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高校デビューした俺。学校一の美少女を狙うはずが、クラスでは犬猿なのに家では甘々な義妹が邪魔してきて気持ちが揺れてます  作者: 久遠遼


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25初恋の芽生えと、波乱の幕開け

――「さあ、美羽。どういうことか説明してくれるかな?」


 私とお兄ちゃんが兄妹ということが怜奈にバレた夜。

 夕食後、ちょうどお兄ちゃんがお風呂に行ったタイミングで、怜奈から連絡がきた。


「えーとね、去年、お父さんの再婚相手の子供が……」


――「それはわかってるわ。義理のお兄さんが若松くんだったのよね? 私が聞きたいのは、なんでずっと黙ってたの?」


 そう、怜奈には義理のお兄ちゃんができたことは伝えている。怜奈が聞きたいのは、そういうことじゃない。


――「去年。お父さんが再婚したばかりのときに話していたこと?」


 私が言葉に詰まっていると、怜奈が再び語りかけてきた。

 その声は、さっきの問い詰めるようなものではなく、優しくそっと寄り添ってくれるものだった。


 怜奈はいつもそうだ。

 本当はいろいろ言いたいこともあるだろうけど、なにより私の気持ちに寄り添ってくれる。

 その優しさに触れ、重かった私の口は少しずつ軽くなっていった。


「うん……なんとなく、話していたと思うけど。私はお兄ちゃんのこと、家族と思ってなくて。周りにもそう思われたくなかったの」


 再婚した当時、私は美香さんとお兄ちゃんに冷たく接していた。


 頭では分かっていた。

 二人は何も悪くないと。それでも、気持ちは二人を拒絶してしまった。


「だから、お兄ちゃんには、学校では他人のふりをしてって言ってたの」


――「そっか……」


 私の言葉を聞いてから、怜奈はしばらく黙っていた。

 少しの沈黙の後、ゆっくりとした口調で怜奈が話す。


――「でも、今は違うんでしょ? 去年よく不満を口にしてたとき、美羽はお義兄さんのこと“アイツ”や“あの人”って言ってたよね?」


「うん。お兄ちゃんって呼んだら家族って認めるみたいで嫌だったから。……でも今は、ちゃんと家族だって思ってる」


 そう。あの日の出来事を境に、私は美香さんとお兄ちゃんのことを少しずつ家族と思えるようになった。

 今では、なんであんなに拒絶してしまったのか不思議なくらいだ。


――「それなら、どうして今も秘密にしているの?」


 怜奈の心配した声。

 私はどう答えたらいいのか悩み、言葉に詰まる。


 怜奈のいう通り、今は周りに家族だって知られることは嫌じゃない。

 むしろ、「自慢の家族です」と言えるくらいだ。


 それなのに、私が未だに“若松智也と義理の兄妹です”というのを隠しているのは――


 この秘密の関係を共有しているという状況に、ドキドキしてしまって悪くないという、とてつもなく下らない理由なのだから。


 だってしょうがないじゃん。

 はじめは本当に嫌だったよ? でも、それから家族になって、お兄ちゃんのことを好きになって。

 気づけば――お兄ちゃんの笑顔を見るたびに胸が温かくなって。

 そんな毎日の中で、二人の間で“学校では他人、家では仲良し”っていう秘密の関係って……凄くドキドキするんだもん。


 もう、毎日が特別な漫画のような生活に、ワクワクして過ごしているのだから。


 そんな私の沈黙に耐えかねた怜奈が問い詰めてくるのに、とうとう観念してそのことを話すと、とてつもなく怒られた。

 ちょっと涙が出てしまったけど、自業自得なのでしょうがないなと思った。


 それでも、怜奈に話したことで少しスッキリした。

 誰かに聞いてもらえたことで、改めて“私の大切な家族”を実感できた気がした。


 ※※※


 美羽との通話を切り、思わずスマホを投げたくなる気持ちをぐっとこらえて、ベッドへポスと離した。


 美羽が若松くんと兄妹だということを、今まで隠していたのにはとても重たい事情があるのかもしれない。


 なにか力になりたい、親友だからこそ美羽のためにできることはないかと思って心配したのに。

 美羽の口から出たのは


 ――「義理のお兄ちゃんがクラスメイトっていう展開を秘密にするのが楽しくなってた」――


 というとてつもなく下らない理由に、思わずカチンときてしまった。

 ありえない! こんなに心配したのに!


 聞いた瞬間はあまりにも腹が立って、美羽を怒ってしまったけど、放課後若松くんとの短いやり取りでわかる。


 美羽が若松くんに心を開いて、家族としていい関係を築けていると。


 去年美羽が、新しい家族に対して不満や辛そうな表情をよくしていたのを知ってた分、今彼女が幸せそうにしていることが何よりも安心した。


 既に怒りは収まって、親友が自分の居場所。新しい家族を手に入れている幸せな毎日を過ごせていることへの嬉しさが込み上げてくる。


 そう思っていたとき、ふいに言葉が口から出た。


「よかった……二人が付き合ってなくて」


 自分が呟いた言葉なのに、驚く。

 なんでよかったと思ったんだろう。


 昨日二人が、カフェからでてきた時、二人が付き合っているんだと思った。

 その瞬間、とてつもなく胸が苦しくなって、嫌だと思った。


 胸が跳ねる。


 そもそも彼と二人で話すことになんでこんなにもこだわったのだろうか?

 授業中に手紙のやり取りやアプリのメッセージだけじゃ物足りなかったからだ。


 さっきよりも、一段と胸が跳ねる。


 じゃあ、なんで物足りないと思ったのだろうと考え、思い浮かんだのは若松くんと二人で映画を観に行った日のこと。


 とても楽しかった。もっと話したい。一緒にいて心地よいと思って、ふと見つめた彼の横顔。

 そして、自分とは違う考えや価値観を共有することができたこと。


 大きく心臓が高鳴ったあと、すぅーと熱が身体全体に浸透していく。


 ああ、気づいた。

 私はあのデートの日に、彼のことが気になりはじめていたんだ。

 そして、いま抱いているこの感情はたぶん恋だ。


 生まれてはじめて感じる不思議な感覚。

 心臓が激しく脈打ち呼吸がしずらい。それでも不思議と嫌な感じはしない。


 はじめまして、私の恋。好きな人……


 そんなことを思い、わずかに口元がにやけているのがわかる。

 

 だけど、そこでふと環の言葉を思い出す。


 ――美羽の様子からして、あれはお義兄さんに惚れてるわね――


――あれ、絶対お義兄さんのこと好きでしょ?――


「あ、あれ? え、ええー!」


 はじまったばかりの恋は、きっと平穏ではない――そんな予感だけが、胸の鼓動と一緒に鳴っていた。


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