4話 旅の始まり
少し投稿間隔が開いてしまいました、ごめんなさい
遂に王都へ行く日、俺は両親と妹に送り出され、旅に出る事になった。両親は未だに俺がひ弱だと認識しているので酷く心配されたが、魔法薬を作っていることは既に話してある。
村の皆にも人体実験・・・・・様々な薬をあげて、喜ばれていた。これで普通の人と同じように暮らせる事を2人は知っているので、問題ないと話してある。
そして俺は乗合馬車に乗る為に、何時ものように街まで歩いて来たのだ。
「ねえおじさん、フェンの町まで行く馬車はどこ?」
「ん、お嬢ちゃんフェンに行きたいのか? だが今は駄目だ」
「何で?」
「フェンまで行く北街道は、今Bランク指定の魔物が出るらしくてな、通行に規制がかけられてるんだよ。民間の馬車は今通れないんだ」
「そうなんだ・・・」
俺の冒険者レベルはまだFだ。こんな事なら上げておけば良かった。て言っても冒険者になれるのは10才からだから、先日登録したばかりなんだげど。とりあえずギルドに行ってみるか。
冒険者ギルドへ行くと、やはり結構賑わっていた。Bランク指定の魔物が出たって事は、冒険者ギルドには当然討伐依頼が代官から出されている。
所であの後の代官は、至ってまともな代官だった。それなりに領民の事も考え、善政を行っていた。
「すみません、街道に出たって言うBランク指定の魔物の討伐依頼、アイテム袋持ちなんですけどパーティ募集って有りますか?」
「アイテム袋持ちですか!? はい有ります! 丁度武器運びの要員が欲しかった所なんですよ」
ナイス、やはりアイテム袋使える。
「なら参加登録お願いします、これギルドカードです」
「アリスさんはFランクですね。あ! ヒーラーですね、これは有りがたいです!」
ヒーラーと言うのは非常に重宝される。水属性持ちでもヒールを使えるのは聖魔法の祝福を受け、更に神官として経験を積まなければ得られない魔法だからだ。つまり高位の神官か、神殿騎士や神官などの家族に限られる。常に教会からの祝福が得られる者しかヒーラーには成れないのだ。冒険者ギルドに登録したときに、俺は沢山のパーティーから声がかかった。勿論全て断った、俺はヒールがしたいのではなく、闘いたいからだ。
「ロベルトさん! 待ち焦がれていた方が来ましたよ!! アリスさん、Fランクですけど、ヒーラーでアイテム袋持ちです」
「本当か!! それは助かった。しかし小さいな・・・・
俺はこの討伐隊のリーダー、ロベルトだ。ランクはAランク。お嬢ちゃんには指一本触れさせないから安心してくれ。で、お嬢ちゃんには武器の運搬と怪我人の回復を頼む」
「解りました」
冒険者ギルドへ行くと、大体俺はこう言う扱いになる。ヒーラーでアイテム袋持ちだと言うと、誰しもが俺を良いとこのお嬢様だと勝手に勘違いするからだ。本人は単なる農民の娘なのだが。貴族が偽名を使って冒険者になると言うのは幾らでもある。そう言う者だと思われているようだ。
「お嬢ちゃんは現地まで馬車に乗ってて良いよ」
「有難うございます」
遠慮せずに楽をさせて貰おう。馬車には他にも女性冒険者が何人かいた。皆魔法使い等の後衛職のようだ。魔法職はやはり体力が無いのだろう。
馬車に揺られること30分。なりに整地されている街道を進み、やがて右が崖になり、左は谷となっている所謂峠道となっている区間。どうやら現地に着いたようだ。路面がアスファルトなら、藤原豆腐店の車が爆走してそうな場所だ。
「全員配置に付け! キースとランドルは周囲の偵察を頼む」
一応サーチ魔法を使うか。聖魔法のレベルが現在俺は7まで上がっている。最高が10だから、かなり高い。
魔法レベルというのは経験値で上がるのではなくて、使用回数によって上がる事を俺は知った。ポーション作りに燃えていた俺は、この無尽蔵の魔力で多いときは一日200回近く魔法を連発していた。
冒険者ギルドで知り合った魔法使いに聞いたところ、そんな回数普通は魔力が枯渇して死んでいるレベルらしい。俺はまだ枯渇と言うのを体験したことがない。どれだけ魔法を使っても、全くそう言う感覚が無い。これだけはくそ女神に感謝するところだ。
そしてそのレベルになった俺は、遂に攻撃魔法や探知魔法の聖魔法を会得するに至った。聖魔法にも、実は攻撃魔法が有ったのだ。覚えるのがレベル7と言うとんでもなく後からになるが、聖魔法の攻撃魔法は恐るべきチートだった。やはりレベル後半で覚えるだけの威力が有る。
更にどうやら俺の聖魔法に詠唱はいらないらしい。普通に何も考えずに連発でヒールを使っていたが、聞くところによると、本来は長ったらしい詠唱がどんな魔法でも普通必用なようだ。
お! サーチに反応があった。一応知らせるか。
「ロベルトさん、あっちの方向に魔物の反応が有ります」
「何だと? キース! 確認頼む、てかお嬢ちゃん何でわかるんだ?」
「まあそれは後ほど」
キースさんが調べに行った。そういえばワイルドボアって何回か俺タコ殴りにしたな。
「あっ居たぞ! やはりワイルドボアだ!!」
「ワイルドボアか、アリスちゃん、弓と槍を持って来ただけ出してくれ」
ここはタコ殴りにした事は黙っておこう。
「はい、すぐに出します。ところでワイルドボアって強いんですか?」
「巨大な猪の魔物だ。突進力が物凄く強い。近接攻撃は御法度だ。遠距離魔法と遠距離攻撃で基本仕留める」
「成る程、どうぞ」
素手でぶん殴った俺は・・・やはり黙っておいて正解だったな。
「魔法使いは崖の上に、弓を持てる奴は同じく弓を取って崖のうえにいけ!! ゴードン、全員が配置に付いたらキースと一緒に行って、ヘイトリアクションでこの場に引いてくれ」
「解った」
「お嬢ちゃんは馬車に隠れてろ。怪我人が出たら随時回復魔法を」
「え~と、ポーションは持っていますか? 念の為、私が放れているときに使える方が良いと思いますけど」
「全員は持ってないだろう。そもそもポーションは高くてよ、それで回復要員待ってたからな」
「ならこれ一つずつどうぞ、あげないですよ? 念の為です。使った分はあげますけど、瓶は絶対に帰してくださいね」
ガシャン、と箱を出した。
「こ、こんなに大量にポーションを持ってるのか!? 驚きだな」
「皆さん一本ずつ持っていってください。私の回復魔法がおくれそうな時は遠慮無く使ってください。中身帰せとは言いませんから。くれぐれも瓶だけは捨てないで持っていてくださいね」
「あ、ああ、解った。すまないな、全員アリスちゃんからポーションを貰え!」
いよいよBランク魔物討伐開始だ。まあ俺が闘える訳じゃないけど。他人がどの様に闘うのか見るのも面白い。
ヒーラーがヒールを使うとき、基本的には患部に触れて、直接その場所に魔力を流し込む。その時に唱える詠唱は
『万物の根源たるマナよ、我が願いを聞き届け、この者の傷を癒したまえ、ヒール』
水属性だろうが聖属性だろうが、これが基本詠唱だ。ハイヒールの場合はこれの最後にハイヒールと唱える。
またエリアヒールの場合は、この者ではなく、我が領域にいる者達と唱え、エリアヒールと最後に唱えるらしい。
らしいと言うのは俺がそれをやらないからだ。俺の場合は・・・
「ワイルドボアだ!! 来たぞ!!」
「ゴードン! 避けろ!!」
「ぐあ!」
「ゴードン!! アリスちゃん、頼む!!」
「はい! ウラ!!」
「へ!? ・・・」
俺の詠唱は、この、ウラ!! か オラ!! が詠唱となる。
しかも患部に触れる必用はない。手の平に魔力を集中し、ボール状態にして対象者にぶん投げてぶつける。これでヒールがかかる。また、ウラ!! と言う詠唱も、あまり必要ない。無言でも出来るからだ。何となく最初にウラ! と言って魔法を唱えたので、これが癖になっただけだ。
「な、治った・・・・」
「くそう! こいつ!!」
「キース! 無理だ!! 放れろ!」
「がは!!」
「オラ!!」
「ア・・アリスちゃん、無茶苦茶だな!? なんだよあの詠唱は」
「ま、まぁ詠唱ってホラ、人それぞれ色々あるじゃないてすか」
「は・・・初耳だな」
ロベルトさんが盛大に顔を引き攣らせて俺を見ている。だがハッとした様に後ろを向き
「魔法組はまだか!?」
と焦りだした。
「矢をどんどん放て!!」
「詠唱が完了した! 魔法攻撃行くぞ!!」
ファイアボールのような物が無数に飛んで行った。だが・・・・
何だよあの魔法、弱くねえか?
案の定、多少焦げては居るが、ワイルドボアの動きを止められるだけの威力はない。長ったらしい詠唱の割に、全然威力がない。
「魔法使いは次弾に備えろ! もう3発くらいで倒せる筈だ! その間注意を引くぞ」
マジかよ、あんな糞みたいな魔法後三発分も待つのか。面倒くさ・・・
「ロベルトさん! 全員下がらせてください! 私が魔法で攻撃しますから!」
「使えるのか!?」
「ヒーラーとは書いてるけど、攻撃魔法も一応使えます!!」
「攻撃魔法を・・・解った! タイミングを教えてくれ!」
「今すぐです!」
「は!? ・・・」
「早く!! この魔法威力が強くて皆を巻き込んでしまいますから」
「わ、解った、全員一旦引け!」
よし、今だ!!
「死ねや糞が!!」
キュイン!! シュピン!!
この魔法の詠唱は、この 死ねや糞が!! と言うのが詠唱である。勿論この詠唱も本当は必要無い。俺がレベルが上がった時に、初めて攻撃魔法が使える喜びから発した言葉がそのままこの魔法の詠唱になっただけである。
後で調べてわかったのだが、本来のこの魔法の詠唱は
『聖なる刃よ、我が望みに応え、我が示すこの悪しき者を断罪せよ。我が魔力を糧に、その正義を示せ。神は我と共に有らん。神の導きにより、大いなる刃により滅する事で、新たなる旅路へ向かい給え。ホーリーレイ』
と言うアホらしく長ったるい詠唱を唱えなければならない。だが俺には何故か無詠唱でこの魔法が使える。
最も詠唱付きで試してみたが、周囲がえらいことになったので、今後もこの 死ねや糞が!! が俺の詠唱となるだろう。
魔法名? 死ねや糞が! だろうな。
そして強烈な光りの筋がワイルドボアの胴体を真っ二つにした。




