34話 リーザベルトからのお願い、そして弟子入り
絶対に怒らない、そう言う約束で、俺はラフィール様に呼ばれていた。それはリーザベルト様とライオネット様からの頼みだった。
「あの寿司ですか?」
「ええ、勿論貴女がオーナーでよろしくてよ」
「それを王都に作る事で今回の事は水に流そうと姉上と話しも済んでいる。そして其れ等の諸費用は此方で持とう」
「此方は粗利の30%で構わないですわ」
「じゃあ残りの7割は俺の」
「貴女のお父様に行くように此方で手配致します」
「チッ!」
「何か言いました? 何なら何故そうなるか貴女のお父様に私が懇切丁寧に説明を致しましょうか」
「それで全く問題有りません是非そうして下さいエリザベート!!」
「最初からそう素直になれば良いのよ」
ぐぬぬ・・・
「で、でも何故今更そんな店を?」
「お母様の為です」
「王妃様の?」
「ええ、お父様とダニエルお兄様があんな事になったでしょう? あれでお母様は酷く落ち込んで、塞ぎ込んでしまっておりますの。あの2人は自ら巻いた種なので仕方ありませんが、お母様は全く知らなかった事なのです。お母様は貴女が作ったあのお寿司や天麩羅をとても気に入っておりましたの、ですからそれで元気を出して頂こうと思いまして」
「そうですか、解りました。そう言う事なら全面的に強力します」
リーザベルトからの頼まれごとは、アリスが前に料理対決で作った天麩羅や寿司を出す店を王都に作って欲しいと言う物だった。それをアリスがオーナーとして店を出し、王家で用意するコックに技を伝授してもらいたいとの事だった。
実際に動くのは、明日の婚約式が終わり、フォルテシアに戻ってからなのだが、ランスロットがそこで話しに割り込んで来た。
「その寿司と天麩羅と言う食べ物、僕にも作ってくれないかな?」
「それは良いんだけど、ランスロット様、この帝都は海から大分遠いんじゃないか? あれを作るには、新鮮な魚介類が必要なんだよ」
「母上、それは問題有りません」
「何で?」
「この帝国は、母上と私達が過去暮らしていた海岸を中心に広げて行った国なんです。だからあの海岸には何時でも行ける様に、この皇宮とあの場で転移陣を繋げて居るんです」
「ならアーサー、俺が今から言う魚介類を明日式典が終わったら取って来てくれないか?」
「お任せ下さい母上」
そして翌日、俺とランスロットの婚約発表が行われた。そして現皇帝、(仮の偽物)からランスロットへの皇位継承の儀、その後の戴冠式。更に現、(偽物)の皇妃から、俺へのカリキュオンの授与式もそこで行われたのだ。当然ここで使われているカリキュオンは精巧に出来た偽物である。本物は既に俺の手の中にある。
此等の式典は全帝国皇族、帝国貴族達の前で行われ、そこには何と周辺従属国の国王夫妻達や、フォルテシアからはライオネット王太子、ラフィール第一王女、リーザベルト第二王女、エリザベート第三王女も出席している。
更に何と、そこにはボストニア女王エスメロードの姿もあった。何とこの式典にエスメロード女王が参加したのは、長い帝国の歴史の中でも初めてであり、入場挨拶でその名が呼ばれた時には皆がどよめいていた。
ボストニア女王エスメロードは、もう何千歳とも言われているのに、その姿はどう見ても20代前半にしか見えなく、俺も正直驚いた。
そして遂にこの時が来た。そこにはボストニア女王エスメロードが壇上に立ったのだ。
「それではここで、ボストニア女王エスメロード陛下より、重大な発表が御座います。皆様ご静粛にお願い致します」
「この国に来るのは初めてであるな、妾はボストニア女王エスメロードである。長年我がボストニアとこのタルタリー帝国との関係としては、正直悪かったと言っても過言では無いであろう。皆もその様に承知していたと思う。じゃがそれはここまでの話し、これからは我がボストニアとタルタリー帝国は、今後手を取り合って強力していく事になるであろう」
この時特に慌てたのは、周辺諸国の王達だった。何故ならこの周辺諸国はボストニアによって、帝国からの侵略から逃れて居ると言っても過言では無い状態だったからだ。
「皆の動揺は解るが先ずは妾の話しを聞くが良い。もう帝国はこれ以上の他国への侵略はせぬ、そうであるな? 新たなる皇妃、アリスタルタリーよ」
何!? 何故俺に聞く?
俺は慌ててランスロットの顔を見た。だがランスロットは笑いながら頷いてみせた。ボストニア女王の方を見ると、手招きして壇上に上がって来るように俺に促していた。俺は仕方なく壇上に上がった。
「どうじゃ? 皇妃アリスよ」
「あ、ああ・・・しない、と言うか俺・・・私は戦争は嫌いだ」
「おお!! 皇妃様が!!」
「皇妃様が侵略戦争はしないと!」
「そうじゃ、この国の民や貴族なら皆知っていよう、このタルタリー帝国は、皇妃こそが全ての権限を持つ。次期皇妃となり、カリキュオンを既に持つ、このアリスタルタリーが侵略戦争をしないと言うならば、それがこの国の今後取る道となるのじゃ。では何故このアリスタルタリーがそれを皆の前で約束したのか、その理由をこれから妾が説明しよう」
成る程、ここでルシフェルの復活と俺達がルシフェルと戦う事を国民に話す訳か・・・
「皆も知っていよう、かつて悪魔王がいた事をそしてそれを倒した聖女がいた事を。その聖女が遂に復活する時が来たのじゃ。フォルテシア王国には強い聖魔力を持った聖女候補が既に数人おる。
再び彼の国に聖女が復活する。つまりそれは、悪魔王も復活する事を指す」
「「「おぉぉぉ!! 聖女様が、聖女アストライア様が復活なされるのか!! なら悪魔王が復活しても恐れるに足らず!!」」」
「そうじゃ、そして何を隠そう、その聖女候補の一人がこのアリスなのじゃ!!」
「おぉぉぉ!! 我が帝国の皇妃様が聖女候補!! それは凄いぞ! 姫様!!」
「アリス姫様!!」
集まった王族達や貴族達の興奮は絶好調だった。それ程この世界において、聖女と言うのは神格化されているのだろう。実は極道聖女何だが・・・俺だけど・・・
取り敢えず何処ぞの国の天皇陛下の様に手を振っておいた。
「だからこそ妾は決心した!! この者達の全面的支援をじゃ!」
そこでエリザベート、セシリア、セリーヌ、ギルバート、コレンが壇上に上がった。
「皆に紹介しよう、先ずフォルテシアの第三王女エザリア、この者も強き聖魔法を使う聖女候補の一人である」
エリザベートがカーテシーて挨拶をした。
「次にセシリーフランソワ、フォルテシア王族に名を連ねるフランソワ大公家の令嬢である。彼女は自ら望んでアリスとエリザベートに付き従い、伴に悪魔王討伐に参加する」
セシリーもカーテシーで挨拶をした。その後ギルバート、コレン、セリーヌの順に紹介された。その後ランスロットが壇上に上がった。
「良いか皆の者、我が帝国はこの者達と伴に、悪魔王ルシフェル討伐にこれより全面的支援を行う!! これは我が妻の思いだからだ!! 心優しい我が妻アリスは、この世界に住む人々を守りたい、その一心でルシフェル討伐に名乗りを上げた。自らが聖魔法を使えるからだ!! 私はその思いを守る、それをこの場で宣言する!! 誇り高き帝国貴族達よ!! 我が妻に続け!! 帝国は一丸となってこの世界の平和を守り切るぞ!!」
「そうだ!! 私達帝国貴族はアリス様に続くぞ!!」
「アリス様! 我が伯爵家はアリス姫様と心を同じくしますぞ!!」
「我が家もだ!!」
「我が国もアリス姫に続くぞ!!」
こうして茶番劇は終わった。物凄い興奮の坩堝となったこの催しは、人族や獣人族、エルフ族やドワーフ族、魔族等の国にも魔導通信で流された。
人類国家最大の帝国と、それに次ぐ王国が手を取り合って悪魔王ルシフェル討伐に名乗りを上げた。聖女伝説の残る多種族の国も続々と名乗りを上げだした。当然だ、此等多種族の国家にも聖女アストライア伝説は未だ色濃く残っている。
つまりボストニア女王はこれをやりたかったのだろう。だからこそラフィール様を通じてこのタルタリーの式典に来る事を伝えていたのだ。
その後俺はランスロット様と共に、初めてボストニア女王と面談する事になった。
「始めましてと言うか、久しぶりと言うか、わからんのう? アストライア、いや、アリスよ」
「え? エスメロード様は、俺と、いや、アストライアと会っていたんですか?」
「坊よ、お主伝えておらなんだのか?」
「エスメロード様、いい加減坊は止めてくれませんか?」
「良いではないか、坊は坊じゃ」
「はあ・・・アリス、アストライアは聖魔法、と言うか魔力コントロールをこのエスメロード様に習ったんだよ」
「え!? て事は俺の師匠?」
「そうなるのう、そしてそのもっと昔、ランスロット坊やに魔法を教えたのも妾じゃ」
マジか! てかこの人幾つ何だよ!?
「じゃあランスロット様もこの人が師匠なのかよ!?」
「ま、まあそうなるね」
「しかし転生してもその口の悪さは変わらんのう、今となっては懐かしい限りじゃ。まあ本題に入ろう」
「本題?」
「ランスロット坊から聞いた、お主薬でその膨大な魔力を抑えておるそうじゃな?」
「あ、ああ、そうっすね、効き目がキレると死にそうになります」
「アストライアはそんな事は無かったのだがのう」
「え!? そうなんですか? じゃあ俺は何で」
「二人分」
「え? 2人分て」
「アリス、先日話しただろう? 君はフィーネの魂とアリスフィーネの魂が今度こそ一つとなって蘇った。つまり膨大な2人分の魔力がその身体に全て治まってしまっているんだ」
「え? でもさ、なら何で俺がマーメイドのフィーネだった時には大丈夫だったんだよ?」
「マーメイドと人ではそもそもの魔力強度が違うのじゃ、マーメイドは人の何倍もの魔力強度がある」
ち! 器の差だったのか!!
「そこでじゃ、お主学園にまた戻って聖女訓練を再開したいそうじゃな?」
「はい、そのつもりです。取り敢えずルシフェル倒す事を決めましたから」
「今のままで聖女訓練を再開すればお主死ぬぞ」
「え!? ・・・・でも、薬の効き目はまだ全然」
「少しずつ、効き目が短くなっておらんか?」
確かに・・・言われてみれば、今は2日にいっぺん飲んでいる。
「アリス、僕は君を戦いから遠ざけたいと思っていた事を話したよね?」
「あ、ああ・・・」
「僕には解っていたんだ。君が完全に聖女の力を・・・いや、フィーネの力を覚醒させてしまったら、今は人であるその身体が持たない事を・・・本当の理由を言うなら、だからこそ僕は君を戦いとは無縁な所に起きたかった」
「で、でもよ・・・そんな事、俺はガキ共にだけ戦わせるなんて!! 絶対に嫌だぞ!!」
「落ち着かんか!! 未熟者。先ずは妾の話しを最後まで聞くが良い」
「は、はい・・・」
「良いか、今妾が言うたのは、そのまま何の手立ても取らずに力を覚醒させれば、その人の身体では持たんと言ったのじゃ」
「え!? じゃあ何か手立てがあるんですか?」
「その通りじゃ、その為にランスロット坊は妾を頼って来たのじゃ」
「ランスロット様・・・が」
「いいかいフィーネ、その膨大な魔力を君が思う様にコントロール出来れば、人の身体でもその巨大な魔力を抑える事が出来るんだ。だが僕にはその君の魔力をコントロール出来る程の知識も技もない。だから君にそれを教える事が僕には出来ないんだ。事魔力制御に関しては、エスメロード様以上に使いこなせる者は居ない。その緻密な魔力制御術は、エスメロード様は魔族すら遥かに凌駕する」
「そう言う事じゃ、今ここで決めよアリス、再び妾の弟子となるか?」
迷っている隙なんざねえ、この人の弟子になれば、このクソったれな身体とおさらば出来る。
「なります、俺を弟子にしてください、エスメロード様」
「一瞬の迷いもないか、良い返事じゃ。じゃがその道は辛く長いぞ」
「根性だけは誰にも負けねえ!!」
「あの時のアストライアと同じ事を言う、本当にお主はあのアストライアの生まれ変わりなのじゃのう」
ゲラゲラと笑っていやがる、ここでも俺が全く進化してねえ事が解ってしまうとは・・・




