40話 恐怖の懺悔
その日、フードを深く被った若い女性が懺悔に訪れた。俺は何時も通り、懺悔部屋でその女性の相手を行う、
「よく来ましたね、迷える子羊よ、では先ず貴女のお名前から教えてください」
「聖女様、罪を犯している者は私ではなく、私の妹なのですが、私の名前でもよろしいのでしょうか」
この声、何処かで聞いた事がある様な・・・
「構いません、先ずは貴女のお名前をお聞かせください」
「はい、聖女様、私はセシリーと申しますわ」
ギク!! ま、まさか・・・・だが慌てるな、まだ慌てる時間じゃねえ。俺は詐欺ってねえ。そうだ、勝手に彼奴等が壺を買ってるだけだ。
壺が詐欺である事は理解しているアリスであった。
「そ、そそそうですか、では、貴女の妹がどの様な罪を犯したのか、ここで全てお話しなさい」
「はい、聖女様。妹と言ってもその者と私は血はつながっておりませんの、最近私の家の養女となった者何です。ですが私はその妹が可愛くて、何とか真っ当な生き方をしてもらいたいと、何時も頭を悩ませておりますのよ。本当はとても可愛い妹何ですの。
ですがそんな私の言う事を妹は全く聞かず、本当に悪事ばかり。妹は元々農夫の娘でしたの。幼い頃人身売買をしていた代官から逆に詐欺を働き、その後人が殴られてヨダレを垂らすのを見るのがやめられなく、貴族の子弟に重傷を負わせましたわ」
「そそそそうですか、元気の良い妹さんですね・・・」
「ええ、本当は虚弱体質なのですが、喧嘩がやりたくて独自で新薬を開発したらしいのですわ」
「な、成る程。な、何かに打ち込むと言うのは悪い事では有りませんよ」
『おい! どう答えるのかちゃんと教えろよ』
『無理よ! だってあれアリスの事を言ってるじゃない、それにあれってセシリー様でしょう?』
『そ、そうだけど、なんとかしろ!』
『無理無理無理! 王族に詐欺を働いたなんてバレたら死刑よ!!』
『今更ビビってんじゃ』
「何をこそこそと話しておられますの?」
「あ、い、いえ、此方の事です」
「では続きをお話し致しますわ、その妹と来たら、自分が学園で人気が有るからと、事もあろうに自ら身に着けた下着だと偽って、その下着を売り捌いたんですの。その下着は実は悪友の男子生徒達に身に着けさせ、自分に好意を持っている男子生徒にその下着を自分のだと法外な値段で売りつけていたんですの」
「そ、そうですか・・・・」
「更に妹は自分と、更に仲の良い女生徒にとても短いスカートを身に着けさせ、階段で覗いた男子生徒を脅かし、金銭を脅し取ったりしてましたのよ」
「・・・・・」
「最近では言葉巧みに貴族の魔法通信の周波数が宿った魔石を自らに貢がせ、それを使ってオレオレと言って通信を親御さんにし、如何にも息子や娘からの通信だと装い、お金を持ってこさせたりもしていましたの」
こうやって改めて聞くと、見事に随分とやらかしてるな・・・・
「そして今度は何と数リア程度の安い壺を神聖力が宿った壺だと偽り、法外な値段で売りつけたりしておりますの」
俺はダラダラと冷や汗を滝の様に流していた。カノンも同じく顔面は冷や汗で滝になっている。
「やはりやりたくは有りませんが、キツイ体罰を行わなければなりませんでしょうか? どう思われますか? 聖女様」
「ぼ、ぼぼぼ暴力はいけませんよ、き、キチンと話せば妹さんに必ず貴女の心は伝わる筈です!!」
「その度に妹にはちゃんと向き合って話しておりますの、でも何を話しても妹には届きませんでしたわ。やはりキッチリと体罰を与えた方が」
「いえいえ、何度でも諦めずに話してあげてください!! 絶対に大丈夫です! そう、愛です!! 愛が有れば必ず伝わります」
「そうですか・・・・ではちゃんと話せば壺売りは止めてくれるでしょうか?」
「ももも勿論ですよ!! きっと今頃妹さんも心から反省してますって!!」
「そうだと良いのですが・・・絶対に無いと思いますのよ!! それは!! あの娘に限って!!」
セシリーがそう大声を出した瞬間、懺悔部屋と俺達の部屋を繋ぐ小窓から、セシリーの手が伸ばされた。そしてその手は俺の両こめかみへとまっすぐ伸ばされ、アイアンクローを俺はかまされた。俺はそのまま思いっきり引っ張られ、顔面を小窓に打ち付けた。そしてその状態で俺はセシリーにギリギリとアイアンクローをかまされていた。
「痛え! いた! てててて! 暴力反対!! お姉様! 痛い!! 痛い!!」
「貴女を妹に迎え、可愛い妹が私に出来たと喜んでいたのに! 貴女と言う子はまたもやこんなアコギな商売を!! 私だけなら今回も許しましょう!! ですが貴女は私のお父様、そして由緒あるフランソワ大公家に泥を塗ったのですわよ!! 絶対に許しませんわ、もう私の妹です、遠慮は致しませんわよ!! さあ覚悟なさい!!」
「いたたたた!! お姉様、許してください、もうしませんから!!」
「何度その言葉を聞いたとお思い!? 貴女のもうしないはいい加減聞き飽きましたわ!!」
「本当です!! 絶対にもうしません! お姉様ぁぁぁぁ!!」
両のこめかみか血が滲む程アイアンクローをセシリーにされた。その後は何とセリーヌまでセシリーにアイアンクローをされ、巻き添えでカノンまで。その後俺達3人は正座でエリザベートを待った。
金髪縦ドリルの如何にもな公爵令嬢であるセシリーが、実はこんな馬鹿力だとは夢にも思わなかった。そして怒られせると本当はこんなに怖いとは。アイアンクローのままで、幼女程度の体重の俺だけならまだしも、カノンやセリーヌまでも軽々とセシリーは持ち上げていた。
後で発覚したのだが、セシリーはこの時アリスの体力増強ポーションを飲んでいた。そりゃ馬鹿力なのは当たり前であった。
正座でエリザベートを持ち続ける事15分、エリザベートとベディビィアが来た。
「な、何故お母様に正座等をさせている!!」
「悪い事をしたからですわ、そしてアリスは貴女の母では有りますけど、私には妹なのですわよ」
「それはお父様に嫁ぐ為に」
「確かに帝国皇妃となる為ですわ。ですが私にはそんなの関係ありませんの。貴女にとってこの年端もないアリスが母であるのと同じ様に、私にとっても大切な妹何ですの。そこに優劣はございませんわよ。だから悪い事をすれば姉として叱る、何かおかしな事が有りまして?」
「う・・・・・」
ベディビィア! 負けるな! 何とか頑張れ!!
「セシリーの言うとおりよ、ベディビィアさん。アリスはもう私にとっても姉妹みたいな物なの、そして大切な仲間でも有るのよ。だから私はどんなに悪い事をしてもアリスを見捨てない、その度にキツく叱るの」
「・・・解った」
マジかよ!? 解っちゃうの!?
「アリス」
「は、はい・・・」
「それにセリーヌ」
「エリザベート、聞いてください!! 私はアリスに彼等に祈りの場を与えたいだけだと言われて」
ぬう、セリーヌ、ここに来て裏切りか!?
「お金、アリスから受け取ったでしょう? 随分と大金を」
「う! ・・・・」
「どんな馬鹿でも祈りの場を与えるだけで、そんな大金が入るわけ無いって気付くわよね?」
「は、ハイ・・・」
「見苦しい言い訳をした分貴女はアリスと同罪にします」
「ええ!?」
「言い訳は無し!! 3人とも、お尻を此方に向けなさい」
「んな!? まさか!!」
「そのまさかよ! 早く向けなさい!! スカートもまくり上げる!!」
エリザベートの手には竹の棒の様な物が握られていた。そしてそれは俺のケツ目掛けて飛んで来たのである。
「ぎゃあああ!! 痛え! マジかよ、痛え!!」
「痛い! 勘弁してくださいエリザベート!!」
「エリザベート様! 何で私まで!!」
「黙りなさいカノン! 貴女も同罪です!!」
「そんな!? ヒィィィ!」
カノンは20回、俺とセリーヌは50回ずつケツをぶたれた。もうケツが痛くてまともに座れねえ。そしてコソッと抜け出そうとするアスラン達は、ギルバートとコレンにとっ捕まっていた。アスラン達も等しく50発、此方はコレンにケツをぶたれていた。
だが俺すらも予想外な事が起こったのだ。何としめられた教会に、礼拝に訪れた者達が並んでいたのだ。
「どう言う事!? 本当に来ているの?」
「ああ、騒ぎになっている。聖女様にお祈りをさせろと、これはほっとくと暴動になるぞ?」
「俺もそう思うよ、あれは本当にそんな感じだ」
「信じられないわ」
「エリザベート、アリス達がやった事です、それなら最後まで責任を持たせるべきですわ」
「セシリーの言う通りね、アリス、セリーヌ、カノン、貴女達は直ぐに教会に行きなさい。ただしお布施や御守り等の利益は一切貴女達には渡しません。全て孤児院や動物保護施設等に寄付します」
「それじゃただバタラキ」
「おだまりなさいアリス!! エリザベートの言う事を聞きなさい!」
「うげ! は、ハイ、お姉様・・・」
畜生、鬼姉が出来ちまった。
「それと御守りにはちゃんと破邪魔法をかけなさい、全く破邪の力を感じなかったわよ」
バレてら!
「ギル、アスラン達も直ぐに教会へ行かせて」
「解った、直ぐに連れて行くよ」
教会に行くと、本当に信者達が並んで教会が開くのを待っていた。聖女様に会わせろ!! と怒鳴り散らしている者達すら沢山いる。俺達は早速準備に入った。
「あ〜あ、アリスやセリーヌと何て組まなきゃ良かったわ」
「五月蝿え、随分と儲かっただろ」
「そのお金だって結局エリザベート様に没収されたじゃない」
「うふふふ」
「何がおかしいのよ、セリーヌ」
「いえ、貴女を笑っているのではありません。アリスがおかしくて」
「何で!?」
「だって、セシリーって、本当に貴女の実のお姉様みたいなんですもの、さっき本気でセシリー怒ってましたよ」
「それが何で俺の姉貴になるの」
「どうでも良ければあんなに怒ったりしませんよ。本気で貴女の事を何とかしたいと思っているから彼処まで貴女を怒るんです」
何となくだが俺にも少し解っていた。あの日、帝国へ嫁に行くために、フランソワ大公の養女となる事が決まった日
『今日から貴女は私の妹ですわよ!』
『何で!? 同じ歳じゃないですか』
『見た目が完全に私の歳下だし、貴女は悪事ばかりして手のかかる妹みたいだからですわ。反論は許しません、貴女は私の妹、これは決定事項ですわよ。今日から私のことをお姉様と呼びなさい』
と言って、凄く嬉しそうだった。心から俺が妹となる事に喜んでいることが伝わった。だから俺もまあいいか、と思いそれを受け入れた。だからか、あのアイアンクローを食らった時、俺はセシリーの手を振り解こうと思えば出来た。だが何故かそれをやろうとも考えなかった。セシリーが真剣に俺の俺の事を思い、俺の事を怒っている事に、何となくだが気がついていたんだろう。それはそれで・・・・何か悪くねえ気分だ。




