36話 怒りのエリザベート
「何故お主があの娘のローブを着ておる!?」
当然だが俺の警報は正しかった、師匠とランスロット様なら、アストライアが装備していたローブを勿論知っている。
「じゃあやはりこれはアストライア様の」
その瞬間エリザベートは俺の事を般若の様な顔で睨んだ。
「ちょ、ちょっと待ってください!! 仮にそれがアストライアのローブでも、俺がそれを知っている訳無いじゃないですか。俺にはアストライアの記憶は何度も言ってますが有りません!」
「そ、そうね・・・でも納得がいかないわ! これがアストライア様のローブなら貴女が纏うべきよ!!」
「でも脱げませんよね?」
ザマァみろエリザベート!! 俺はぜってぇ着ねえ。
「ぬ、脱げないの!?」
ランスロットが焦って、そして憐れみの目でエリザベートに問うた。
「ぬ、脱げません!!」
そして涙目でエリザベートが返した。これだ!! 俺はこの顔のエリザベートを見たかったのだ!! 素晴らしい! 俺の財産を差し押さえたエリザベートには、やはりこの程度の顔はしてもらわないと!!
「何よ! 嬉しそうな顔をして!! アリス!!」
「そ、そんな顔はしてませんよ。でもやはりパーティの要であるエリザベートには、それくらい高い防御力のローブが有れば、私も安心出来ます」
「た、確かにエリザベートは私達のパーティの要です。アリスの言う事にも一理有ります」
「そうでしょうセリーヌ!」
「うん、俺もそう思う、それがそれ程の防御力が有るのなら、エリザベートが纏っているのは安心だ」
「それの防御力は妾が保証しよう、それは物理攻撃耐性の他に、魔法防御軽減まで備わっておる。更に魔法力を倍にする。確かにアリスの言うとおり、パーティの要であるエリザベートが着るのが良いであろうのう」
「そんなに凄いローブ何ですか!?」
「当然じゃ、その当時それとアリスのティアラは妾が作った物じゃからな」
「ならエスメロード様、脱ぎ方を知っていますか?」
「そりゃお主達の魔力では脱げんじゃろう、せめてアストライア位魔力を上げなければな」
「え!? アストライア様位・・・・・」
「それは持ち主の残魔量に応じて強化されるからのう、一定以上の魔力が無いと、危険と判断して取れなくなる」
「このティアラも!?」
「その通りじゃ、妾の元で魔力を高めれば取れる様になる、じゃがエリザベート」
「・・・はい」
「お主は相当頑張らねば一生そのローブを着たままじゃろうな・・・・脱げるのは死んでからになりそうじゃ。まあ安心せい、それにはクリーンの魔法が施されておる。常に清潔じゃ」
「そんな!?」
「大丈夫ですエリザベート、師匠の元で一緒に頑張りましょう」
「そんな他人事の様に!」
「でも今一番可能性が有るのはそれですよ」
血反吐を吐け、エリザベート。俺が見守って居るぞ、楽しみながら。
「妾は構わんぞ」
「お、お願いします・・・エスメロード様」
何と今日は素晴らしい日だ! あの地獄の特訓にエリザベートを巻き込む事が出来た!!
そしてフォルテシアに戻ってからは正に地獄だった。朝は早起きしてから学園への登校前迄特訓。学園の講義が終わってからは、研究会での時間以外は寝るまで全て特訓。気の抜ける場所は研究会だけとなった。
だがエリザベートのゲロと血反吐を吐く姿は、そんな中でも俺の癒しとなった。毎日エリザベートは真っ青な顔をして登校している。ザマァ見やがれ、俺の金を差し押さえるからそうなるのだ!!
だがエリザベートの怒りは最早怒髪天であった。
こんな事になったのは全てアリスが強引にこれを着させたせいだわ、絶対にこの恨みを晴らしてやる!!
こうしてエリザベートのアリスへの復讐計画が始動したのである。エリザベートはアリスが嫌がる服の好みを徹底的に調べ上げた。絶対にアリスが嫌がる服をアリスに着させたままにする、これが現在のエリザベートの目標となった。
「確かに、アリスの服は全体的に・・・・」
「はい、私は一緒に服を何度かアリスと買いに行っているのですが、アリスは絶対にそう言う服を選びません」
「よく解ったわ、ありがとう、セシリー、セリーヌ」
「ど、どうするのですか? アリスだってよかれと思ってエリザベートにそのローブを譲ったのだと思いますが」
「解ってるわよ、心配しないで、アリスだって仲間よ」
「そ、そうですよね・・・」
だがエリザベートの心の中はアリスへの復讐心で満たされていたのである。そしてエリザベートはフォルテシア王国最高のデザイナーを呼び出した。
「何方がお召しになるのですか? エリザベート様にこう言う服は少々・・・」
「私じゃないわ、とても大切な友達にプレゼントするのよ、だからお金に糸目はつけません。兎に角最高に可愛い物を作って頂戴、色もデザインも、幼女が着て可愛い、と誰もが思う様なドレスを作って頂戴」
「そうですか、では最高の一品をお作りしましょう」
「お願いね」
そしてエリザベートは出来上がったゴスロリドレスを持って、エスメロードの所に行った。
「絶対に必要何です、だってアリスはアストライア様の生まれ変わり何ですよ? だからこそ最高の防御力があるドレスがアリスには必要だと思うんです」
「しかしのう? アリスはこのままで行けばアストライアを超えるぞ」
「だからこそです師匠、アストライア様が復活した様に、悪魔王ルシフェルは更に強力になって生まれ変わると私は思います。ならばそれに対抗出来るだけの装備がアリスには絶対に必要です!!」
「ウム・・・・確かにアリスは今や我等人族の希望と言っても良いな。・・・・よし解った」
そして用意されたドレスは・・・・凄まじく可愛いゴスロリドレスであった。
「おい、エリザベート・・・・」
「何でしょう」
「お主、これをアリスに着させるつもりか? 妾は多分嫌がると思うのじゃが・・・」
「師匠、アリスは10才です。それにあの娘は発達が遅く、見た目の年齢はまだ7才前後、あの娘の可愛さを引き立てるのはこう言う服何です」
「た、確かにそうじゃが、本人はそう言う服は着とらんがのう」
「だからこそこう言う服が似合うと言うのを彼女に教えてあげるんですよ」
「そ、そうか・・・妾には悪意すら感じるが、まあよい。兎に角防御力が高く、魔力が上がるものならデザイン等どうでもよい」
エスメロードはお洒落には無頓着であった。本人の美貌が勿体ない程にエスメロードはお洒落に無頓着なのだ。もしエスメロードに少しでもそう言う感覚が有れば、この服がどう言う意図で作られた物か解ったのだが・・・
だがエスメロードは何も考えずにそのドレスに付与を施した。エリザベートの言うように、最強の魔力を使って・・・・・それはエリザベートが着ているアストライアのローブ以上に強力な魔力て付与が施されてしまった。
そしてエリザベートはアスラン達の心すら利用した。アスラン達が持つ、アリスへの恋心をエリザベートは言葉巧みに利用したのである。
「そ、そんな事姉御に出来るわけがねえ!」
「そうだ、姉御は俺達の女神何ですよ」
「だからこそよ、貴方達はアリスに死んで欲しいの?」
「そんな訳あるか!! 姉御は俺達が死んでも守ってみせる!!」
「ならば貴方達は私に強力すべきよ」
「何故そうなるんでやんすか」
「これを見なさい」
エリザベートはそのドレスを出した。
「お、おぉぉぉぉ!!」
「可愛い、何て可愛いドレスだ!!」
「天使だ!! 姉御がこれを着たら完全に天使だ!!」
「お、俺は、姉御がこれを着てくれた姿を見たら死んでもいいでやんす」
「王国最高のデザイナーに、アリスの為だけに作らせたドレスよ」
嘘は言ってない・・・目的は復讐だが・・・・
「そしてこのドレスには、あのエスメロード様によって、最高の付与魔術が施されているの。これを着る事によって、アリスは如何なる悪意からも守られるの。これをアリスが着ることにより、貴方たちの女神はルシフェルからも守られるのよ。アリスを天使の様に可愛いままで生きていて欲しいと貴方達が思うなら、無理にでもこのドレスを着させるのが、貴方達のアリスへの愛だと私は思うわ。私だって本当はこんな事をしたくは無いのよ。だけど私にとってもアリスは可愛い妹分なの、あの娘は自分だけが守られるなんて絶対に嫌がるわ。そうでしょ? だからアリスはルシフェルと戦う決意をしたのよ。前世の自分の子供達だけを戦わせる事を嫌がって。そう思わない?」
「ぐぬぬ・・・・」
「解ったでやんす」
「兄貴!? 協力するのか!?」
「姉御が天使になり、そしてルシフェルから守られるのなら」
「た、確かに、2・3発殴られるのは致し方ねえ、だが姉御が守られるのなら」
こうしてアスラン達はエリザベートに協力する事になった。まんまと騙されたのである。
「いいわね、通常でアリスに挑んだって絶対に返り討ちに合うわ、だから薬が切れる瞬間を狙うのよ。あの娘は最近自分の力に過信して、凄く無防備になっているの。だから部屋のドアに鍵をかけないの、そこを狙うわよ」
「あ、姉御の部屋・・・いい匂いがするんだろうな」
「姉御の部屋か、エリシオンだぜ」
「くだらない事は考えない!! 兎に角あの娘を守る事だけを考えなさい」
「そうだぞガロード、姉御の下着を盗むのは事が終わった後」
バキ!!
「痛え!」
「下着泥棒何てやったら絶対に許さないわよ!!」
そしてアリス強襲は遂に決行された。アリスは薬が切れても何時も直ぐには飲み直さない。大体が翌朝飲むのである。これは学園内と言う完全なセキュリティがアリスを慢心させていたのである。
「今よ!!」
エリザベートとアスラン達はアリスの部屋に飛び込んだ。アリスの薬が切れるタイミングをエリザベートは知っていたのだ。最近のエスメロードによる、アリスと一緒の訓練がそれをエスメロードに教えたのである。
「すまねえ姉御!」
「お、おい!! お前ら!?」
「姉御、すまねえ、だけど俺達は姉御を絶対に守りてえんだ」
「守ってねえじゃねえか!! 今襲ってんだろうが!」
くそう、本気で男に押さえつけられたらこんなもんかよ!! 全く動けねえ。
「見るんじゃ無いわよ!! 向こう向いてなさい!!」
エリザベートはアリスのパジャマを脱がせ、ドレスを強引に着させて行った。
「エリザベート! 止めてください、コイツらガン見してますよ!?」
バキ!!
「ぐは!!」
「見るなって言ってるだろ!! 向こう向いてなさい!」
そして見事にアリスはそのピンクと白のゴスロリドレスを装着してしまったのである。
「うん、とても可愛いわよアリス」
「・・・・お前等、覚悟は出来てんだろうな」
俺は薬を一気飲みした。そしてアスラン達をタコ殴りにしたのだが・・・何と顔面ボコボコになりながらも、アスラン達は恍惚の表情を浮かべてる。俺に殴られる事で股間にピラミッドを作っていたのだ。
「天使の姉御、可愛いでやんす」
完全にご褒美になっていた。最早殴る気が失せた・・・・
「し、しかし・・・これは何の真似ですか、エリザベート」
「貴女の為に作った一品物よ! 王国最高のデザイナーに作らせて、最高の付与魔法を師匠にかけて頂いたの。これでルシフェルが相手でも大丈夫よ。それにとても可愛いわ、アリス」
「可愛くねえ!! 畜生!! 何だこれ脱げねえ、こんなゴスロリ服、冗談じゃねえ!!」
「あははははは!! その顔が見たかったのよ! 本当に可愛いわ! 凄く似合っているわよ、まるで幼いお姫様みたい」
幼いお姫様みたい、幼いお姫様みたい、お姫様みたい・・・・・
俺はこのエリザベートの言った言葉に完全に魂を撃ち抜かれた、絶対に俺がこう言う服を着たらこうなるだろうと一番恐れていた事態だったのだ。だがら俺はドレスを着るにしても、絶対に大人っぽい物を選んでいた。ランスロットから贈られたドレスもマーメイドこそ彷彿とさせる物だが、幼く可愛い要素は無かった。だから着たのである。
だがこれは、俺が完全に避けて来た物の集大成だったのだ。
アリスの着たドレスは、ピンク地に白の花びらを基調し、背中に大きな蝶結びがあしらわれている、完璧なゴスロリドレスであった。全体的にドレープがあしらわれており、確かに可愛らしいドレスなのだ。アリスはその顔立ち、そして身体つき、あらゆる所がこのドレスに完全に似合う。アリスが恐れていた通り、それはアリスをまるで天使の様に見せていた。
だが何より、禍々しい悪魔のティアラ、そして天使のドレス、このミスマッチが本当に酷かった。




