28話 前世の自分
その後俺はようやく動けるようになり、糞デケエガキ共と、新たに出来た旦那に飯を作る事にした。先ずは腹ごしらえ、皆で食卓を囲む事により、腹を割って話しをする。これこそが男どうし・・・・
気分は男だ・・・・
そこでベディビアが手伝うと言うので、素直に俺は手伝わせる事にした。ランスロットとは後ほど帝国での俺の振るまいなんかについて話さないといけないが、とりあえずは腹が減った。たがラフィールが変な気を回してくる。
「食事なら用意させますから、アリスさんはもう少し休んでいてください」
「いや、彼奴らの飯は俺が作ります。と言うか、作ってやりたいんですよ、ラフィール様。だって一万年以上俺を待ってた奴等何ですよ? ラフィール様ならどうしますか?」
「‥‥‥そうですね、解りました。必要な物は王宮の全ての物を使う許可を出します。貴女の大きな子供達に、美味しいお料理を作ってあげてください」
「ありがとうございます、ラフィール様」
俺が作れる物なんてたかがしれている。だが前世、何時も俺に飯を作ってくれた姉さんがいた。血は繋がっていない家政婦みたいなもんだったが、俺には姉のように思えていた。たまに飯を俺が作ると凄く喜んでくれた。
さて問題はあの姉さんの母親が、実は俺っぽいのが問題だ。今にして思えば、あれがベディビアなら、喜んで当然なのだが・・・
ベディビアに聞こう。でもまあ、大人数の時はカレーと相場は決まっている。この世界にもハーブは沢山ある。それとシーザーサラダ辺りを作るか。
ラウンズの何人かが、俺が飯を作ると聞いて、寝てるように止めに来たが、俺は追い返した。困ったような顔をしていたが、ここは好きにやらせて貰う。
「アリスが?」
「はい、止めてくれないんですよ」
「そうか‥‥‥ベディビア、アリスの傍に居てやってくれ。何か有ったら直ぐに僕を呼べ」
「解りました、お父さん」
と言う流れだったようだ。
「お母さんの料理をよく私とモルドレッドは手伝いました。凄く懐かしいです」
「なあ、ベディビア」
「何ですか?」
「ベディビアってさ、ここじゃない世界に行った事はあるか?」
「いいえ? お母さんの元いた世界の事ですよね? 私は行った事はありません」
「マーメイドの俺の元いた世界? つまりマーメイドだった俺は、その時点で既に異世界人だったわけか。その世界の事、俺は何て話していた?」
「日本と言う国で、そこでお母さんはビッチと言う種族だったと言っていました」
「‥‥‥‥ビッチ」
種族じゃねえし・・・
「違うわベディビア、お母様はスケバンだったと言ってましたよ?」
なんかえれえ妖艶な美女が登場したが誰?
「ああ、お母さん、彼女はモルドレッドです。古いヴァンパイアなので、日の光を浴びてしまうと幼女になってしまうんです。それよりモルドレッド、スケバンはビッチになる前の、更に前世の話しですよ」
「そうなのですか、つまりビッチと言う職業もスケバンと言う職業も両方経験した訳ですね?」
「それもちがいますモルドレッド。スケバンやビッチは確か種族です。職業はカツアゲとかオヤジ狩り、それに美人局や痴漢冤罪と言うのでお金を稼がれていたと言ってましたよ?」
「そうそう、お母様は色々な職業に‥‥‥お母様?」
「お母さん、具合が悪くなってしまったのですか?」
俺はorzモードに入っていた。軽く死にたくなって来たぜ。スケバンやビッチは職業じゃねえし種族でもねえ‥‥‥つまり転生しまくっても俺はろくな女じゃ無かったって事じゃねえか。あの糞女神の言う通りって事か・・・
いや待て、そうだ。こんな所でへこんでる場合じゃねえ、俺はまだ10才だ。
既に色々やらかしている気はするが、それは忘れよう。盾の勇者もオープニングで言ってるじゃないか、脳裏に残った失敗なんて、全部取り返えせばいい!
ターンオーバーだ!!
「ふん!!」
俺は飛び起きた。
「お母様?」
「へ! 過去をグチグチ悩んでも意味がねえ!! 俺は未来を生きる事に決めたぜ!!」
「そうですお母さん!! 何だか解りませんがこれから楽しく生きましょう!!」
「そのいきですお母様! 何時もお母様は、サツにパクられた時はやらかした事を秒で忘れろと言っておりましたよ!!」
んぐ! ・・・・せ、折角気を取り直したのにこいつは‥‥‥
再び気を持ち治した俺は、カレー作りを再開させた。
「ベディビアはマヨネーズを作ってくれるか?」
「はい、フィーネのお母様の時に造り方を教わってます」
「おお! 以前の俺も料理は出来たのか! 救われるぜ!! じゃあシーザードレッシングを作ってくれ」
「シーザードレッシングと言うのは知りません」
「簡単だよ、マヨネーズ、ミルク、粉チーズ、レモン汁、塩を混ぜて、氷魔法で冷やしながら気合いで混ぜればいい」
「はい! 作ってみます」
「モルドレッドはナンを作るから手伝ってくれ」
「はい! お母様」
本当はライスにしたいが米は見たこと無い。今度ランスロットに駄々をこねて探させるか。
ナンも作るのは然程難しくは無い。強力粉と薄力粉に塩、酵母、蜂蜜を混ぜてこねて寝かして拡げてフライパンで焼けば出来てしまう、超簡単だ。
カレーも然程では無い。クミン、コリアンダー、ターメリック、ガラムマサラのスパイスが有れば、後はトマトとこれらを煮込むだけでルーは作れてしまう。
後はニンニク、ショウガを刻むかすりおろすかして、玉葱をスライスし、スパイスと混ぜて煮込む。するとあら不思議、とろみがつく。それに肉を焼いて混ぜれば良いだけ。必用ならジャガイモや人参なんかを入れてもいい。
こうやって3人女どうしで料理を作るのも楽しいもんだ。まあ子供の俺がお母さんと言われている違和感と、男であった事をすっかり除けばだが‥‥‥
そして俺が思わず口走ろうとした台詞をモルドレッドが先に代弁してくれた。
「おら野郎ども! 飯だぞ! 味わって感動しながら食いやがれ!! ですよね? お母様」
「‥‥‥あ、ああ、そうだな」
何という事だ、一万年以上前から俺はいっさい進化してねえ訳か‥‥‥
「懐かしい言葉だな、母上は何時もそういって食事を出してくれた」
「そうだね、じゃああの挨拶もしないとね。でも良い匂いだな!」
「挨拶?」
「「「いただきます!!」」」
成る程、これか。
「ナンも焼けば良いだけだし、カレーもたっぷり有るから好きなだけ食えよ!」
「うん!! 母さん!」
「これは僕も初めて食べる料理だな、この前の前世で覚えたのかい?」
「まあそんな所だ、ただ、少し引っかかるんだよな」
「なにがだい?」
「前世で俺は男になってたんだ。それで義理の姉さんがいたんだよ」
「まあ姉くらい居てもおかしく無いでしょう?」
「所がその姉さんはベディビアだったんだ」
「へ?」
皆がベディビアの方をガン見した。
「わ! 私は知りません!! 皆と一緒にずっと居たじゃ無いですか?」
「そっくりな者がアリスの前世にいた訳か」
「いや、あれは絶対ベディビアだよ。だって俺が死んだ時に、俺の位牌に向かってこう姉さんが言ったんだ。
今度こそ幸せになってください、フィーネ様って。
だって俺はフィーネだった事を忘れてるんだぜ? 何故姉さんがその名前を知っていて、しかも弟の俺にそう言うんだ?」
「確かに有り得ない、それは間違いなくベディビアだ。だがベディビアに時や世界を渡る能力は無い筈。死んで転生した以外に無い」
「ちょっと待ってくれ、それでは時系列がおかしい」
「どう言う事だ? ガレス」
「母上が亡くなったのは1万年以上前だ、そしてアリスフィーネちゃんが亡くなったのも時期的には変わらない。だが姉と言うことは、少なくてもベディビアは母上よりも先に死んでいなければ姉とはならない」
「確かにそうだ、時間を跳躍出来ても、おなじ世界で時間を遡ると言うのは明らかに変だ」
「なあ? 皆の名前は多分俺が付けたんだよな?」
「そうだよアリス。君が全部で12人居て、僕の名がランスロットだからといって、それなら名前のないこの子達に、君のいた世界の騎士の名を付けようといって着けたのが、ナイトオブラウンズであり、この子達の名でもある」
「多分何だけと、俺は向こうの世界で何度も生まれ変わって居るようだけど、ほぼ同じ時代からこっちに転生しているみたいなんだよな」
「こっちでは一万年以上経っているのに?」
「うん、さっきベディビアやモルドレッドが言ってたビッチとかスケバンて言うのは、俺の前世では、それ程時間の差がない時代での、まあ職業みたいなもんなんだよ。時間は流れて居ても60年は経って居ない」
「たったの60年ですか!?」
「ああ、と言っても・・・・待てよ、確か妖怪何かは遺伝子操作された・・・」
「どうしたんだい?」
「なあ、俺ってマーメイドだったんだよな? そう言う種族と言うのはこの世界にいつ頃から居たの?」
「伝説では数百万年以上前だと言われているね、何でも世界を破滅させる程のラグナロク後に生き残った人間達が、住む場所に適合する様に進化したとか」
「そのラグナロクに兵士として活躍してたのが、今の魔族や獣人だったと言い伝えが残っています」
あ、読めて来た、そう言う事か‥‥‥なら、全て辻褄が合う。
「なぁ、皆聞いてくれ、今までの話しで何となく読めてきた。何故ベディビアが姉さんだったのか、それに俺の様々な体の変化とかも、そうすると全てに辻褄が合う。まあだけど確証は無い、あくまでも俺の推論、でもたぶんこれで有っている。そして多分だけど、皆これからもっときつい戦いが待ってると思う。だけど、俺は誰も失いたくない」
「母さんと一緒なら僕はどんな戦いにも負けない」
「母上を残して先に死ぬような者はここにはおりません」
「そうだよアリス、それで何が解ったんだい? 聞かせてくれないか」
「うん、恐らく俺は過去から来ているんだと思う」
「へ? でも母さんはここよりもっと発展した世界から来ていると言ってました」
「発展してるな、世界を丸ごと焼き尽くしてしまう兵器とかも存在してるくらいには。それにキメラと言う人と獣の遺伝子操作で新たな生物も作り出してしまうような技術も有った」
「ラグナロク!? あ・・・・もしかして!」
「何の根拠も無い只の思いつき何だけど、そう考えると全ての辻褄が有っちゃうんだよな。実は夢を見てから薄々はそうじゃないかとは思ってたんだけどな。
多分タイムリープって、未来には行けないけど、過去には行ける、そう前から感じてたんだ」
「待ってくれアリス、でも君は過去から来た、そう今言ったよね?」
「そう! そこなんだ。そこが俺自身もこの考えが間違いだと思い込んでた所なんだ。だけどさ、もしここすらも一度過ぎ去った過去の世界だとしたら?」
「意味が解らないよ、過去から過去に、そこに何か意味が有るの? 母さん」
「例えばさ、この先の未来が、俺達にとって耐え難い不幸な現実が起こるとして、それをどうしても変えたい。そしてそのときに何らかの過去に戻る方法を見つけたとしたら?」
「待てよ・・・そうか、アリスの姉となったベディビアは」
「まさか、未来の私!?」
「うん、それなら俺のこれも理解出来るんだよ」
魔力を込めてアリスフィーネは白い大きな天使の羽根を出した。そして髪の毛が金髪へと変化した。
「あ、アリスフィーネ!?」
「でもアリスフィーネちゃんには翼等は!?」
「なあランスロット様、本当に人とマーメイドの間には子供って出来るのか? 多分遺伝的には無理だと思うんだよ」
「実は出来ない、それは後で知った。でも間違いなくアリスフィーネは僕と君の子だ、それこそ何の根拠も無いんだけど、それは不思議と解ったんだ」
「そう、フィーネ自体が未来人だったんだよ、多分な、だから子供が出来た。この辺りはこじつけ何だけど、フィーネは自分の持つ力をアリスフィーネに継承したんじゃないかな? この国にある聖女伝説何かもそれに繋がって考えて行く必要も有ると思うし。
それに夢で何故か自分の体が妙におかしかったんだよ。あれは魔力暴走と変わらない症状だった。マーメイドなのに人間と同じ魔力暴走が起きるなんて考え難いんだよな。だからあの時、もう一度やり直そうと考えたんだと思う。良い未来に行くタイムラインじゃなかったから」
「では敢えて母上は死を選んだと?」
「何となくそう思うんだよ。自分が死ぬ事で、未来を変えようとしたんじゃないかな? そしてアリスフィーネとは、実はこの俺自身なんだ。この羽根と体がそれを証明してくれるし、実は俺の中にもう一人の人格が居るんだよ。それは多分、娘のアリスフィーネが。そっちの俺は俺のこと大嫌いみたいだけど、未来から来たならこの姿も子供を産めたのにも説明がつく」
「そうね、私もそう思うわ」
「エリザベート様!?」
「第三王女か、流石に無礼が過ぎないか? この部屋は我等帝国の」
「ランスロット殿下、聖女伝説、聞きたく有りませんか? 今のアリスのその姿、私が知る伝説の聖女そのままなのですが?」
「聖女伝説なら僕も知って居る。だがあれは後から創作された出鱈目だ」
「確かにそうです。ですが私は貴方の知らないもう一つの聖女伝説をエザリア様から聞きました。真実の聖女伝説を」
「・・・・成る程、聞かせて貰おうか、フォルテシアの聖女伝説」
ああ、まあやっぱりアストライアも俺だったからな・・・
どうやら前回の聖女の悪魔王討伐に帝国は絡んで居ないようだ。




