18話 聖女の真実とは
現在王子王女達は、アリスに言われた聖女アストライアについて、エザリアからその真実を聞かされていた。
「でも解りませんわ」
「何が?」
「聖女伝説は人族の国だけではなく、魔族や獣人族、ドワーフやエルフにだって語り継がれる物語りですわ。そんな多くの種族が何故口裏を合わせて捻じ曲げられた伝説を語り継ぐのですか?」
「そうよね、貴方達は知らないのよね・・・そうね、例えば聖女伝説第三章は?」
「第三章、奇跡の集いですね。エザリア様達多種族の勇者が聖女アストライア様の呼びかけで、力を合わせて集う部分です」
「人族の乙女である聖女アストライア様の元に、勇者であるエルフ族のエザリア様、ドワーフ族のゴルバ様、魔族のシュピーゲル様、獣人族のプラド様達が集う話しです」
「貴方はそこに何か違和感を感じないのかしら?」
「え? 違和感を・・・ですか」
「そうよ、別に冒険者になれば、多種族どうしでパーティーを組むの何て当たり前の話でしょう? 何故こうまでそんな部分が大々的に詳しく語られているのかしら?」
「言われてみれば・・・奇跡の集い何て言い回しはおかしいですわね」
「そう、でもね、アストライアが悪魔ルシフェル討伐をした頃、魔族と人族、獣人族は酷い戦争をしていたのよ」
「え!? ・・・本当ですか」
「ええ、多種族を尊重する事など有り得なかった。エルフとドワーフは仲が悪く、そして私自身短命の多種族を全て見下して居たわ。
そんな多種族どうしがパーティーを組む事なんて、当時は本当に奇跡だったのよ。それを打ち解けさせたのが、アストライアだったの。
彼女は種族や身分で他人を差別しなかった。誰とでも同じように平等に接したの。平等に悪事も行っていたのだけど・・・
それに悪事ばかり働いて、種族どうしで揉めてる暇なんか無かったしね。いつも誰かが謝りに行っていたわ。だからこそ、このアルフヘイムの気の遠くなるような、種族どうしの争いを和解させたアストライアは、ある意味本当に聖女だったのよ。もう二度とあんな血で血を洗うような修羅の世界にしてはいけないの」
「だから真実を捻じ曲げてでも、世界に聖女伝説を語り継ぐ必要があったのですね」
「そうよ、さて本題に入るわね。何故アリスがあれ程の膨大な魔力を持ち、あんな馬鹿げたポーションを作れるのか。そして成長の早さだったかしらね? ああ、あとイーパン料理の事もね」
「はい、その当たりですわ」
「実はね、アストライアも同じだったのよ」
「アストライア様も?」
「ええ、アストライアもその魔力は魔族であるシュピーゲルよりも、更には私よりも遥かに上だったわ」
「魔族やエルフ族よりも上だったんですか!?」
「そう、でも其れ等の疑問は全て、たった一つの事実に集約されてしまうのよ」
「たった一つの事実? 何ですかそれは」
「彼女はね、アストライアは、この世界では無い、別の世界からの転生者だったの」
「嘘!? ・・・・」
「本当ですか!?」
「ええ、乱暴だったのも、悪事ばかり働いて居たことも、元のその世界では悪党だったからよ」
「悪党!?」
「アストライアが転生する前にいた世界の国は、日本と言う国。イーパンと凄く良く似た文化だったそうよ。でもその世界には魔法が無く、科学と言う物が発達していたらしいわ」
「科学ですか?」
「ええ、其れは物質の根本迄解き明かし、様々な物が何でどうできているか迄解き明かしていたそうよ。だから彼女は魔力と言う物が何なのか既に解き明かして居たの」
「深淵を見ていたって事ですか!?」
「そうよ、だから膨大なマナを持ち、強大な魔力を持つのは当然なの。更にアストライアは転生事に女神からギフトを貰っているの」
「ギフト、女神からですか!」
「そう、成長補正、彼女は普通のこの世界に住む者より三倍早くレベルが上がるのよ。これで解ったでしょう? アリスの異常さが」
「つまり、アリスも転生者」
「恐らく間違いないわ。もしかしてアストライアの生まれ変わりの可能性も有るわね。似すぎて居るのよ、アリスはアストライアに。顔付きも性格も、その殆どがね」
「もしかして、アリスも何かこれから起こる災厄に備えてこの世界に転生されたのかもしれませんわね」
「どうしてそう思うの?」
「だってアストライア様は大悪魔に備えて転生してきたのですわよね? 女神様によって」
「全然違うわよ?」
「え? だって女神様からギフトを頂いたのですよね?」
「ギフトは貰ってるけど、あれは女神に謝罪と賠償を3時間かけて、しつこく請求したから貰った物よ?」
「謝罪と賠償!? な、何ですかそれ」
「あの子何処かの世界の勇者召喚に巻き込まれて死んだらしいの。元の世界には、本来の人生を真っ当しなければ直ぐに転生出来ないらしくて、それでこの世界に転生する事になったらしいわ。でもいざ転生するときに、納得できなくていちゃもん付けたらしいの」
「それ別の世界の事ですよね? この世界の女神に言うの筋違いじゃないですか?」
「神は神だから同じと言う理論らしいわね」
「めちゃくちゃですわね」
「ごね勝ちと言うやつですね」
「さて質問に答えた所で、今後の事よ。アリスはまだ発展途上なの。本来の聖女の力はあんな物じゃないわ」
「でも聖魔法レベル8迄上がったとか」
「そこじゃ無いのよ。転生者って言うのは魔法レベルの他に、本来のレベルと言う物が存在するの」
「本来のレベル? 何ですかそれ」
「文字通りの意味よ。魔力に加え、力や賢さ、素早さ、物理的防御力。その諸々全てがあがって行くの。そもそも私達が何の為に冒険に出たと思う?」
「まさか」
「そう、アストライアのレベルアップの為よ。アリスには是が非でも今後の為に冒険に出て貰うわ」
「今後の為?」
「ええ、恐らくルシフェルかそれに類する者が復活するわ」
「な!? 本当ですか」
「間違い無いと思うわ。そしてそれを討伐する鍵を握っているのが帝国よ」
「帝国? 何故帝国がそこに関係しているのですか?」
「あの国はアストライアの為だけに作られた国だからよ」
「アストライア様だけの為? い、意味が解りません!」
「そうね、でもそれは事実なの。私だって全く理解不能なのよ。でも帝国皇帝は何も答えなかった。ただアストライアの為に理想郷を作り、必ず迎えに来るとそれだけ残して行ったわ。その通り、帝国はあの当時よりも遥かに強大になったわ」
「帝国がアストライア様の理想郷?」
「そうよ、あの国は正しくアストライアが望んだ国」
「帝国皇帝にお合いしたんですの?」
「ええ、この話しは帝国皇帝に誰にも話さないように言われてるのだけど、私達の旅に実は当時の皇帝は動向しているのよ」
「な!? ・・・・・」
「本当に笑ってしまうわ。今では各国から恐れられているあのタルタリー帝国皇帝が、何時もアストライアの悪事の後始末でいろんな人に平謝りしてたのよ。勿論身分は隠して偽名で旅に動向してたのだけど」
三人は全く理解が出来なかった。何故聖女アストライアがあの強大な軍事国家を理想としたのか。そして何故帝国皇帝はアストライアだけの為に帝国を作ったのか。




