを使っていたアリスは聖魔法のレベルアップが早かったって事になるわ」
「所で殿下は今レベル幾つなんですの?」
「・・・2よ」
「まあ普通この年齢ならそんなもんだよね」
「特に回復系魔法はレベルアップが遅いですしね」
全くしらんかった。こりゃ正直に話したのは不味かったかな。
「それで? レベル7までの攻撃魔法ってどんなのがあるの?」
「レベル5から一個ずつ覚えて行きました。最初はレベル5でホーリーレイ、光りの光線みたいな物が出て、あらゆる物を切断します」
「凄いわね、6は?」
「レベル6で覚えたのは、セイクリッドクロスです。これは広範囲殲滅魔法で、地面に巨大な十字架が浮かんで、その周囲、魔法陣の中に居る生き物は全て生滅します。実はこれ、王都に来るときに使いました」
「あ! あのプライド子爵領で、あれはアリスさんが倒したんですか?」
「まあ、ロベルトさん達でも時間をかければ倒せたでしょうけど、下手すると私もセリーヌ様も入学式に間に合わなそうだったじゃないですか」
「魔物が出たの?」
「はい、それで通行禁止命令が出たんです」
「通行禁止って事は、Cランク指定が複数か、Bランク指定が出たって事だよね?」
「そんな程度ではございませんでした。Bランクが5体、Cランクが20体以上いたと言ってましたよね? アリスさん」
「ま、まあそうですね」
「それを貴女の魔法で殲滅したの?」
「そうです」
「規格外過ぎるわ、それで? 7では?」
「インディグネーションと言う魔法ですが、田舎の山の地形を変えてしまったので、これは封印しました」
「何よその魔法!?」
「あぶねえなんてもんじゃ無いな」
そして、王女命令で、結局この5人で今後パーティーを組むことになってしまった。更に俺は敬語禁止、様付け禁止命令が出され、更にパワープレーで王女の聖魔法レベルアップ指南までさせられる事になった。
「難し過ぎて解らないわ」
「でもこれが出来ないとハイポーションは作れないよ?」
「アリス、貴女これ独学で覚えましたの?」
「うん、まあ書物を読んでだけどね」
「よくそんなお金がありましたね? 魔法書って普通農民が手にできる物じゃ無いんですけど」
「ああそれはカツア・・・ま、まあ、色々と・・・」
「色々と? 何ですの?」
「む、昔の事だから忘れちゃった!」
テヘペロ作戦を出してみる。
「怒らないから言ってみなさい」
「う! ほ、本当?」
「怒りませんわ、約束します」
「誰にも言わない?」
「それも約束しますわ」
仕方なく俺は一連の話をした。
「な! なんて事してますの貴女は!! 淑女のやることでは無いわ!!」
「そうですわ! 如何に相手が人身売買組織であっても、やって良い事と悪い事がありますわよ!?」
「お! 怒らないって言ったじゃん!!」
「うっわはははははは! 腹痛い、死ぬ! 死ぬ!」
どうやらギルバートの腹筋を崩壊させてしまった様だ。しかし怒らねえって言ったじゃねえか!? くそ、嘘つきが。
「全くとんだ悪女ですわね、盗賊から詐欺でお金を騙し取るなんて。しかも5才の時に」
「ま、まあ昔の事だし」
「だからと言って、やって良いことと悪い事が有りますわ!」
結局こっぴどく怒られた。嘘つきである。
数日後、俺はセリーヌとセシリーと三人で、自由研究を何処にするか決めていた。この自由研究とは、言わば部活のような物である。
自由研究については、エリザベートは乗馬と既に決められており、コレンとギルバートは剣術と、これも家の方針で決められていた。
セシリーとセリーヌについては、同じ所にしようと二人から誘われ断り切れずに結局3人で決める事になってしまった。よって喫茶ルームで俺達はあーだこーだと決めていた。
「それで? アリスはどう言った物がやりたいんですの?」
「私はやっぱり薬関係かな? まだ覚えたい事も沢山有るし」
「フルポーションが作れる聖女候補が言うことでは有りませんわね」
「私はアリスとセシリーにお任せします」
「セリーヌも自信でやりたい事をハッキリと仰りなさい」
そんな話をしている時だった。如何にもな集団が此方に歩いて来た。
「あん? お前セリーヌじゃねえか?」
「え? あ!? ・・・・」
「やっぱりそうじゃん!! まあお前も一応貴族だからな、純男爵家とは言え」
「何ですの? 貴方達は」
「俺か? 元、セリーヌの婚約者だよ。まあ侯爵家から婚約話が来たからこっちから断ってやったんだけどな。それにこんな不細工な女誰が欲しがるかよ、父上の命令じゃなければ一緒に居る事自体恥ずかしかったぜ」
「それなのにこいつ立場もわきまえず、オリバー様に付き纏って理由を聞かせて欲しいとかウザかったですよね!」
「ああ、そうだな!」
「卑劣な、セリーヌ、こんなゲス男と婚約破棄できて良かったですわね」
「え? そうなの? セリーヌちゃ~ん?」
「い、いえ・・」
「聞こえないな~? ハッキリと言ってくれねえかな?」
「そ、そんな事は、ありません・・・」
何だ? 脅されてるのか?
「成る程、寄親ですのね。セリーヌ、ハッキリと仰りなさい、この学園は身分差はありませんの。だから何を言おうとそれによって貴女の実家に何かあることはありませんわ」
「何だこの生意気な女は。俺が誰だか知ってるのか?」
「知りませんわね、貴方達のような下男など」
「言ったなてめえ! 俺はオリバーコーナー! コーナー伯爵家の次男だぞ!」
「権力がお望みですの? ならば私はセシリーフランソワ、フランソワ公爵家、王族ですわよ?」
「な! さ、さっき自分で言ったよな? 身分関係ないってよ!」
「そうですわね、だから貴方がいくらセリーヌを脅かしてもどうにもならないと言っておりますわ」
「ねえセリーヌ、セシリー、こんなゴミカスの顔何時までも見てると良い案浮かばないから、私の部家に来ない?」
「あんだてめえは?」
「ただの農民だけど?」
「はあ? たかが農民の娘がいくら何でも言って良い事と悪い事が有るんだぞ!?」
「身分差関係ないんだよね? そうだよね? それともその顔と一緒で詐欺った?」
「ちょっと、アリス・・・」
「こりゃ侮辱だよな? そうだよな?」
「何に思えた? 普通すぐ解るよね? 俺はお前のこと舐めてるんだよ! この間抜け!」
「や、やめなさいアリス!」
「もう遅え! 俺はこの女に侮辱されたんだ!!」
「だからさっきからそうだって言ってんだろ? カスが、お前本当頭わりいな?」
そして狙い通り、手袋が投げられた。
「拾え」
「アリス!! おやめなさい!」
「しかたねえな、汚え手袋だぜ。あ~臭え!」
俺は拾ってそいつの顔面に投げつけた。
「生きて闘技場から出られると思うなよ?」
「そりゃこっちの台詞だ糞虫が」
まあ当然だが、その後俺はセリーヌ以外の全員から集中砲火を浴びた。




