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チンピラ聖女 異世界で道を極める  作者: ザコ3改
第1章 集う仲間達
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19話 タルタリー帝国皇帝

 今から凡そ1600年前、一人の人族の乙女が様々な種族の勇者を集い、大悪魔ルシフェルを討伐した。聖女アストライアは伝説となり、人々は聖女を崇め奉った。

 人族、魔族、ドワーフ族、エルフ族、獣人族、それまで争っていた種族が纏まり、共通の敵である悪魔討伐の為、聖女アストライアは其れ等を団結させたのだ。

 

 だが、確かに聖女アストライアは種族を纏めた。大悪魔ルシフェルも討伐した。しかしその真実は・・・・



 約1600年前、そこには悪魔城から逃げ出している集団がいた。


「む、無理! もうだめだ! 死んじまう。ゲホッ! ボエッ! う、吐きそう」


「ちょっとアストライア、早く逃げないと捕まっちゃうわよ」


「エザリア! 話す暇があったら走れ」


「シュピーゲル!! 貴方の魔法でどうにかならないの?」


「無理だよ、あんなに沢山」


「はあ、はあ、ヤベえ、もう限界、オエッ!」


「アストライア、だから煙草は程々にしなって言ったじゃん」


「五月蝿えぞアーサー! 食後の一服は男の嗜み何だよ!」


「女じゃろうが・・・」


「やかましいゴルバ! 気持ちは男何だよ! てかお前だって毎日酒かっくらってんだろ」


「あんなもん水じゃわい」


「てかよ、そのお前らの煙草代や酒代で、何で俺達が悪魔城に忍び込んでお宝パクらねえとならねえんだよ」


「プラド、今更ガタガタぬかしてんじゃねえ、お前だって賛成したじゃねえか!」


「そりゃ確かにアストライアの言う、どうせルシフェルなんて碌な事に金使わねえから、俺達で有意義に使うって所には賛成したがよ」


「今はそんな事で言い合ってる時じゃ無いでしょう? 早く逃げるわよ」



 そう、聖女アストライア一行は追われていた。何故ならそれは、使い切ってしまった路銀の補填を補う為に、悪魔城に忍び込んでお宝をパクったろう! って事で、忍び込んだは良いが、見つかってしまい、全力ダッシュで逃げているからだ。


 だがそれは無謀な目論見であった。普段からヤニをひって肺がただれている聖女アストライア、酒ばかり飲んで運動をしないドワーフの勇者ゴルバ、この2人が屈強な悪魔兵から逃げ切れる訳が無いのだ。

 そしてこうなった・・・・


「はあ、はあ、め、めんどくせー!! 走って逃げるよか、悪魔王ぶん殴った方が早え」


「は!?? 何言ってんだよアストライア、無理に決まってるだろ」


「そ、そうよ、私達が悪魔王に勝てる訳無いでしょう!?」


「やってみなきゃわかんねえだろ? それによ、ぶっ殺しちまえば死人に口無しじゃねえか、お宝パクったった所で誰にもバレやしねえ」



 こうして無謀にも、聖女アストライアと勇者達は、何と悪魔王を倒してしまい、そしてお宝をゴッソリ頂いたのである。






「・・・・・・・エ、エザリア様」


「な、なぁに? ・・・・」


「それが、事実なのでしょうか・・・」


「え、ええ、だから言ったでしょう? アリスはアストライアの生まれ変わりで間違い無いんじゃないかって」


「路銀が無くなって、悪魔王の城に盗みに入り、煙草の吸いすぎで肺が弱っているから逃げるのが面倒くさくなり、思わず殺してしまったと・・・」


「そ、そう言う事ね、でもそれはアストライアだけのせいではなく、ゴルバだって真っ先にそれに賛成したのよ? あいつだって酒の飲み過ぎでメタボになってたんだから」


「ああ・・・・聖女伝説って何だったのかしら・・・・」


「し、仕方無いでしょう? 各国で今の平和を維持する為に、悪魔王ルシフェルを倒したアストライアを救世の乙女にしようって決められたのよ。その乙女が実は悪事ばかり働いていた極悪人だなんて、後世に残せる訳無いじゃない」


「それはそうですが、アストライア様ってまるでアリスではありませんか。あんなのがもし後世に救世の乙女として残されるなんて」


「だから言ってるでしょう、アストライアの生まれ変わりだって」


「確かに今迄の話しを総合すると、アリスはアストライア様の生まれ変わりだって言われるとそうとしか考えられんな」


「所でそのアーサーって人が」


「ええ、当時のタルタリー帝国の皇帝その人よ」


「タルタリー帝国の皇帝が盗みや詐欺、カツアゲに強力してたんですか?」


「あの人何故かアストライアが言う事に逆らわないのよ」


「何故? アストライア様って元々は奴隷身分だったんですよね?」


「解らないわ、何故かアーサーはアストライア絶対主義者だったのよ」


「強かったんですか?」


「ええ、恐ろしくね。魔法は流石にアストライアには及ばないけど、剣術や格闘術は最早人間のレベルを遥かに超えていたわ」


「そんな人が何故?」


「本当に解らないのよ、兎に角帝国はアストライアの物で、その為に存在する国がタルタリー帝国だった。アーサーとアストライアには、恐らく前世からの何かしら繋がりがあるみたいなのよね」


「アーサーと言う名前も」


「偽名よ、ただしこれはアストライアにすら本当の名を教えなかったわね。時が来たら必ず教えるって言ってたけど、それっきりね。兎に角不思議な男だったわ、アストライアがどれだけ悪事をしても、それを怒らず大体アーサーが謝りに行ってたわね。まあ私やシュピーゲルも巻き添えくって謝りに行ってたけど」


「何故アーサーさんは怒らなかったんですか? それに聖女伝説にその名前が」


「聖女伝説に名を入れない様にするのは本人の希望だったからよ。怒らない理由は私達にも解らないわ。兎に角どんな事でも彼はアストライアの全てを受け入れてたの」


「もしかして、愛していたんですか?」


「そうね、それも異常な程愛していたわ」


「そもそも皆さんがパーティを組むきっかけって何だったんですか? 聖女伝説では女神から啓示を受けてってありますけど、今迄の話しを聞く限り、そうは思えません」


「まあここまで話したのだから、仕方無いわね。元々私達もアストライアのカツアゲや詐欺の被害者だったのよ」


「「「はあ!?」」」


「あの娘人類皆平等だから、平等に多種族にも悪事を働いてたの」


「そこは平等じゃなくても・・・」


「人族の恥さらし・・・」





 聖女アストライアは、元々は農奴の娘だった。だがアストライアは、ガキ大将であった。生意気な奴を殴っては治癒する、そんな事を繰り返し、段々と仲間(てした)を増やして行く。治癒は証拠隠滅の為である。


 彼女の主な収入源は、貴族恐喝(おやじがり)と自分を餌にした、貴族囮誘惑(つつもたせ)である。

 アストライアは種族関係なく、平等に貴族恐喝や貴族囮誘惑を実施していた。彼女はどんな時にも人類皆平等なのである。


 それに引っ掛かったのが、シュピーゲルとゴルバだった。だが彼等は強かった。アストライアの部下達は尽く倒された。だがアストライアはもっと強かった。彼等をのしてしまったのだ。

 アストライアは不甲斐ない手下達を捨て、彼等を手下に新たな荒稼ぎを行った。武器屋(さぎ)である。見かけ倒しの武器や防具をゴルバが作り、それに1回のみの強力な付与魔法をシュピーゲルが施す。

 それに引っ掛かったのが、エザリアとプラドだった。エザリアとプラドは激怒したが、アストライア達はその金を既に使い切っており、仕方なく戦闘になってしまう。だが双方とも一歩も譲らず、結果は引き分けになる。

 こうしてその後打ち解けた彼等彼女達は、インチキ冒険者パーティとして、世に出たのだった。最初はアストライアが聖魔法を使う事で、イカサマ聖女パーティとして活動する事になった。

 そこに聖女の噂を聞きつけたアーサーと名乗る者が現れた。彼はとある聖女を探していた。そしてアストライアがその探していた聖女であると喜び、アストライア達パーティに加わった。

 エザリア達は、何度もアーサーに、彼女は絶対に違うとアーサーに言ったのだが、アーサーはそれを受け付けず、絶対にアストライアこそが自分の探していた聖女だと言う。


 その後インチキ聖女パーティは、何度も聖女詐欺を働き、人々を騙した。ある時は土地への祝福擬きをし、3日で祝福が切れる。またある時は除霊をし、更に大きな悪魔を取り憑かせたりもした。

 その度に金を貰って速攻で逃げたのだが、ときにはその後捕まってしまうこともあった。アーサーはその度にお詫びに出向き、慰謝料を払った。


 だがそんなインチキ聖女の旅にも終焉は訪れる。アーサーが持っていた金が、遂に底をついたのだ。だが堕落した聖女一行は、今迄の贅沢三昧の暮らしを元に戻すことなど出来ない。


「そうだ! 魔王城に忍び込んで、奴のお宝をパクっちまおう!」


「流石に盗みは不味いんじゃないか?」


「でも宿代すら底をつきかけてるわよね?」


「だからもう少し節約しようと」


「アーサー」


「な、何かな?」


「お前まさか俺に安宿で我慢しろと?」


「そ、そんな事は言ってないよ、ただもう少し」

「何?」


「な、何でもない!」


「どうせ大悪魔なんて金持ってたって碌な事に使わねえから、俺達で有意義に使ってあげよう!」


「「「おう!!」」」


「名案だぜ!」


「だ、大丈夫かな・・・・」


 この頃には惟一まともなシュピーゲルですら、アストライアの毒牙にかかり、極道への道を爆進していたのである。

 現在良心と言えるのは、アーサーただ一人であった。だが問題なのは、そのアーサーがアストライアに激甘だった事である。

 なぜだかアーサーは、アストライアの言う無理難題を全てこなしてしまっていたのだ。



 そして遂にアストライアの名案? 悪魔城へ盗みに入る事が決行されたのである。そこで話しは冒頭へと戻るのであった。


 確かに聖女一行の旅は堕落していた。金を湯水の様に使い、悪事ばかり働く旅であった。だが聖女一行の旅は、ある意味まともな旅でもあった。彼女の浪費癖は半端では無い。つまり金がかかる。一番手っ取り早い金稼ぎは、魔物を狩るか、盗賊へ盗賊を働く事であった。アストライア曰く


「盗賊は金を持ってるから、そいつ等を襲うのが一番金になる!」


 だそうだ。なので兎に角聖女一行は盗賊狩りを行った。また強い魔物を討伐する事も兎に角多かった。金になるからだ。なので自ずとレベルアップは早かったのだ。結果、聖女一行は大悪魔ルシフェルを倒す事が出来た。

 元々聖女アストライアは大悪魔ルシフェルを倒す予定等無かったのだ。だが煙草の吸いすぎが祟り、逃げてる最中全身からニコチンが噴き出し、肺がただれ、走る事が不可能となったがゆえに、ぶっ殺した方が速いと言う結果、討伐に至ったと言うのが真実であった。





煙草の吸いすぎには注意しましょう

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