13話 指名依頼
今日は予約投稿を忘れました
話は少し前、料理対決の予選が始まるちょっと前まで遡る。
課題の提出まで後4日、授業が終わった後、俺は直ぐにポーションを持って王都の冒険者ギルドへ出向いた。
「あら、アリスちゃん、珍しいわね、今日はどうしたの?」
「ポーションの今月分の納品持って来ました」
「何時ものように連絡くれれば取りに行くのに?」
「いや、今日は薬草採取の依頼でも受けようかと思って。何処かの裏切り者が、ポーション販売の利益を吸い上げるのに手を貸した事で小遣いが無いんですよね~」
「あ、あははは・・・ギルマスも王女様相手に結構頑張ったのよ? ただ、学園内でアリスちゃんがやらかした悪事を並べられて、流石に擁護出来なくなったって・・・」
「そ、そうっすか・・・」
「でもアリスちゃん、ギルドで依頼受けたら結局同じ事になるわよ?」
「そこで相談です、誰か新人冒険者と組ませて貰い、分け前を貰う手配を! それくらいやってくれますよね~? じゃないとギルドに降ろすポーションの本数減らさなきゃならなくなりますよ~?」
「そ、それは困るわね、アリスちゃんのポーション効き目が段違いだって直ぐに売り切れちゃうのよ。返って本数増やして貰いたいくらいよ・・・あ! そうだわ、ならちょっとお願いがあるの。アリスちゃん明日の朝帰りでも良いかしら?」
「いや、それは流石に、寮には20時迄には戻らないと」
「それは大丈夫、アリスちゃんに指名依頼を出すわ」
「それじゃ駄目じゃ無いですか!」
「私の権限でそこは上手いことやるから大丈夫」
「指名依頼って、私Fランクですよ?」
「それでもアリスちゃんの力を貸して欲しいのよ。ヒーラーが足りないの」
「結構不味い依頼何ですか?」
「アンデットの異常発生よ」
「んな馬鹿な!? 教会は何やってんですか?」
「神官戦士団が総出で行って、先日帰ってきたのは10人だけよ」
「それヤバく無いですか?」
「教会からは候補でも良いから聖女を派遣しろと再三にわたって王宮に通達が来てるのよ。だけど学生を派遣するわけにも行かず。でもアリスちゃんは三つも顔を持ってるでしょう? 今回は冒険者の顔を貸して欲しいのよ」
「それで? 今日の夜にアンデット退治ですか?」
「そう言う事」
「そんな大量発生って事は、何処かのデカイ墓地ですか」
「いいえ、遺跡よ。地下迷宮のね」
「ダンジョンですか、そりゃまた厄介ですね。でもダンジョンなら何で夜何ですか?」
「先日の神官戦士団の派遣で、アンデットが異常に増える原因だけは突き止めてきたの。その発生原因が、どうやらヴァンパイアのアンデットが原因らしいのよ。古代その地下迷宮はどうやらヴァンパイアのねぐらに使われていたらしいのよね。何らかの要員でそのヴァンパイアが全滅、以来ダンジョンとして使われてきたのだけど、何故かそのヴァンパイアがアンデットとして蘇ってしまったらしいの」
「なるほど、ヴァンパイアなら活動時間は夜ですからね。解りました、学園への連絡はお願いします。それと報酬は」
「上手くやっておくわ。あと一時間くらいで皆集まって来るのだけど、それまでどうする?」
「そうですね? 買いに行きたい物もあるから、町をぶらぶらしてます」
「一時間後には戻って来てね」
とりあえず新鮮な野菜を購入しよう。それが有ればあれば何とかなる。しかし前の魔物の異常発生といい、今回と言い、一体どうなってんだ?
待てよ、あの糞神は確か・・・
次の転生先で、思いきり闘いなさい。それができるのであれぱ。
もう貴方を許すわけには行きません。思う存分闘いなさい。そして猛省なさい、今の記憶を持ったまま転生し、過去の自分の愚かさを反省するのです。
そう言っていた。つまり俺が闘う事が前提の話しだ。反省何ぞする気は毛頭無いが、あの糞神がそれを言っていた事は無視できない。この世界は争いであふれる事になるのは間違いない。
そんな世界で闘いに向かない聖女をさせることがあいつなりに考えた俺への罰だったのだろう。
ならこの魔物の異常発生は何かの前触れなんじゃ無いだろうか? そう考えると恐らくこれは自然発生じゃない。意図的に起こされていると考えるべきだ。
なら一体誰が、何の目的で、仮に戦争を起こさせようと考えているならやり方がせこすぎる。魔物を多少多く発生させたところで、冒険者や騎士団に討伐されて終わりだ。やるなら要人を襲うくらいの事をやらなきゃ戦争なんてそう簡単に起こせない。
なら、戦争が目的じゃ無い? いやちょっと待て、何で俺こんなこと考えてんだ? 闘いで満ちあふれるならそれに越したことはねえじゃねえか。ああ面倒くせえ、考えんのやめた。
野菜類を購入し、少し王都見物をし、時間になったのでギルドへ戻ると、何人か冒険者達が来ていた。そしてその中に、ロベルトさん達もいた。
「ロベルトさん!」
「アリスちゃんか! 聞いたぜ、今回アリスちゃんも出てくれるんだってな」
「はい、指名されたので」
「そりゃ聖女様が加わればアンデットなんて恐くないもんな」
「まあ聖女はアンデットの天敵ですからね」
「だからまだ候補ですって」
雑談している内に、どんどんと冒険者達が集まってきた。そしてギルマスが登場した。
王都のギルマスは、エザリアと言うエルフがギルマスをやっている。何でも1600年前、この世界に現れた強大な悪魔を聖女と共に倒した、唯一の生き残りのようだ。そりゃエルフは数千年生きるので、そう言う事もあるだろう。
この事により、この世界では聖女が大切にされる。ただそれは時と共に人々の心から薄れて行き、今ではその聖女信仰は薄れていた。この国でも伝統的に聖女を敬っているだけで、個々ではそれ程聖女を敬ってはいない。
俺の小遣いを差し押さえると言う暴挙が平然と行われているのが良い例である。
ただギルマスだけは別で、最初俺が聖女候補だと解った時は、片膝を着いてきた。今では仲良く笑って話すようになったが、最初はかなり戸惑った。聖女の慈愛の精神に女神の影を見たと、涙ながらに過去の事を語っていたときは思わずドン引きしてしまったが。
「全員集まったわね、それでは今日の作戦を話すわよ。討伐目標はアンデットと化したヴァンパイア、一体では無いけど、数は特定されて居ない。見つけたら即座に殲滅するわ。
このヴァンパイア達の魔力によってアンデットが蘇っていることが確認されているわ。つまりこのヴァンパイア達が死ねばアンデット達は体を維持できない。なので出来る限り手早くこのヴァンパイア達を始末する事が今回の討伐成功の鍵となるわね。
ただ神官戦士団が壊滅したことから解るように、このヴァンパイア達は非情に強い。
そこで今回聖女好捕であるアリスさんが討伐に参加してくれる事になったわ。作戦はこのアリスさんを中心に展開する。限りなく無傷でアリスさんをヴァンパイアの前に連れて行く事が今回の作戦の要になる」
「ギルマス、聖女好捕って言ってもこんな小っこいガキに何が出来るんだよ」
「そうだぜ、聖女様ってのが歴史上大悪魔を倒したって話しなら俺も知ってるが、そりゃ成長した大人の聖女様だろう?」
「おい、お前達、Aランクのブラッドとディオンだったな。しかしこんなに頭の悪いAランクが居ることに私は正直驚いている」
「はあ? 何で頭が悪い事になるんだよ」
「そのままの意味だよ。誰か、何故聖女が今回の鍵となるか説明出来る者は居るか」
半分近くが手を上げた。つまり半分は知らない訳だ。こりゃ正直俺でも呆れる。
「これだけか、全く、人選をミスって居るぞ、セレーネ。ランクだけでお前選んだな?」
「す、すみません・・・」
「正直今手を上げなかった者達を外したい所だが、今からでは時間が無い。いいか、今回の対アンデットに関してだけは、この中で一番強力なのがアリスさんだ。お前達の何倍もアリスさんはアンデットに対して強い」
「何故そうなるんだよ」
「本当に馬鹿ね? 行けば解るわよ」
「ミレーヌ、てめえ!!」
「あの、一言良いですか?」
「良いわよ、アリス」
「一々説明するの時間の無駄だから、先にブラッドさんとディオンさんに先方任せません? その後ろで私がフォローするから」
「何!? ガキにフォローなんざして貰わなくて良いんだよ!」
「いいわ、それで行きましょう。フォローされるのが嫌ならお前達が全て倒せば良いだけだ」
「それで、制限時間一体10秒でお願いしますね? それが過ぎれば無能と判断して後方に回って貰います」
「10秒だと!? 巫山戯んな! アンデットは最低のボーンだってD指定何だぞ!」
「私ならその半分の5秒で倒せます」
「嘘付くんじゃねえ!」
「それだけ言うなら報酬を賭けませんか? もし私が5秒でアンデットを倒せたらあなたの報酬を頂きます。5秒で倒せなかったら私の報酬はあなたの物」
「そりゃいいや! 賭けをしろ!!」
「賭けろ賭けろ!!」
「な!? ・・・くそ! てめえ」
「どうします? これだけ皆が騒いでる中で、逃げます?」
「や、やってやろうじゃねえか!! なあ? ディオン」
「お、俺もかよ?」
と言う事で、賭けは成立した。そして細かな作戦がギルマスから話され、いよいよ討伐隊は出発した。
「正直ブラッドとディオンは何回か組んだ事が有るが、まさかあれ程の馬鹿とはな」
「今回無報酬無し決定だもんね、少し同情するわ」
「無知が悪い、聖魔法が何れだけアンデットに対して有効なのか、子供でも知ってると思ってたけど」
「私としてはこんなぼろい賭けが出来てラッキーですけどね」
「しかしアリス、少しやり過ぎだと思うぞ?」
「ギルマスが私の資産守ってくれないからじゃ無いですか!!」
「いや、私だってちゃんと守ろうとしたよ。だが例の決闘事件から始まりパンツ詐欺、流石に擁護出来なくなってしまったのよ」
「何だそれ!?」
ギルマスはロベルトさん達に事の経緯を話し始めた。
「ブフッ! ウワハハハハハ!! 流石アリスちゃんだぜ! 貴族相手に詐欺か!」
「流石に擁護できんだろう?」
「そ、それは確かに、む、無理ね」
「ろくな事に金使わないって言う王女殿下の言い分も解るな」
「皆さんはどっちの味方何ですか!」
「す、すまん、アリスちゃんの味方になりたいが、む、難しい」
「裏切り者!」
あれは覗いた方が悪い、俺は悪くない!




