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29話 フォルテシアの聖女

 現在ランスロット達が借りている部屋には、ライオネット王子、ラフィール第一王女、リーザベルト第二王女、そしてエリザベート第三王女がいた。


 エリザベートはギルマス、つまりエザリアから聞いた、聖女アストライアの話をランスロット達に聞かせていた。


「な! ・・・つまり、聖女アストライア様はそもそも魔王を倒すつもりは無かったと言うのですか?」


「はいお姉様、エザリア様が言うには、魔王城に忍び込んだのは、魔王の持つ宝をくすめようとしていたというのが本音だったようです。

 所が魔王軍の幹部達に発見され、口封じの為に殺した挙げ句、その時点で複数の魔王軍に見つかってしまい、持てるだけの宝を盗んで逃げたようですが、普段から堕落し、煙草漬けだった生活を送っていたアストライア様は息切れを起こし、殺した方が速えと言いだし逆ギレして魔王を討伐したというのが真相だったようです」


「・・・母上だ」


「ええ、間違いなくお母様です」


「それだけで納得するのかお前ら!?」


 何れだけ過去の俺って屑なんだよ・・・・


「父上に聞いた話とは全く違いますね」


「う!・・・」


「な、なあランスロット様」


「な、なんだい?」


「何でその時俺の、と言うか聖女の元に参戦しに行かなかったんだ?」


「え!? ・・・・」


「いや、え!? じゃねえし」


「いえ、アリス、ランスロット陛下は参戦されてましたよ、アーサーと言う名を使って」


「え!?・・・・・」


「まあエザリアなら知ってるよね」


「何で名前まで変えて」


「帝国が安定していなかった、君を迎え入れる訳にはいかなかった、って言うのは言い訳かな」


「父さん、大丈夫だよ。母さんは解ってくれる」


「アリス、真実の聖女伝説を貴女は知らなければならないわ」


「エリザベート」


「何故ランスロット様が名を変えて貴女の、アストライアの元へ向かったのか、過去の貴女は何故聖女となったのか。そして貴女はこれから何をしなければいけないのか」


「それはやめて貰おう。僕はもうフィーネを戦いとは無関係な所にいてもらう。その為の帝国であり、ナイトオブラウンズだ」


「ちょっと待ったランスロット様、それは聞き捨てならねえ。俺は女だよ、それはもう諦めた。それに思い出してないけどこいつらも俺のガキだ、それも覚悟した。帝国の皇妃だってなるって決めたよ。

 でもガキに戦わせて俺がヌクヌクってのは気に入らねえ。話し聞かせてくださいエリザベート」


「フィーネ、僕やこの子たちがどれだけ君を失って悲しんだか、そしてどれだけ君を待ち続けたか、それは解って貰えるね?」  


「勿論、だから守ってくれるんだろ?」


「う、はあ・・・解った、話を続けてくれ、エリザベート王女」


 エリザベートはエザリアと話した真の聖女伝説を皆に聞かせた。それは誰もが知る聖女伝説とは懸け離れた物だった。


 

 聖女アストライアとは、人であり人ではない存在だ。悪魔王ルシフェル、その真実の名は、堕天使ルシファー。またの名を魔王サタンとも言う。

 そしてアストライアはルシフェルが真の力を発した時、その力に呼応して、正に女神の姿を覚醒させたと言う。その姿は美しき真っ白な大きな二対の羽を背中から生やし、黄金の髪色になったと言う。


 

 神は自身の姿を元に、人を作った。そして神は自らの眷属である天使たちに人を見せた。


(見ろお前達、これこそが私の作った最高傑作である。さあ皆跪け)


 それは天使達にとって屈辱だっただろう。自分達を差し置き、後から造られたこの人こそが神の最高傑作だと言う。そしてあろう事か跪けと。


 だが天使達はその言葉に従った。ただ一人の天使を除き。従わなかった者はルシファーだった。そればかりかルシファーは、蛇の姿を取り、もう一人の人間であるエバに、神より禁じられていた、知恵の実を食べさせる事に成功した。





 これは旧約聖書の1部に過ぎない。実際こう言う事が本当にあったのか、それは神以外誰にも解らない。だがその悪魔がルシフェルだと言うならば、何となくだがその話しにも納得行く部分がある。



 だがエザリアの話しを聞き、真の聖女が俺である事は間違い無いだろう事は解った。そして俺に関わる神が2人居ることも。先ず俺が死んだ時に俺に五月蝿え事を言った神、そして転生神、恐らくあのファムと言うセイレーン。


「ちょっと待ってくれ、つまり、ルシフェルかそれに類する者が復活すると」


「はい、エザリア様は明確にその兆候を掴んでおられます」


「何を根拠に?」


「それは私から説明させて頂きますわ」


「リーザベルト」


「ここ王都から東に行くと、聖女アストライア様の墓所が有るのは皆ご存知ですわよね?」


「勿論」


「そこは代々フォルテシア王家の王女が守り人を務める事になっておりますの。本来はラフィールお姉様がその役をするのですけど、お姉様はボストニア王国との繋がりを有しております。ですのでその役割は私がしておりました」


「私も手伝っていたわ」


「手伝いが必要な程大変だったんですか?」


 それを俺が言った瞬間、エリザベートは キッ! と俺を睨みつけ、それを言った。


「お供え物が多すぎたのよ、生前アストライア様が自分の墓所には必ずこれを絶やさぬようって、これを見なさい」


 それは聖女の墓所に供えるべき供物の目録であった。そこには煙草1カートン以上、酒はビール、日本酒等をまんべんなく、大量の金貨、麻雀、等々大量に記されていた。

 し、しかし俺と言う女は・・・死んでまで欲しかったのか・・・いや、必要だな。


「今思えば何故こんな無駄に大量な供え物が必要だったのか、貴女と出会って納得だわ!」


「な、何と!!」


「うん、母さんならこれでも少ないくらいだ」


「そうね、少ないわ」


 コイツラ・・・・・


「ま、まあそれは一旦置いときますわ。それで、ここ数年その供物が数日で消える騒ぎが何度もあったのです」


「何!? 俺の物をパクった奴がいやがるのか!! 許せねえ!」


「貴女が持って行ったのですわよ」


「はあ? ・・・・・」


「エザリア様が言うには、貴女が現れる10年程前から、貴女の魔力を再び感じ初めたと言うのです。最初エザリア様はそれを否定していたのですけど、ランスロット様、いえ、かつてのアーサー様との話で、アストライア様は異世界からの転生者であり、それは何度も転生している者だと確信を持っていらしたの。

 そして聖女復活にはそれなりの供物が必要だった。それがお供え物の目録なのでしょう。何故この時期に貴女が蘇る事になったのか、それは恐らく悪魔王復活に備えての事では」


 俺の復活にはやはりヤニと酒、それに金がいるのか・・・・・かなりディープだぜ。


「でもさ、確かに母さんが転生するのに煙草や酒がいるのはわかるけど」


 解るのかよ!? トリスタン


「それと悪魔王復活に何の関係があるの?」


「それは私、いえ、ランスロット陛下なら解るのでは有りませんか?」


「父上」


「・・・・・そこまであの人に聞いて居たのか。はあ、仕方無い・・・・あれはアストライアが転生してくる時だった。僕は現在の転生神ファム様から、君の復活を聞いていた。だがそれは僕の望む形での君の復活では無かったんだ」


「え?」


「さっきも言ったね、君は記憶の保全の為に魂を2つに分け、その一つは娘として、アリスフィーネとなったんだ。だがアストライアはフィーネ、つまりアリスフィーネの魂を持たない、純粋なフィーネだけの魂だった」


「つまり、善と悪に別れ、悪の方だけが蘇ってしまったと」


「何でそうなるんだよ!? ガウェインてめぇ」


「ご、ごめん、でも、だ、だって母さん、アリスフィーネちゃんは凄く優しくて、何も悪い事はしない子だったよ?」


「おい! それじゃ俺が全然優しくねえし、悪党みてえじゃねえか!!」


「そ、そこにはすまないが同意を・・・」


「ランスロット様!!」


「う、すまないアリス」


「お母さんは悪事ばかりしてたけど、優しかったわ!」


「そ、そうなんだよ、それはアリスフィーネもフィーネの一部だったからね。だけどアストライアはその、アリスフィーネの魂が無かったんだ」


「だから冷酷な悪党だったのですわね」


 最早弁明しようが無い、アストライアってどれだけ極道聖女何だよ、てか俺か・・・記憶は無いが。


「ま、まあ話しを戻そう、そして転生神となったファム様は、僕にこういった。僕の望むフィーネでは無いが、聖女となり転生したフィーネを手伝って貰いたいと。そしてそこでアリスフィーネがフィーネの魂の一部だった事を知らされた。たが現れる聖女は僕の待っているフィーネじゃなくとも、フィーネの魂の一部である事に変わりは無い。なら僕はフィーネを全力で手伝いたい」


「だから父上は私達に母上復活を話さなかったのですか」


「ああ、お前達の知っているあの心優しいフィーネではないことがわかったからね」


「でも何故お母様は聖女として復活を?」


「悪魔王ルシフェルが蘇る、フィーネはその討伐を神々より命じられたんだ」


「やはり、エザリア様の読みは正しかったのですね」


「お祖母様もそれを疑っておりました」


「つまり今回も?」


「いや、今回ファム様はルシフェルの事については何も仰らなかった。だがフィーネが聖女として転生して来たとなると、僕も実はそれを疑っている。だがアリス、君はもう戦わなくていい。その為の僕達だ」


 確かに悪魔王討伐なんて面倒臭え。だが・・・

 俺はガキ達を見た。ああ解った・・・これが俺への本当の罰か、糞女神達は解ってたんだな、俺がコイツラを見捨てられない事を。


「嫌だね」


「アリス」


「母さん」


「いいか、俺の元いた世界ではな、親は子供を守るもんだ。俺がコイツらを俺のガキと決めた以上、俺はコイツらを見捨てねえ。いいかランスロット様、俺はコイツらの母親だ。俺が直接腹を痛めて産んたガキじゃねえが、母親である事は変わらねえ。なら俺はコイツらが笑顔で笑っていられる世界を守る。それが親の役目ってもんだ」


「母上」


「母さん」


「お母様!」


「はあ・・・・・仕方無い、なら僕にもその役目はある訳だね」


 俺は悪魔王ルシフェルを再び討伐する事にした。





 そして天からその光景を見つめていたファム


『貴女なら必ずその道を選択すると信じておりましたよ、フィーネ。今度は貴女自身の選択です。誰に強制された訳でもなく、貴女自身の思いでルシフェルを倒す事を選んだのです』


 フィーネは敢えてランスロットにルシフェル復活を話さなかった。それはアリスフィーネに自らサタン討伐を決心させる為に。

 湍津姫神(たぎつひめのかみ)、それは荒ぶる男神素戔嗚命の娘であり、そのなかでも手の付けられない程乱暴な女神である。だが同時に女神であるがゆえ、その優しさと慈愛、抱擁力も持ち合わせていた。



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