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38話 開店と神聖統一教会

アリスが遂に壺を売ります

 料理研究会の面々は、遂に俺から合格を勝ち取った。その間にリーザベルト様は、店舗を王都内に作り、内装を俺と相談しながら進めていた。


「なるべくイーパンぽさを出しましょう。まあイーパンと言うより前世の俺の祖国、日本何ですが」


「そことイーパンが凄くにているのですわよね?」


「そうですね、イーパンは俺の祖国の古い時代、安土桃山時代と言う過去の時代くらいですかね、それと凄く文化がにています。まあ文献で読んだだけで、俺自身は行った事無いんですけど」


「それは構いません、イーパンと言うより、貴女の前世の祖国に雰囲気を似せて作りましょう」


「解りました、じゃあちょっとデッサンしてみます」


「デッサン?」


「絵に俺の考えを描く事です」


 俺は店の感じを描いた。それなりによく描けたと思う。日本庭園を作り、そうだな、一度行ったことがある。殿ヶ谷戸庭園みたいな感じにしよう。


「まあ!? とても優しい雰囲気だわ!? これ私もとても気に入りましたわ」


「そうですか、良かった」 


 店は半月足らずで仕上がった。瓦は無いため、それに似せて木造で屋根を作ったらしい。庭園も日本庭園と言っても過言では無いくらい完璧に仕上がっていた。

 店の名前はカツアゲ、たっぷりと設けられる様に俺が考えた。取り敢えず串カツ等をベースに考えたとホラを吹いておいた。


 そして試食会、俺と料理研究会の面々が板前となり、ランスロット様やラウンズ達、ラフィール様、エスメロード師匠、それにエリザベート等の俺のパーティメンバーに、ライオネット様等が試食をする。

 新鮮な魚等は漁師に頼み、取って来たものをそのままラウンズ達に鬼じめさせた。魚の鬼じめとは、魚の鮮度と旨味を最大限に保つために行う、エラを切ってから冷たい冷海水などに素早く漬け込んで血を抜き、急冷する活け締め、血抜きの手法の一つである。

 これは実際に鬼じめしたのとそうでない従来のやり方で取った魚を漁師達に食わせ、鬼じめの凄さを解らせた。漁師達は唸っていた。


 だが俺の本当の隠し球は、ぎょく、つまり卵である。これの練習が一番時間がかかった。寿司屋の良し悪しは、このぎょくの美味さで決まると言って過言では無いくらいだ。

 確かに俺は和食レストランでバイトしていたが、そこのぎょくは大した事は無かった。だが俺は本当に美味い寿司屋でぎょくを食った時、これこそが和食の究極だと確信した。そして俺は美味いぎょくの作り方を兎に角極めて行った。


 そして最高のぎょくを作るには、だし汁が全てを決める事を俺は学んだ。この秘伝のだし汁を教える事が、今回のリーザベルトへの恩返しと俺は決めた。その通り、リーザベルトは俺のぎょくを食って、涙を流していた。これこそが本当の料理だと彼女は感動していたのだ。

 リーザベルトは自らが必ず開店前にぎょくを作る事を決心し、俺からぎょくの作り方を学んだ。幾度もの失敗を経て、俺が合格点を出すまでに彼女は俺のぎょくを極めたのだ。


 試食会は全員一致して、最高の盛り上がりを見せた。


「アリス! 帝国にもこの店を出そう!! 僕はもうこの味を忘れられないよ」


「そうだな、ガキ共にも食わせてやりたいしな、なら帝国からこの店に何人か修行にこさせれば良い」


「そうしよう、さっそく手配するよ、漁師も確保しないとな」


「待つがよい、ここまでの物、我がボストニアにも欲しいぞ。妾も何人かコックを修行にこさせよう」 


「そうして下さい師匠、このぎょくの作り方はリーザベルト様から学んで下さい。リーザベルト様は完全に究めましたから」


 こうして直ぐに寿司処カツアゲの2号店、3号店がタルタリー、ボストニアと国をまたいで出来るのだった。


 そして本番、リーザベルト様が王妃に寿司を食べさせる日が来た。このときばかりは俺が板前となり、リーザベルト様はエリザベート様やライオネット様等と一緒に王妃様と客側に回った。


「ふむ、本当に美味しいわ」


「お母様、次は是非この卵を食べてみてください」


「卵ですか、ではそれを」


「ハイ! ぎょく一丁!」


 俺はぎょくを王妃様に出した。当然この言葉を付けた。


「王妃様、このぎょくは開店前にリーザベルト様がご自身で仕込んだ物ですよ」


「まあ、リーザベルトが」


「お母様、先ず食べてみてくさい。このぎょくは特別なんですの、だから私が自身で必ず作ると決めたんですの」


「どれ・・・本当に美味しい!! この卵は色々な味が優しく溶け合っているのですね、どの様にしてこの様な味を」


「これはイーパン料理の基礎となる、出汁が決め手何ですの。甘さだけではなく、この様に様々な美味しい旨味成分が黄金比により絡み合い、初めて出せる味なのですわ」


「成る程、本当に研究され尽くした味なのですね、リーザベルト、貴女は本当に料理がお好きなのね、これからも頑張りなさい、私は応援してますよ」


「ハイ、お母様!」


 どうやらリーザベルト様の作戦は成功したようだ。王妃様が嬉しそうに笑っている。元気を取り戻した様だ。



「本当にありがとう、アリス。お母様、本当に元気になってくださったわ」


「そうですね、とても良い笑顔でした」


「今回ばかりは私からも礼を言わないといけないわね、ありがとうアリス」


「何か手放しでエリザベートにそう言われると、何か裏がありそうで怖いですね」


「何よ! 此方が下手に出てれば」

「エリザベート、今回は本当にアリスに助けられたんだ」


「わかってます、お兄様」


「アリス、今後何か有れば俺達兄弟が必ず手をかすと誓おう」


「では早速一つ、俺の金を自由に使える様に」


「す、すまない、それだけは無理だ、君に自由に出来る金を持たせるのはある意味ルシフェルよりも危険かもしれない」


「嘘つき!!」


 だがまあ王妃様が元気になって本当に良かった。




 その日俺はベディビィアを連れ、ギルドへポーションを卸しに行っていた。たまたま通りかかった墓地に、かなりの大勢の人が居るのを見かけた。


「何やってんだろうな?」


「そうですね、聞いてまいりましょう」


 ベディビィアはその集団へ聞きに行ってくれた。内容を聞いて、驚くべき事をベディビィアが教えてくれた。


「聞いてまいりました、お母様。何でも数ヶ月前、この辺りにはアンデッドが現れたそうです。ですがそのアンデッドを聖女候補の誰かが退治してくれ、その後この墓地の浄化をしてくれたそうです。お母様は記憶は?」


「ああ、それ俺だ。ギルドから指名依頼で俺がアンデッドを倒したんだよ」


「やはりお母様でしたか。あの者達は、この墓地に埋葬されている者達の家族や、アンデッドに家族を殺された者達です。こうやって月に一回聖女、つまりお母様へ感謝の祈りを捧げているそうです。家族の無念を晴らしてくれた事、アンデッドとなった家族を浄化してくれた事等の」


「成る程な、そんな大層なもんじゃ・・・・ん、待てよ」


「どうしたのですか? お母様」


「ベディビィア、俺良いこと思いついちゃった」


「本当ですか!」



 俺は早速その集団の方へ行った。



「貴方達ですか、この墓地に埋葬されている方のご家族やアンデッドに家族を奪われた方達と言うのは」


「お嬢ちゃんは?」


「私ですか、私はアリス、この墓地の浄化を頼まれてそれを行った者です」


「え? まさか、お嬢ちゃんが」


「私も一緒に祈り、あなたがたの家族のご冥福を祈りましょう」


 俺は態と聖魔法で付近一帯の祝福を行った。それは神々しい輝きであり、一帯は優しさに包まれたのである。


「お、おおおお!! 何て温かい光だ!!」


「安らぎに満ちているわ!」


「まさかこんな小さなお嬢ちゃんが」


「馬鹿! あんた、聖女様だよ!」


「これより学園街の一角に、皆が祈れる場を作りましょう。あなたがたの様な悲しみを抱え生きていく者達の為にはそういう場が必要でしょうから」


「おお! 美しいだけではなく、何て慈悲深い、これが聖女様の愛か!!」


 またたく間に皆が俺の周りに膝を付き、俺に向かって祈りを捧げてきた。


 この世界の、特にこの国の聖女信仰はとても根強い。何で俺はこれを利用する事を思いつかなかったのか、我ながら恥ずかしいぜ。そして何より、俺は聖女候補だ、だからこれは詐欺ではない。

 

 俺は直ぐにアスラン達に命じ、学園街の一角へ小さな空き家を借りさせ、そこを神聖統一教教会と名付けた。この国で聖の名を付けるのは、神聖力を持っている者以外許されない。つまり俺なら聖を名乗れるのだ。 


 先ずは様々な用意を俺はした。

 学園で神官の娘を先ず勧誘した。その娘はカノンと言う。俺ほどではないが、結構ろくでもない娘だったりする。

 御守りも作った。作っただけで、何の効果もない。その他おみくじ何かも適当な事をカノンに書かせ、ハズレのないインチキおみくじである。その他にテキヤの屋台も作り、聖女饅頭、聖女焼きそば、等として、隣の空き家も借りてそこで売り出す。当然だが法外の値段の安壺も用意してある。

 そして目玉は懺悔室である。そこで俺が説法を説くのである。実はカノンはその為に雇った。懺悔何てされても俺なら秒で忘れろ位しか出て来ない。だがカノンは違う、しょっちゅう父が懺悔部屋で話している事を聞いている、だからこそ其れらしい言葉が出てくるのだ。


 やがて教会が始まると、直ぐにあの墓地で遭った者達が訪れた。奴等早速聖女饅頭や御守り、おみくじをやっていた。そこでテキヤのアスランがきり出す。


「あんたは懺悔していかないのかい?」


「懺悔? それは何だ兄ちゃん」


「懺悔ってのは自分が犯してしまった罪を聖女様に全て話し、救われる事だよ。聖女様がその罪を洗い流してくれるって訳だ」


「そんな事が!! その懺悔とはどうやってすれば良い」


「教会にいるシスターに懺悔したいと言えば、懺悔部屋に案内してくれるぜ、俺もやったんだが、心が洗われる気分だったぜ」


 清々しいインチキ顔でアスランはその男を見た。男は早速教会内の懺悔室へ向う。その男は早速インチキシスターセリーヌに懺悔したい事を告げた。


「そうですか、では思っている事を隠さず、全て聖女様へお話しなさい。きっと聖女様が全ての罪を洗い流して下さるでしょう」


「解りました! シスターセリーヌ」


 セリーヌはまた騙されていた。アリスからは墓地に来ている者達の祈る場所を作ってやりたいとしか聞かされて居ない。だがセリーヌは気がついていた。アリスのやる事だ、どうせ利益目当てのインチキ教会に決まっていると。

 このとき既にセリーヌのしたたかさは度を超えていた。最早悪女に片足を突っ込んでいたのである。アリスからは祈る場所を作ってやりたいとしか聞かされて居ない。ならばアリスが何をやっても自分に罪は無い。これが今のセリーヌであった。


 







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