32話 バレた、地獄だ
俺は彼を・・・ランスロットを侮っていた。確かに俺のピーを・・・ていうか詳しくは俺のじゃねえが、あれを購入していた辺りで気が付くべきだった。
そう、完全にストーカーである。いや、それ以上だ。帝都の名前がフィーネ、城の名前がマーメイドキャッスル。そしてこのカリキュオンはあの海底神殿から見つかったお宝とフィーネの骨から出来ていた。そしてタルタリー帝国の名前は俺がよく作っていたらしいタルタルソースから取っていた。
最早ここまで行くと病気である。あのドレス群も全てマーメイドを思わせる物だし、どうも俺の為に婚約式はサプライズを用意しているらしい。
また其れ等を嬉々として話すトリスタンやベディビィアも大分ヤバい事が解った。確かに一万年以上待っていたと言う部分は解るが、其れを差し引いてもこいつら病気以外のなにもんでもねえ。俺は完全に其れ等の話しを聞いてドン引きしてしまった。これは親父も同じだった。
だがお袋はそれだけアリスを愛しているのね、とか言って目をトロンとさせていた。お袋もかなりヤバい。
そんな時、ランスロットの元には彼の頭を悩ませる、非常事態が舞い込んでいた。
「オレオレ詐欺・・・・・」
「何ですか父上、何か問題でも?」
「は、は・は・は、いや、フィーネはやはり変わっていなかったって事だよ。凄くフィーネらしくて可愛いんだけどね、でもこれは参ったな・・・」
「何が参ったの? 父さん」
「ああ、ガウェイン、取り敢えずこのラフィール殿下から来た親書を読んでくれ」
「うん・・・・母さん・・・らしいのかな・・・・」
「ガウェイン、僕にも見せてくれ」
ランスロットは頭を抱えた、何と婚約式出発前に、アリス達が王国貴族相手にオレオレ詐欺を働いて、それの状況収集の為に少し婚約式に遅れそうだと書いてある。
「ていうかさ、ベディビィアやトリスタンも一緒にいたんだよね? 何で止めなかったのさ」
「僕が人選を間違えた、トリスタンは腕は確かだけど純粋過ぎる。ベディビィアはフィーネの言う事は全て肯定してしまう。完全な人選ミスだった」
「どうするの? 父さん、流石にラフィール王女に丸投げは不味いんじゃないかな? 母さんのしでかした事だし」
「すまないアーサー、本当なら僕が行かないとならないんだけど、婚約式の用意がある」
「はあ・・・わかりました父上、賠償金を持って私が行って来ます」
「本当にすまないアーサー」
こうしてアーサーは謝罪と賠償の為にフォルテシア王国へと向かったのである。だがそんな事すらランスロットにとってはアリスが可愛くて仕方なかったのであった。これは息子娘達、ラウンズにとっても同じであった。と言うかラウンズ達は慣らされてしまっていたのである。彼等はアリス、つまりフィーネに育てられた。悪事をフィーネに徹底的に叩き込まれたのである。
それが実は悪い事だったと言うのを彼等が知るに至ったのは、フィーネが死んでから何十年と経ってからだった。その後彼等はフィーネから教わった悪事の謝罪に駆け回った経緯がある。またフィーネがしでかしていた悪事の謝罪にも彼等は翻弄された。養殖場から魚を大量にパクって、大漁だぜ!! なんて言うのはフィーネにとっては朝飯前なのであった。
だが彼等は知っていたのだ。フィーネがやった悪事は皆彼等を育てる為にやっていた。その金を稼ぐ為にやっていたのだ。やった事は悪い、だがあの優しかったフィーネが自分達の為にやった事だった。だからアリスが多少悪事を働いても、また母さんか・・・仕方無いな、ですんでしまうのだった。
だがラフィールは激怒していた。彼女はランスロットやラウンズ達とは違うのである。
時は4日程前に遡る。アリスが出発したその日だった。その日元第一王子派閥の侯爵家、オズワルド侯爵が王宮に怒鳴り込んで来た事から事は発覚した。
「アリス殿はまだ居るか!!」
「すみませんオズワルド侯爵、アリス様はもう帝国に向け出立いたしました」
「ではラフィール殿下、それかリーザベルト殿下に目通りしたい」
「申し訳有りません、急な面会は」
「巫山戯るな!! 此方はアリス殿から詐欺にあったんだぞ!!」
「え!? ど、ど、どう言う事ですか!?」
その内容は直ぐにラフィール、リーザベルト、ライオネットの耳に入った。
「有り得る・・・」
「有り得るのですか!?」
「ええ、お姉様、ライオネットお兄様の言うとおりですわ。手口が完全にアリスの手口ですわ」
「そ、そうなのですか!?」
「以前に下着を売っていたお話しをしましたわよね?」
「え!? あ、ええ、そう言えば聞きました」
「あれも相手を騙す詐欺でしたの、本当にご自身で身に着けていたものならばまだしも、あれらは全てアスラン達手下に身に着けさせていたものを自身で身に着けた物と偽って売却してたのです」
「そう言う事を笑って行うのがアリス何ですよ姉上」
「な・ななな、何て事を・・・侯爵に詳しく話しを聞きます!! 直ぐにお連れしてください!!」
オズワルド侯爵は怒鳴り込んで来た。
「殿下!! あのアリスと言う少女は何なんですか!!」
「落ち着いて、オズワルド侯爵、先ずは詳しいお話しをお聞かせくさい」
「これが落ち着いていられますか!! あのアリスと言う少女は我が娘、エリアの名を騙り、妻から多額の金を騙し取ったのです!!」
ラフィール達はオズワルド侯爵から詳しい話しをようやく聞き出した。その手口はこうだ。
先ずアリスは学園で様々なお茶会に出席、そこから元第一王子派閥の家族構成等を調べる。その後ランスロットやラフィール等と懇意にしている事で、元第一王子派閥の貴族達へ口利きの約束をし、魔法通信の魔力石を貢ぎ物と一緒に貰う。
そして得た情報から家族を装い魔法通話で言葉巧みに金を持ってこさせる。その手口は実に巧妙で、正に悪の権化と言っても過言では無い物だった。
ラフィールはお茶会に出席していた元第一王子派閥の貴族達に早速聞き取り調査を行った。そして事実を明らかにしたのだ。
関わって居るもの達も全て割り出した。アリス、セリーヌ、そしてガロード達、何れも前科者達ばかりだった。
「直ぐにエリザベートへ魔法通信をなさい!! 今ならイトウ男爵家にて捕まえられる筈です!! 急ぎなさい!! ランスロット殿下へは魔法通信はまだ出来ません!! 通信鳥で私の親書を送ります!!
何と非道な! ですがあの子は既にタルタリー帝国皇妃、我がフォルテシア王国で裁く事は出来ません。ランスロット殿下に嫌味たっぷりに親書を書いてやるわ!!」
「ですが姉上、貴族達には何と説明を」
「平謝りするしか無いでしょう、タルタリー帝国皇妃には手出し出来ませんもの、何か彼等が納得出来ないまでも、それなりの役職を与えるなどして、なるべく穏便に事をすませるしかないわ」
「それしかありませんわね」
そしてイトウ家の魔法通信で、エリザベートは全身をワナワナと震わせていた。
「どうしたのですか? エリザベート」
「・・・・ギル、イトウ男爵に部屋をかりて来てくさい。セシリー、アリスとセリーヌをその部屋に呼んでくさい」
俺とセリーヌが部屋に付くと、そこには般若の様な面をしたエリザベートと、其れを恐れ慄いてて見ているセシリー、ギル、コレンがいた。そして小さな声で、ギルが俺に話しかけて来た。
『アリス、今度は何をやらかしたのさ』
『し、知らないよ、何であんなにエリザベートは怒ってるの?』
『此方が聞きたい、さっきから凄まじい怒りを抑えているんだ』
俺は何となく解った、多分あれがバレたんだと・・・
セリーヌも何となく察しが付いたみたいで、下を向いて震えている。
「アリス、セリーヌ、何で私がこれ程怒っているのか貴女達には想像が付いているのでしょう」
「な、何の事やら・・・」
「そう、あくまでもしらをキリ通すつもりなのですね、ではこの場にイトウ男爵も来ていただき」
「そ、それは勘弁してください!! すみませんもうしません心から反省します!!」
「また口ばかり、そう言って私が何度騙されて来た事か!! セリーヌ!!」
「は、ハイ!!」
「貴女にも失望いたしました、貴女はもう二度目です。前回はアリスにそそのかされたのだろうと思い許しました。ですがもう勘弁出来ません」
「も、申し訳ございません・・・」
「さてアリス、貴女は既にタルタリー帝国皇妃です、なので如何に同じ聖女パーティであるとは言え、貴女を裁く事は私には出来ません。なので今度ばかりは貴女の実の父上である」
「ど! どうぞ裁いてくださいエリザベート!!」
「そうですか、ならば仕方ありません。今後タルタリー帝国から入る貴女の公費も全て私が管理します、それで今回の事は両親には黙って置きましょう。セリーヌ、貴女の資産も全て私が管理します、そこから我が国が出した貴族達への賠償金を徴収します。言い訳は聞きません良いですね!!」
「「ハイ・・・」」
ち、畜生!! 何故バレた、てか鬼かよ、折角大量の公費が帝国から入るのに! 一切使えねえじゃねえか・・・
「アスラン達にも同様の罰を与えます、貴女達から説明しておきなさい!」
「「ハイ・・」」
「婚約式後遊びは絶対に許しません、全ての時を悪魔王を倒す為、聖女としての訓練に充てます。セリーヌ、貴女も今後毎日補佐としての訓練漬けです、覚悟しておきなさい」
「「ハイ・・・」」
こうして足取りの重い帝国への旅が再開されたのである。




