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28.エルナとの記憶

その空間には一人の少女がいた。


長い銀色の髪を持った、まるで神のように美しい少女が。


否、神のように、ではなく───


「お前が───」

「お会いするのは初めてですね、ノア」


───その少女は紛れもなく神であった。


創造神アスティリア。


この世界の本来の神である界律神アスティリアから別れた八つの権能のうち、最も主軸となる創造の権能を持った神だ。


「まずは謝罪を。貴方にこのような重大な責任を押し付けてしまって申し訳ありません」


その言葉にノアは少しだけ驚く。


(律儀な神だな……)


だがその言葉はある意味間違いだ。


「これは俺が選んだ道だ。確かに権能は譲り受けたが、この選択をしたのは俺だからな」

「そうですか……そう言っていただけると幸いです」


その会話の後、アスティリアは本題に入る。


「さて、私の試練ですが……試練というよりはお話ですね。伝えなければならないことがいくつかあります」


ヴェレイドから聞いていた通り、やはり戦闘はないようだ。


「聞こう」

「では早速本題を。貴方に私の持つ権能を全て与えた時の話です」

「それはつまり、界律神の……?」

「ええ、その通りです」


ノアの最も気になっていた話だ。


「結論から言うと、貴方に権能を与え、私が消えた瞬間に界律神アスティリアは復活します」

「まあ、そうだろうな」

「貴方の持つ虚無ならば界律神を抑え込むこと自体は可能でしょうが、きっと全てを完全に防ぎ切ることはできないでしょう。界律神は何かしらの行動を起こすはずです」


意思が復活した瞬間に今の状態を察知し、ノアの中から権能ごと出てこようとするとアスティリアは考えている。


実際に彼女の持つ情報から導き出される結論はそれ以外にないだろう。


だが、ノアは───


「───何もしなくてもいい」

「……それは、一体?」

「お前は何もしなくていい。その対応は全て俺に任せてくれないか?」


確信があった。


界律神の本来の姿が創造神アスティリアの知るものとは乖離していると。


これはレノンの情報を知っているノアだからこそ出た結論だ。


(この世界がレノンに干渉されていることを踏まえた上で界律神から分けられた八神という存在がいることを考えると、自ずと結論が出てくる。きっと界律神アスティリアは、八神が考えるような人格ではない)


どのような人格なのかを問われれば返答に困るが……


「とりあえず、界律神の件は俺に全て任せて欲しい。どうにかなる算段はある」

「そう、なのですか……解りました。ではその件は貴方の自由になさると良いでしょう」


権能が集約されることで界律神が目覚めるのなら話は早い。


いつかではなく、創造の権能を受け継いだ瞬間にその時が訪れるのだから。


「では、二つ目の話を。今、グラエムでは狂王を名乗る異世界の人間が暗躍しています。ここまでは当然貴方も知っているかと思いますが、最大の問題はそのやろうとしていることです」


狂王を名乗る存在といえばグリアノス以外にいないだろう。


(あいつに何かしらの目的があったのは事実だろうが……アスティリアはそれを読んだのか?)


どうやってグリアノスの目的を察知したのかは不明だが、グリアノスはノアにとっても絶対に倒さなければならない相手だ。


情報を多く持っているに越したことはない。


「やろうとしていること……つまりは目的だろう?それを何故察知できたのかは置いておいて、その目的とやらは一体何なんだ?」

「それが───」


次の瞬間、ノアの表情が凍りつく。


アスティリアの、その発言によって。


「───異界の神の力を、一つの生命として新たに誕生させる───というものです」


ノアの理解が遅れる。


それは有り得ない……否、有り得てはならない事象だ。


「異界の……神の力……?つまりそれは権能ということだろ……?それを、あいつは簒奪したのか?奴から?」


様々な疑問がノアの頭を埋め尽くす。


何故ならそれは絶対的に不可能なはずだから。


(俺がかつていた世界……あの世界の神は、邪陰デネスという名だった。デネスは直接的な戦闘能力こそ控え目だったが、策を弄じ、裏で手を引くというものにはかなり長けていた。それら全てを考慮した場合、界律神にも一切劣ることはないはずだ……)


つまり、この世界の八神よりは遥かに強い。


グリアノスはせいぜい八神一人と同程度の力しか持ち合わせていない。


デネスから権能の一部を簒奪し、それを別の世界で生命として変換するなど、最早あらゆる理に反していると言っても過言ではなかった。


「……それが本当だったとして、手段はどうなる?最終的に奴はどのような手段で権能を持つ生命体を誕生させる気なんだ?」


切羽詰まったようなノアの問いに、アスティリアもまた眉を顰ませながら少しずつ回答していった。


「あくまでも可能性の範疇ですが……異世界のものとはいえ、一応は神の……それこそ、私達八神の権能と同等のものを最低でも一つ、場合によっては複数個同じ生命に宿らせるわけですから……私達の時は貴方という器があったので可能でしたが、今回はそうもいかないはず。となれば───」


言葉を切り、次にアスティリアの放った一言はノアの思考を完全に停止させた。


「───必要なのは、“ 優秀な母体”……といったところでしょうか……?」


「……は?」


想定もしていなかった答え。


ノアもいくつかの方法を考えてはいたが、その結論には至っていなかった。


正確には、至る道筋を『そうであって欲しくない』と拒んでいたというべきか。


「要は権能を植え付け、それを生命として形造るのが目的なのでしょう。であれば魔法によってそれを造るのは創造の権能か再生の権能を自在に扱えない限り、実質不可能。他に生命を新たに産み出すとなれば……母体が必要なはずです」


ただの母体というだけならグラエムに住む1000万人のうち、生物分類上雌と判断できる存在にその役が押し付けられるだろう。


当然それも絶対に防ぐべきだが、『優秀な』という点にノアは大きく引っかかっていた。


(その母体の候補は……きっと……)


ノアの思い浮かべている人物は二人。


そのどちらかである可能性が高いが……


「───なあ、アスティリア」

「はい、何でしょう」

「その、母体に選ばれる可能性が高いのは───エルナか、アルテマのどちらかなんじゃないか……?」

「……それは」


二人とも、ノアの知る人物だ。


特に、エルナに関してはノアはよく知っている。


前世の記憶を取り戻したことで、当時の記憶が鮮明に蘇っていた。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


時は二万年程昔。


この世界は植物の緑と水の青で彩られた豊かな世界だった。


この世界に生きる四種族の争いはあったが、この当時は()()()()()()()()()()()()のおかげで実質的な休戦状態になっていたのだ。


そんな世界の、辺境とも言える山脈の麓にある小さな村。


そこから少しだけ離れた場所に、小さな小屋が建っていた。


その扉が開けられ、中から出てきたのは───


「───本当にこの世界は豊かだな……向こうも、そうだったなら良かったのに」


どこか表情に陰りのある、灰色の髪を持った青年だった。


そう、前世のノアである。


ノアは何を思ったのか、小屋の裏にあった森に入る。


「葉の緑に……空の青。あの世界は、こうじゃなかった」


ノアが生まれた世界はその当時からすでに荒廃しており、植物はその数をかなり減らし、空は分厚い雲に覆われて一切見えることはなかった。


それに比べて、この世界はあまりにも豊かすぎる。


ノアからすれば、嫉妬してしまうぐらいに。


しばらく森の中を歩き続け、ノアはいつも来ていた場所へと辿り着く。


この森で一番の巨木の元だ。


高さは推定30メートル程で、近くまで来ると大きく上を見上げなければ天辺が見えない。


ノアはその木を軽々と登り、広い枝の上へと腰掛けた。


丁度この位置は近くの村を見渡すことができ、山も森も空も、近くにある湖でさえ見える程景色のいい場所だった。


この世界にやって来て数十年、少し前にこの村の近辺へと移り住んだノアはこの場で一日の大半を過ごすことが多かった。


この場からなら、この世界の豊かさをしっかりと目に焼き付けられるような気がしたのだろう。


「本当に……本当に良い世界だよ、ここは」


レノンに勝てないと悟ってしまったその瞬間、ノアはあの世界に絶望した。


だから、逃げた。


逃げた先がこんな豊かな世界なら、もう行動を起こそうという気にすらならない。


この世界で静かに朽ちるのを待つ……それが、ノアの選択だった。


故に、今日もいつものようにこの場で世界を記憶するのだ。


「……ん?」


だが……この日はいつもと少し違ったらしい。


気の根元付近に、小さな少女がやってきたのだ。


「うぅ……ぐすっ……」


その少女はどうやら泣いているようで、この木の根元にある木陰でしゃがんでしまった。


(……何かあったのか……?)


別にノアはその子のことを気に留める必要はない。


だが、どうしても気になったのだ。


つまり、興味本位である。


ノアは軽快に枝から飛び降り、音もなく幼い少女の背後に降り立つ。


「何かあったのか?」

「ひゃっ……!?」


ノアの気配を感じられなかったのであろう、少女は声をかけられただけで驚いてしまった。


……それどころか怯えてしまっているようだ。


(足音ぐらい立てておくべきだったか……)


ノアは元いた世界では世界そのものを支配する王だった。


故にその命を狙われることも多々あったのだ。


己の虚無によって存在ごと気配を消す……というのは、最早習慣になってしまっている。


この世界は総じてあの世界よりもレベルが低い。


ノアの強さは、この世界ではより異質であった。


「君、近くの村に住んでいるんだろう?何故ここまで来て、泣いているんだ?」


服装からして少女はただの村娘のようである。


とはいえ、少女が普通の村人とは違うということに、ノアは気づいていた。


(魔力の質が普通の村人とはまるで違う……この子、種族が人間ではないな。特徴的に考えて、魔族だろう)


獣人は獣の特徴があり、精霊は水晶のような羽がある。


見た目に変わりがないのは人間と魔族だけなのだ。


(予測できるのは……その違いから虐められてるとか、そういうところだが……)


人間と魔族は魔力構造がまるで別物といったレベルで違う。


この二種族では使える魔法に差があるというのも、その違いによるものだ。


魔法にある程度精通しているならば、そこらの村人でもその違いに気づけるぐらいには違いが大きい。


誰かがその情報を漏らし、それが広まったことで同年代からのいじめを受ける……というのが最も考えられる。


「君、名前は?」


ノアは少女の目線に合わせるようにしゃがんで、笑顔を向ける。


できるだけ少女を怖がらせないように。


「……」


少女が人間に酷い目に合わされたというのは事実だろう。


つまり少女は人間のことを信用できなくなっている。


だが、今少女に優しく接しているノアも、また人間なのだ。


人間が自分に対して優しくしている、ということを不思議に思っているということは想像に難くない。


「……エルナ」


少女は不思議そうに自身のことをエルナと名乗る。


少女は、村の人間達から嫌悪の視線を向けられていた。


おかしな話ではない。


今、この世界では四種族の戦争が勃発している。


このような辺境では影響は薄いとはいえ、敵と同種族のエルナは嫌悪される対象であった。


そんなエルナに優しく接する人間などこれまでいなかったのだから、ノアに興味を持つのは自然であった。


「そうか、エルナか。良い名だな」


そう言ってノアはくしゃくしゃとエルナの頭を撫でる。


父親が娘にするように、荒々しくも優しい手だった。


「んぅ……」


エルナには親がいなかった。


正確には、エルナが産まれてすぐに戦争が始まり、魔族は敵だと言う人間達に殺されてしまったのである。


故にエルナは家族の愛情というものを知らない。


親に育てられたわけではなかったノアもまた同じである。


「……で、何があったんだ?せっかくだ、力になってやる」


ノアは紫色のその双眸を逸らさずにエルナに向ける。


エルナは少し暗い顔に戻り、それでも少しずつ話し始めた。


「……色んな人に、いじめられるの……同じくらいの歳の子達からも、大人からも……」

「大人も、か……」


ノアはエルナに悟られないように、静かな怒りを湛える。


(腐ってるな。気持ちは解らなくもないが、子供相手に情けない)


ノアは元の世界で頂点に立つまでは独りで生きてきた。


己の力で世界の全てを屈服させ、統一し、皇帝と呼ばれるその時まで。


エレンやデュランなどの信の置ける配下が加わったのは世界を統一した後だったのだ。


だからこそ、解る。


(子供が子供にその目を向けるのはいい。子供はまだその分別がつかないのだから。大人から大人もまあいいだろう。非難を受ける側も、対処のしようはある。だが、大人から子供にその目を向けるのは違うだろう)


子供は良くも悪くも純粋だ。


大人からの非難を、素直に受け止めてしまう。


「……君はどうしたい?」


ノアがこの怒りを発露させることはない。


ノアはあくまでもこの世界の存在ではなく、異世界から来た異物だ。


故に小さな人助け以上に世界に干渉しようとは考えていなかった。


だからこそ、エルナがどんな目に遭っていようとも助ける以上のことはしない。


今大事なのは、彼女の話を聞くこと。


相談できる相手がいるというのは大切なことなのだ。


「……わたしは……強くなりたい」

「それは、何故?」

「強くなって、皆に認められたい……」

「……それが必ずしも良い結果になるとは限らない。それは解っているか?」

「……うん」


その考えが正しいのかは解らない。


彼女が望む未来とは逆の結末になる可能性も否定できない。


ただそれでも、エルナは強さを望んだ。


だったらノアはその望みを叶えるだけ。


ノアは立ち上がり、エルナに優しく微笑みかける。


「……解った。お前を強くしてやる。お前の持っているポテンシャルを最大限引き出せるように」

「本当?」

「ああ、どれだけかかるかは解らないが……そこらの人間や魔族相手には絶対に負けないような、そんな力をな」


それは親子でも恋人でも、なんなら師弟関係でもない。


そんな二人の奇妙な生活が、この日から始まったのだ。


そして、それから数年が経った。


実質的に村から追い出されたエルナはノアの住んでいた小屋へと移り住み、この数年間を暮らしていた。


ノアはエルナに魔法や戦術を教えつつ、近接戦闘の訓練も同時並行で行っている。


「はぁ、はぁ、はぁ……」

「まあまあだな。この世界内じゃ上澄みに近いところまでは来てるんじゃないか?」


この日はその時間の殆どを戦闘訓練に費やしており、エルナはほぼ一日中動きっぱなしだった。


だからなのか、大きく息が上がっている。


「この世界内って……じゃあノア様は一体何なんですか……」

「世界の外側だって言っただろ?」

「……強すぎるせいで嘘に聞こえません……」

「本当の話だからな」


数年経った今でもまだその話を冗談だと思っているようで、エルナはノアが別の世界から来た存在だということを信じようとしない。


とはいえ、強すぎる力のせいで明らかに普通ではないと感じてはいるようだった。


「だったら、証拠を見せてくださいよ。この世界の存在じゃない程の、圧倒的な力を」


この時のエルナは14歳。


ノアはエルナの親ではないし、エルナも親のように感じているわけではない。


だが年齢が年齢なので反抗期に近いものはあった。


出会った当時ならこのように言い返すこともなかっただろう。


「俺の力、ねぇ……?」


この時代ではノアは八神の権能を持ち合わせておらず、明らかに異質と言えるレベルの力は虚無の権能やそれからなる魔法程度しかなかった。


強すぎるので、ノアもこの世界に来てからは一度も使っていないレベルなのだ。


(この世界の神に見られても厄介だし……まあ最悪、認識を阻害すればいけるか……)


ノアの虚無はあらゆる事象をなかったことにできる。


神が虚無を確認する、ということもないように、世界を無で書き換えることができるのだ。


(操作は慎重にしないとな……)


無は副産物として矛盾を引き起こす。


そして矛盾は世界にとっての致命。こればかりはノアでも神相手に隠蔽し切るのは難しい。


それを起こさないように虚無の権能を使うというのは途轍もない技術が求められる。


この当時の……前世のノアには、それがあった。


「それじゃ、見せてやるよ……『無形成(ラグト)静滅銀刀(ゼグル)』」

「えっ……?」


ノアの手に現れたのは空っぽの刀。


それは静滅銀刀(ゼグル)のようで、静滅銀刀(ゼグル)ではない。


無によって擬似的に形成された、偽物の静滅銀刀(ゼグル)なのだ。


「どうだ?認める気になったか?」


ノアは三秒だけその刀を形成させ、問いかけるのと同時にそれを消滅させる。


それを見ていたエルナは先程の力に少しばかりの畏怖を覚えていた。


「今のって……?」

「俺が別の世界から来たことの証明だ」


正確には少し違うとはいえ、たったあれだけでもこの世界の神なんかよりは遥かに強い力だ。


力の形態が虚無でなければ、一瞬で神に感知されていたであろう圧倒的なまでの。


(流石に世界の外側の力を使うのは辞めておいたが……正解だったみたいだな)


この当時はまだ名前がなかったが、これは理力のことである。


ノアはエルナと共に過ごした数年間で、この時にしか力を見せていなかった。


「なあ、エルナ」

「な、何ですか……?」


ノアは少しだけ達観したように、青空を見上げながらエルナに向けて言う。


「お前はこれからもっと強くなれる……それこそ、俺がいなくなっても」

「え……?」


ノアはそろそろ、眠りにつこうかと考えていた。


己の記憶と力を完全に封印し、二度と世界に降り立つことがないように。


ノアは元の世界のことを捨ててしまった。


もう自身とは無関係のことなんだと、そう思うように自分に言い聞かせている。


だからこそ、ノアが考える気がかりはエルナのことだけだ。


「お前なら、いずれきっと世界を統一できる。俺があの世界でやったように、争いをなくすために世界を統べるということを」

「私が……ですか?」


エルナの頭には言葉が入ってきていなかった。


ノアがいなくなっても、という点ばかり気になってしまっていた。


「もしこの世界の争いがどうしても絶えないという時は……その時は、お前が世界を変えるんだ。大丈夫、お前の力のポテンシャルは俺が保証する」

「で、でも、ノア様は……?」

「俺はこの世界にとっての異物に過ぎない。こういう奴は、早く世界から消えるに越したことはない。もう数十年もいるんだ。そろそろ潮時だろう」


まだ何時頃消えるかというのは決めてはいないが、そう遠くない内に己を封印するだろう。


「───私、忘れません。ノア様のこと、絶対に」

「そうか」


嬉しいことを言ってくれるものだと、ノアは笑顔を向ける。


それにエルナは、年相応に泣きながら笑ってみせた。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


ノアの意識が回想から戻る。


この時間は一秒にも満たず、ただ記憶を思い起こしただけのこと。


たった今想起したのはエルナと共有した、思い出の数々だ。


ノアはエルナのことを娘のように、弟子のように可愛がっていた。


そんな存在が───


「───アスティリア」

「……はい」

「───どっちだ」


ノアはその鋭い眼光をアスティリアへと向ける。


その視線は、神であるアスティリアでさえ怯む程の殺意が滲み出ていた。


「……それを聞いて、貴方はどうするつもりですか?」

「当然グリアノスは魂諸共滅ぼす。やることは変わらん。これは最後の確認だ」


あまりにも鋭すぎるその殺意を隠すこともなく、ノアはアスティリアに問う。


それに対し、アスティリアも諦めたように小さく溜息を吐きつつも答えた。


「……現状、最も考えられるのは───」

「───」


アスティリアの言葉に、ノアは瞠目する。


「そう……か……」


その瞬間、ノアの意志が定まった。


(神域、深層羅神、根源神装……何でも使ってやる……だから、お前だけは何があろうとも……絶対に、絶対に許さない)


この瞬間、ノアの意志が覚醒する───


本当はこの話から3章最後となる5ブロックを開始しようかと考えていたのですが、内容を若干変更したため、最後の数話がなくなりました(正確には次章へ持ち越しとなります)

なので今回を含め、あと2話をもって3章の終わりとさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

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