31話 嫁入り
ガレスが二万の部隊を率いてアリスを迎えに来た。そこにはアリス付きとなったメイド300人も同行していたのである。メイド長は豹獣人の女性だった。
「お初にお目にかかりますアリス姫殿下、メイド長のアニータで御座います。この者達は皆アリス様付きとなったメイド達で御座います」
「お、おう・・・てか、滅茶苦茶多くねえか!?」
「アリス様は名目上は皇太子妃殿下では御座いますが、実質は皇妃殿下に御座います。民にはまだ知らされていないと言うだけで、皇宮に居るものなら誰でも知っている事で御座います」
「そ、そうなんか、まあいいや」
「では早速お召し物を此方に用意しておりますので、お着替えを致しましょう」
「このままでいいよ、どうせ出発するのは明日だろ?」
「いけません、皇太子妃殿下がその様なお召し物では、直ぐに相応しいお召し物に着替えて頂きます」
こ、この獣人のメイド長厳しくねえか?
「わ、解ったよ」
部屋に入ると、そこにはズラリと如何にも高そうなドレスがハンガーに何枚もかけられていた。そしてその隣には、これでもかと言うくらい大量の装飾品等も置かれている。
「此等は皆ランスロット殿下が姫様の為に御用意された物です」
「こ、こりゃ売ったら凄え金になりそうだな!!」
「売りません」
「そ、そうか・・・」
マジでこのメイド長怖えな・・・・
3人のメイドに着替えさせられ、その後髪の毛をセットされた。
「今日はこのドレスに合わせて此方のティアラに致しましょう」
「な、なぁ? 黄金のティアラって・・・」
だがメイド長は直ぐに俺が持っていたカリキュオンを指差した。
「帝国ではそれを持つ者が真の帝国の支配者である事は1平民に至るまで知っている事です。黄金のティアラを身に着ける者は、カリキュオンの持ち主以外有り得ません」
「そうですお母様、私達はその為にタルタリー帝国を作ったんです。お母様の為だけにある国、それがタルタリー帝国何です」
「帝都へお越しくださればその意味が解ります、民は皆姫様がお越しくださる事を今か今かと待ち望んでおりますよ」
俺は漠然とランスロットが俺の為に帝国を作ったと聞かされて、そうなのかと理解していた。たがこうしてただの1メイド迄がこう話す事で、それがどれだけ凄い事なのか、改めて驚いていた。
そして全身を鏡に映すと、そこには正に女神が映し出されていた。これが本当に俺なのか? と疑いたく成る程だった。まあ小せいが・・・・
「なあ、このドレス・・・」
「あ、わかりましたか? お母様、お父様が選んだドレス、全てマーメイドを思わせるドレス何です」
「やっぱりそうだよな」
それは何処となく、マーメイドを思わせる様なドレスだった。ちょっと待てよ? こんなドレス見たことがないが・・・まさか
「・・・てか特注かよ!?」
「そうです、姫様のドレスは皇家直属のデザイナーによる、全て一品物で御座います」
マジだったのかよ・・・
そしてその日は王宮で晩餐会が行われた。
「す、凄いわね、アリス」
「あ、姉御ぉぉぉぉ!! 姉御が再び天使様でやんす!!」
「おお! なんて美しいんだ!! 姉御!!」
「さあ母上! 此方に」
晩餐会には、帝国側はトリスタン、カレス・ベディビィアが、王国側にはラフィール、ライオネット、
リーザベルト、エリザベート、ギルバート、コレン、セシリー、セリーヌが参加していた。
その他にアスラン達俺の部下も同席している。
当然だが国王は呼ばれて居ない。今は名目上国王だが、奴は売国奴であり、犯罪者だ。
「本当はイトウ男爵夫妻にもお越し頂きたかったのですが、お忙しい様で」
「構いませんよラフィール様。親父やお袋にはどうせ道中に会えるし、そこから帝国迄一緒何ですから」
「そうですね、イトウ男爵にはよろしくお伝えくさい、私とライオネット、リーザベルトは婚約式でお会いする事になります」
「そうだアリス、ランスロット殿下にもよろしくな」
「はい、解ってますよ」
晩餐会はその後盛り上がり、ラフィール様達もナイトオブラウンズ達と仲良くなれた様だ。
翌日俺は皇族専用のくそデカい馬車に乗り、そこにはメイド長とベディビィアが乗り込み、トリスタンとガレスは集団の一番前に馬で護衛の任に付いた。
道中は新設されたアリス街道を順調に進み、遂にコードスの町に付いた。そう、親父が貰った男爵領は、俺が生まれ育ったカイナ村やコードスがある町一帯だった。親父は新領主として、コードスに館を構えていた。
「父さん!」
「アリスか!?」
「貴方、アリスよ、間違い無いわ」
そして母さんが小さい女の子を俺の方に渡して来た。俺はその子を抱き上げた。
「アリアか! ちょっと見ない内に大きくなったな」
「うん! もうすぐお姉ちゃんに追いつく」
「ング! そ、そりゃあまだ無理たぜ! 何と言っても俺は10才だからな」
「アリス」
「何? 母さん」
「貴女いつからそんな乱暴な言葉を使う様になったの」
やべぇ、両親の前では猫被ってたの忘れてたぜ・・・
「ち、違うの母さん、久しぶりにアリアに会ったでしょう? その、姉の威厳と言うか、それを見せてたのよ」
そして奥の方から小声で聞こえて来る言葉を俺は聞き逃さなかった。
『母さん猫被ってたの忘れてたんだね』
『そうね、こう言う所で何時も母さんはミスをしていたわ』
くそ、言いたい放題言いやがって・・・
だけど家族は懐かしい、こうやって合うのは何ヶ月ぶりか。
前世でアリスは家族の温かみと言うものを知らなかった。惟一姉変わりをしてくれていた親戚で、ベディビィアそっくりの女性が惟一の家族と言っても良いだろう。
たがこの世界でアリスは家族の温かみを初めて知った。暮らしは農民で苦しかったが、そんな物はどうでも良いと思えるくらいアリスは両親から愛されていた。家族の温かみを知らないアリスでさへもそれは解った。だからアリスはこの両親だけには幸せになってもらいたかった。
その日アリスは久しぶりに家族水入らずで過ごした。両親と妹と川の字になって寝た。どんな高級ベッドよりも今のアリスにとっては寝心地の良いものだったのだ。
ここからは家族と伴に帝国へと向かう。それが何よりもアリスは嬉しかった。
「まさかアリスがタルタリー帝国の皇妃様になるなんてな、未だに信じられないよ」
「もう父さんさっきからそればっかり」
「お姉ちゃん皇女様になるの?」
「そうよ、お姉ちゃんはとても偉い人になるの」
「凄い!」
「大丈夫、アリアにもお姉ちゃんがちゃんとカッコよくて金持ちの男見つけてあげるからね」
「アリス、変な事アリアに教えないでよ」
「母さん、お金は大事だよ、世の中全て金!」
「そうだけど、母さんは貴女もアリアにも優しくて誠実な人に嫁いで貰いたいわ」
「父さんみたいな?」
「え? そ、そうね」
親父は確かに優しいな、あの人体実験が懐かしいぜ。俺がお袋にめっちゃ怒られてる時、それを止めてくれたのが実験台になった筈の親父だったからな。今となっては懐かしい。
「所でアリス」
「何? 父さん」
「帝都には何時頃着くんだ?」
「どうなんだろ? 私も初めて行くから解らない」
「帝都にはこのペースならまだ20日以上かかります」
「そんなに遠いの!?」
「はい、お母様。帝国領に入ってからが長いのです」
両親にベディビィアやトリスタン達が俺の事を母と呼ぶ事に納得して貰うのにはそれなりに時間がかかった。妹には取り敢えずそういうもんだで納得させたが、両親には本当の事を話した。お袋はそれで納得したのだが、親父はどうにも納得できずにいたからだ。まあそりゃ俺はまだ10才なのだから、そうなのだろう。
だがお袋の喜びようは半端ではなかった。
一万年越しの愛が結ばれるなんて!!
とはしゃいでいたのだ。まあ親父が実は融通の聞かない男だった事がこれで解った訳だ。
「ベディビィアさん、アリスの事をよろしくお願いしますね。この子薬がきれてしまうと本当に体が弱くて」
「勿論ですお祖母様、お母様の事は我らナイトオブラウンズが必ず守り通します。ご安心くさい」
「大丈夫だよリーサ、話しを聞いていただろう? ナイトオブラウンズの方々はあの帝国で最強と言われてる方達なんだ。必ずアリスの事を守ってくれるさ」
「ええ、そうね、あなた」
「なあベディビィア、帝国領に入ってからが長いって言ってたよな・・・わよね?」
「はい、そのとおりです」
「それって街道の都合なの?」
「いいえ、街道は峠等の山間部以外はほぼ直線になる様に作られています」
「成る程、やっぱり帝国ってデカ・・・大きいのね」
ベディビィアは徐に地図を広げた。
「これが帝国と周辺国の地図です」
「本当に広大ね!?」
「現在地は大体この辺りになります」
「カイナ村って実は帝国との国境沿にあったのか」
「はい、お母様が育ったカイナ村がここです。ここから何時も見ていたと思いますが、帝国領にあるこのローズ山脈を超え」
「あ、確かにデケ・・・大きな山脈が村から見えていた、彼処が既に帝国領だったのか」
「はい、新設されたアリス街道はこの山間部をこの様に北上していきます。これだけで3日はかかります。そしてこの山間部を越えたこの辺りが新たにお祖父様が取得された飛び地の領地となります」
「父さん、もう領地の名前は考えてあるの?」
「それは考えてあるぞ、アリス領だ」
「え!? 私の名前?」
「そうだよ、だってアリスが齎してくれた領地何だから。皇太子殿下も喜んでくれたぞ」
あの野郎・・・
「それに帝国の帝都はアリスの前世の名前何だろう? 今更じゃないか」
「は!? ・・・」
そう言えば俺は帝都の名前知らねえな。まさか・・・




