22話 国王との対決
夏風邪をひきました、エアコン付けっぱなで寝たのが多分原因です。
フォルテシア王国には派閥が存在している。
国王と第一王子の王家派閥、そして第二王子ライオネットを押す地方貴族派閥。そこに聖女こそ本来のフォルテシア王だとする女神教と第一王女を押す聖女派閥が間に割り込んで来ていた。
そんな中、国王は王家にその力を集結させるべく、何ヶ月も前に第一王子にとある密命を出して居たのだ。それは帝国第一皇子に第一王女ラーフィールを嫁がせようとする物。
だが帝国と対を成す大国、ボストニア王国がラフィールの後ろ盾になって居る。ラフィールの母がボストニアの王家から嫁いで来たからだ。なので強引に事を進める訳にもいかず、第一皇子ダニエルはどう事を進めるべきか焦っていた。
ラフィールがボストニアへ行ったきり帰って来ない事もダニエルを焦らせていた要因だ。
帝国第一皇子に留学してもらい、その後上手くラフィールを近づけると言う作戦。
だがなんとその目論見が失敗したとの知らせが入る。国王と第一王子ダニエルは急遽主立った派閥の者を集めた。
それは国王達の予想を超えるとんでもない内容だった。
その頃部屋でアリスはカリキュオンで遊んでいた。と言うより、使い方を覚えていた。
このカリキュオン、マジで凄い。俺が望めば、何処にでも現れる。例えば庭の隅にカリキュオンを置いておく。そして俺が部屋でカリキュオンをこの手に、と願えば、文字通り俺の手にワープしてくる。
更にカリキュオンを持って祝福をしたら、寮の庭中の花や雑草に至るまで、全てが有り得ない位育った。雑草がいきなり葦のように伸びて、当然めちゃくちゃ怒られた。
雑草を刈り始めた学園の使用人達に、カリキュオンで祝福を与えたら、三倍速のような速度で動き出し、あっと言う間に雑草の刈り取りが終わったが、使用人達は祝福が切れた途端にひっくり返り、空を見上げて変な笑い声を出していた。
が、それもめちゃくちゃ怒られた。別に使用人達が赤いモビルスーツに乗った訳では無い。カリキュオンの力で強引に動かされたのだ。体が持つわけない。
この様な様々な人体実け、オホン!
結果から、カリキュオンには俺の魔力を猛烈に増大させる能力が有るらしい事が解った。
人体実験? 私日本語わかりませ~ん!!
そんな事を俺がやっているとき、夕方頃何と王宮へ呼び出された。理由は告げられず、兎に角登城しろとのことだった。
登城して門兵に名前を言うと、直ぐに国王との謁見の間まで案内された。勿論カリキュオンは部屋に置いて来てある。
そこにはライオネットやエリザベート、更には宰相、そして内務卿迄もが揃っていた。俺は一応不器用にもカーテシーで挨拶をしておいた。
「お久しぶりです、国王陛下、第一皇子殿下、宰相閣下。そしてお初にお目にかかります、内務卿閣下。アリスにございます」
「…アリスか、成る程、こうしてよく見ると、我が愚息や幾人もの愚か者どもが誑し込まれるのも道理だ」
「お父様! いくら何でもそれは言いすぎでは!?」
「ふん、まあこれを読め」
国王の側近が国王の持っていた手紙を俺の元まで持って来た。グリフォンにマーメイドが乗っている刻印、つまりこれは帝国皇族から出された物だ。
国王は怒りを露わにしている。俺はそこで本来ここに居るべきは、多分王女の誰かの筈だった事を理解した。要は帝国第一皇子、ランスロットが来ていたのは、この国の王女の誰かを娶る算段が出来ていて、だからこそランスロットは学園にいたんだ。
これはあくまでも俺の予想だが、ランスロットは俺の情報は古い、既に政変は終わってると匂わした。如何に王国の諜報員が鈍臭くても、それだけ派手に政変が起こって居たのなら、その情報を掴めない事は有り得ない。この国で意図的に情報が隠蔽されて居たと考えるのが妥当だ。
そして本来組んでいた筈の帝国から思いきり梯子を外されたので国王は怒っているのだ。
一通り内容を読むと、これは完全に恫喝以外の何物でも無かった。あらゆる所に俺と国王への脅しが散りばめられて居る。
まず俺との結婚が行われなかった場合は、このフォルテシア王国を帝国の敵対国と認め、宣戦布告する。
これは勿論俺を脅して居るのだが、同時に国王の事も脅している。
まず俺に対しては、有り得ないが自殺等をしたら、両親や妹を殺すと言って居る。何故かと言うと、俺との結婚を断れば、では無く、結婚自体が行われなかったら、という部分にそれが記されている。
断わればではなく、行われなかったら、と言う所が味噌だ。俺が何らかの形で結婚が出来ない様な状態になっても、宣戦布告は行われる事になる。つまり俺の家族も巻き込まれる。
そして国王へは、俺を暗殺したりした場合は国を滅ぼすと言ってもいる。つまり俺がランスロットの所に嫁に行く以外フォルテシアが助かる道は無い訳だ。
そしてちゃっかりと俺との約束も混ざっていた。何と俺との結婚は帝国にて行われ、花嫁は俺の田舎であるカイナ村のある領から、新たにアリス街道を整備し、そこから帝国へ嫁に来るようにと書いてある。
また街道沿いの帝国領の一部を、俺の親父の領として、結納代わりにフォルテシア王国の新たな領主貴族に譲渡すると書かれていて、地図に書かれたそこには、何と小さいが銀山まである部分を譲渡すると書かれている。勿論飛び地となるが、その利益は莫大な物となるだろう。
つまりこれは、俺の父さんをフォルテシア貴族にしろ、そして結納変わりに帝国の領地を一部親父に与えると言っているわけだ。
更に帝国とフォルテシアとの貿易では、通商条約を結び、互いにアリス街道を通り商人が貿易を行った場合は、通行税をかけない事とも書かれている。つまり商人が行き来する商路が、親父の領を通ることになる。この利益は更に莫大な物となる。
そして極めつけの俺と国王への脅しは、ランスロットは、性奴隷はおくが、俺以外の妻は生涯に渡り娶らないと言って来た。口約束では無く、公文書にそう書いて来たのだ。
これは目出度い奴には可愛い所が有るとか、それ程俺を愛して居るのか等と言い出すだろうが、とんでもない、俺と国王への強烈な脅しなのだ。
まず俺へは、偽装結婚など認めない、俺に必ず嫡男を産めと言って来てる。性奴隷の子は皇帝や国王の子とは認められない。これはどの国でもそうだ。つまり俺に嫡男を産まないと、帝国が荒れるぞと脅かして来ている。
そして国王へは、俺の親父を優遇しろと言っている。当然だ、未来の皇帝の祖父になる訳だから。更に裏でこっそりとボストニア等と繋がるような真似はするなと脅して居るのだ。何と言っても皇帝の妃、そして未来の皇帝の祖父なのだから。恐らく国王はここに一番激怒しているのだろう。
仮にこのまま第一王子が王位を継承しても、それは傀儡であり、帝国が後ろ盾になる俺の親父がこの国の事実上の権力を握る事になってしまう。
もしこれを脱却したいのなら、誰か王女を無理にでもランスロットに嫁がせ、子を産んで貰うしかない。だがその道も閉ざされている。俺以外に妻を娶らないと言っているのだから。
更にランスロットは、本当に帝国を完全掌握したようだ。現在の皇帝は完全に傀儡だろう。
俺は手紙をゆっくりと側近の持つトレイに戻した。もう俺がランスロットに嫁ぐしか本当に道は無いようだ。それで全てが上手く行き、少なくとも一時の間はこの国が安定するし、俺の家族は幸せになる。
あいつの予言通りに事が運ぶのはかなりムカつくが、力の差が歴然とし過ぎている。俺一人ならバックレても良いが、この世界に守りたい物が色々と出来てしまった。
「内容は理解したか」
「はい、概ねは・・・」
「今度は帝国皇子を誑し込んだか」
「お父様! いい加減にしてください!」
俺は手を挙げて、エリザベートを窘めた。
「誑し込んだと言うのは誰が誰をですか? 私は先日初めてランスロット殿下にお逢いしたばかりです。ですが何故ランスロット殿下は我が国の学園の制服を着ていたのでしょうか? それに私の友人が何日も前に、ランスロット殿下を学園で見ています。
おかしいですよね? 誰かが招き入れたとしか考えられませんが? 私に何かを言う前に、この謀叛とも考えられる事事態をハッキリとさせた方が宜しいのでは有りませんか? 他国の第一皇子を内密に招き入れる等、明確な国家に対する反逆ですよね? 第二王子であるライオネット様や、王女殿下方も知らなかったと言うのは異常ではありませんか?」
「そうですわ宰相! 貴方はそれを調べたのか!!」
「あ、いや、まだ調べは付いておりません」
「何を吞気な事を言っている!! もしランスロット殿下に我が国内で何か有れば、これは大変な外交問題となる! 帝国を敵に回して勝てるとでも思っているのか!!」
「まあ良い! それは後程よく吟味するとして、その裏切り者、もしかしたらそやつかもしれんのだぞ?」
「私が?」
「そうだ、先程お前はランスロット殿下に会ったのは初めてと言ったが、果たしてそれは本当なのか? それを何で証明する。それに手紙の内容、まさにお前とお前の実家に実に都合良く書かれておる。疑いの目を向けられても仕方ない程度にはな?」
「はあ‥‥‥‥脳ミソ腐ってます?」
「不敬だぞ!!」
「貴様!!」
ああもう駄目だ。最早我慢の限界。これ以上馬鹿を相手にするのは疲れる。
そして俺はキレた。
「うるせえよこの糞やろうどもが!! お前ら揃いも揃って誰に向かって口聞いてんのか解ってんのか? ああ? そこに書いてあんだろうが? ランスロットは俺にぞっこん何だよ! この意味解ってんだろうな? 俺がランスロットに泣きついて、フォルテシアの国王や宰相達にめっちゃ虐められましたってちくったら、そりゃもうあいつ激怒するだろうな? 俺がそう言う立場に居るって事忘れんじゃねえぞ!!
それに何で俺がそんな回りくでえ事する必要が有んだよ? その手紙にはとどのつまりが俺を寄越せって事しか書かれてねえだろうが? 俺が最初からランスロットと繋がってるんなら、ただ嫁に行けば良いだけだろうが? 俺があの時嫁入りを拒んだからランスロットはその手紙寄越したって事位、その軽い虫みてえな脳味噌でも想像付くだろうが!! たく使えねえ奴等だぜ! だからこの国は帝国に舐められっぱなし何だよ!!」
国王は口角から泡を吹く程怒っているが、アリスのこの言葉はド正論だった。落ち着いて考えれば本当に誰にでも予想は付く。
手紙にはアリスを寄越せ、寄越さねばどうなるか解っているな? と言う事しか書かれて居ない。つまりこの時点でアリスがランスロットと繋がっては居ないと言うのが明白だった。
そしてこの親書を寄越した理由は、一度会った時にアリスがランスロットへの嫁入りを拒んだから、と言う理由により、脅しをかけて来たことがやはり明白だった。
「ア、アリス、お前の言葉はその通りだ。その通りなんだがな? 流石に言い過ぎだ‥‥‥」
呆れたようにライオネットが言ってきた。
国王は茹でタコの用に真っ赤になり、口角に泡を蟹の用にブクブクと拭いている。宰相と内務卿は、怒りと言いかえせないもどかしさを含んだ何とも言えない表情で俺を睨みつけていた。
エリザベートやリーザベルトは、半ば呆れ顔で俺を見ている。
「父上、アリスはまだ子供です、帰しますが良いですか?」
「く! ‥‥‥うむ」
「アリスは帰れ、後は元老院評議会を開催する! その場で話し合えばいい!! 明朝8時より緊急で評議会を開催する!! 関係各所に大至急伝令!!」
「ライオネット殿下、この娘にも参考人として出廷して貰う事になりますが?」
「それは構わんがまだ10才の子供だ、時間は規定通りとして貰うぞ? 内務卿」
「良いでしょう」
内務卿、イセリア コルベット。唯一の女性重臣だ。非常に切れ者として、セシリーが話していたが・・・




