表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校デビューした俺。学校一の美少女を狙うはずが、クラスでは犬猿なのに家では甘々な義妹が邪魔してきて気持ちが揺れてます  作者: 久遠遼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/40

32エンカウント

新幹線での小旅行を終えた俺たちは、最寄り駅へ向かう電車に乗り換え、ホームへ降り立った。

 夕方の風は思ったより冷たく、旅の余韻をゆっくりと溶かしていく。

 だけど、その風を浴びているにも関わらず俺の身体は熱を帯びていた。


「楽しかったね、お兄ちゃん!」


「そうだな……」


「また一緒に行こうね!」


「ああ……」


 美羽が何かを話しているが、いまいち頭には入ってこない。

 新幹線に乗っている間、俺に寄りかかってうたた寝をする美羽の横顔を覗いたり、その体温を感じたことで、“気づき”が確証へと変わった。


 ――俺は美羽のことが、異性として好きだ――


 特別なきっかけはこれといってないような、あるような……正直、分からない。

 だけど同時に、複雑な気持ちが胸の奥で渦巻く。

 その感情を自覚できたのは、柳瀬さんへの想いと似たものを感じたからだ。


 比較すれば厳密には違う。

 けれど、二人のことを考えたとき胸に生じる熱い塊のような違和感――不快ではないが、心地よさと同時に息苦しさを覚える。


 紛れもなく、これは恋だ。

 つまり俺は、今二人の女の子を好きになってしまっている。

 しかも、そのうちの一人はよりにもよって義理の妹という、どうしようもない状況だ。


 この感情と、どう折り合いをつけるべきなのか――。


「ねぇ! お兄ちゃん、聞いてる!」


 ズイッと不満いっぱいの顔で美羽が覗き込んでくる。

 少し幼い顔立ちではあるけど、長い睫と大きな瞳、それに似合ったすねていても愛らしい仕草――それを近い距離で見たせいで、心臓が大きく跳ね、目を合わせられずに顔を逸らした。


 くそ、改めて見るとやっぱりかわいいなこいつ……。


「ああ、ごめん。ちょっと考え事をしてた」


「もう! 愛しの妹の話をちゃんと聞かないのはダメでーす!」


「そ、それでなんの話してたんだっけ」


 美羽は口を尖らせながら息を吐き、腰に手を当てて呟いた。


「今日からしばらく家で二人っきりだから、晩ごはんどうする?って話だよ!」


「ああ〜そっか、今日から……はぁ!? 二人っきり!?」


「なに驚いてるの? 前からそう聞いてたじゃん?」


「いや、そうだけど、そうじゃなくて……」


 俺の歯切れの悪い受け答えに、美羽は眉間にシワを寄せて首をかしげる。


 あの時とはもう状況が違う。

 美羽を好きだと自覚した今、そんな彼女と夜も一緒に家で二人きりで過ごす……?


 いや、妹に対してなにもない。ないけど……でも“好きな女の子と夜を共に過ごす”なんて。


 もちろんそんなこと、美羽に話せるわけがない。

 どうしたものか……俺だけ弘毅の家に泊まるのも不自然だし、美羽を一人にするのも違う。


 うん、これは詰みだ。


「ふ、二人っきり!? 夜、家で?」


 思考を放棄しかけたそのとき、急に横から声が聞こえた。

 声の方を向くと、目を見開いてワナワナと口を震わせている柳瀬さんが立っていた。


 俺と同時に美羽も気づいて呟く。


「え、怜奈? なんでこんなとこに?」


「ちょっとこの辺りのお店に用があって来てたんだけど……そうじゃなくて、家で二人っきりってどういうこと!」


「えーと、お父さんたちが二人で旅行に行くから。今日から家には若松くんと私、二人だけになるの」


「それって、夜も二人っきりで過ごすってこと?」


「う、うん。そうだね」


 なんとも言い難い柳瀬さんの迫力に、俺も美羽もたじろぎながら答える。

 柳瀬さんはしばらくうつむいたあと、ぽつりと言った。


「私……泊まる……」


「え? 今なんて言ったの?」


 聞き取れなかったが、確かに“泊まる”と言ったような……。恐る恐る聞き返す。


「若松くんと美羽の家に、今日から私、泊まる!」


 今度ははっきりと言った。

 柳瀬さんが俺たちの家に……なんで?

 状況が飲み込めず戸惑う俺の横で、美羽は何かを悟ったかのような表情をしていた。


「いいよ! 怜奈もいると楽しそうだし、おいでよ!」


「なっ! お、おい勝手に決めるなよ」


「なら決まりだね! 支度をしたら後からお邪魔するね」


「今からだと遅くなるから、着替えとか貸すよ? 今日のところは最低限必要なものだけコンビニかどこかで買って、このまま行こう」


「ほんと? 助かるわ」


 なぜか妙にノリノリな美羽。二人の間でとてつもなくスムーズに泊まりの打ち合わせが済んでしまい、俺の戸惑いは増すばかりだった。

 そもそも、柳瀬さんこんな突拍子もないこと実行するような子だったのか……また彼女の意外な一面を知れたな。


 待てよ……?

 柳瀬さんが美羽と一緒なら、俺は弘毅の所に――。


「じゃ、じゃあ俺は弘毅の――」


「それじゃあ、帰ろう!」


 言い終える前に、美羽が俺の腕にしがみついて遮った。

 その様子を見た柳瀬さんも、反対の腕にしがみついてくる。


「今日からしばらく、よろしくお願いします」


 両腕から伝わる女の子の柔らかさに、俺の頭は完全にショートした。


 はじめて好きになった女の子。

 思いがけない状況から好きになってしまった女の子。


 そんな二人と、しばらく同じ屋根の下で過ごすことになるなんて――。


 俺の始まったばかりのゴールデンウィークは、いったいどうなってしまうんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ