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高校デビューした俺。学校一の美少女を狙うはずが、クラスでは犬猿なのに家では甘々な義妹が邪魔してきて気持ちが揺れてます  作者: 久遠遼


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24誤解がほどけた、その瞬間

「それでは、ゴールデンウィークあけの新入生歓迎祭に向けて頑張りましょう。

 今日はこれで終わります、お疲れ様でした」


 歓迎際の委員長である、生徒会長がそう締めると、参加していた生徒たちが席を立ち部屋を後にする。

 俺と柳瀬さんも、その流れで自分達の教室へと足を向け、放課後の廊下を無言のまま歩く。

 新入生歓迎祭の委員会で疲れた――というわけではない。

 理由はもっと単純で、ただひたすら気まずいのだ。


 昨日まではなかった“壁”のようなものが、今日になって急にできてしまった気がする。

 柳瀬さんが、意図的に俺との距離を取っている――そんな感覚があった。


 これまでは毎日、どこかの授業で手紙のやり取りをしていた。

 けれど今日は、一度も手紙をもらっていない。

 それどころか、休み時間になるたびに柳瀬さんは美羽を誘って隣のクラスへ行ってしまい、俺と目も合わせてくれなかった。


 そんな気まずさを抱えたまま、教室に戻る。


「それじゃあ、また明日ね、若松くん」


 柳瀬さんは素早く荷物をまとめると、逃げるように立ち上がった。


「ま、待って! 柳瀬さん!」


「えーと、何かな?」


 振り返った彼女は、柔らかな笑みを浮かべたけれど、それが作り笑いであることはすぐに分かった。

 というより、なんだかちょっと怒ってる?


「えっと……俺、なにか怒らせるようなことしたかな?」


 自分でも情けない質問だと思いながらも、そう口にしていた。


 柳瀬さんは少し黙ったあと、視線を外し、ぽつりと呟いた。


「若松くんと美羽、付き合ってるよね?」


「ふぁっ?」


 あまりに意外な言葉に、変な声が出た。


「昨日、二人が“カップル御用達”って噂のカフェから出てくるのを見たの」


 まさか柳瀬さんに見られていたなんて――。

 その瞬間、頭の中で警報が鳴った。


「前からちょっと変だと思ってたの。

 美羽、若松くんと私が関わらないようにしてたし……やけに若松くんに対して当たりが強いし」


 そして、罪悪感を滲ませた表情で言う。


「全部、彼氏の若松くんと私が仲良くするのを嫌がってたんだって分かったの」


 そう言って、柳瀬さんは深く息を吐いた。


「ごめんね。二人が付き合ってるなんて知らなくて。

 知ってたら、映画に誘ったり、二人きりになるような委員を提案したりしなかったのに」


 そのうえで、腰に手を当て、指を立てて俺をたしなめるように言う。


「だけど若松くんもダメだよ。美羽みたいなかわいい彼女がいるのに、私の誘いを受けるなんて。

 人によっては、それでも浮気って言うんだからね!」


 俺は頭を抱えたくなった。

 義理の兄妹だなんて知らなければ、そう誤解されても仕方ない。

 だが、それを“好きな子”に誤解されるのは、あまりにきつい。


「柳瀬さん……俺と美羽は、その、そういう関係じゃないんだ」


「違うって……じゃあどういうこと?」


 柳瀬さんにしては珍しい、責めるような口調に焦りながら、俺はスマホを取り出し、美羽の連絡先を開く。

 かわいい猫のアイコンが、いつものように表示される。


「これ、美羽の連絡先で合ってるよね?」


「うん、そうだけど……?」


「今からかけるね」


 怪訝そうに首を傾げる柳瀬さんの前で、スピーカーにして発信ボタンを押す。

 すぐに通話が繋がった。


――『お兄ちゃん! 委員会お疲れさま~! ご飯できてるから早く帰ってきてね!』


 電話越しに響いた甘い声に、柳瀬さんが目を見開く。


「……お兄ちゃん?」


――『あれ? 怜奈?』


 お互い状況が掴めず、一瞬沈黙が生じる。


「えーと、美羽。柳瀬さんに、昨日の放課後のこと見られてたらしい」


――『うそっ! 怜奈に!?』


 電話の向こうで頭を抱えている姿が、目に浮かぶようだった。


「どういうこと……?」


 柳瀬さんは混乱しているが、だんだん事情を察してきたようでもある。


「柳瀬さんは、俺と美羽が付き合ってると思ってたんだ」


――『そりゃそう思われちゃうよね~。外で一緒にいたら』


 なぜか、電話越しの美羽の声がちょっと嬉しそうなのは気のせいだろうか。


「柳瀬さん、これで分かったかもしれないけど……俺たち、義理の兄妹なんだ」


「え……兄妹……?」


 柳瀬さんはその場で固まり、口を半開きにして動かなくなった。


「柳瀬さーん……?」


 肩を軽く叩くと、ようやく我に返る。


「ご、ごめん。あまりにも衝撃的で……」


――『もしもーし? 大丈夫?』


「ああ。柳瀬さんが、ちょっといや、かなり動揺してる」


 そう言った次の瞬間、柳瀬さんが勢いよくスマホを覗き込み、美羽に語りかけた。


「美羽~? あとで、じっくり話しましょうね?」


 その声色は普段と変わらないけど、言葉にしがたい迫力があった。


――『ひゃうっ!? は、はいっ……そ、それじゃあ一旦切るね!』


 通話が切れると、柳瀬さんは深呼吸して落ち着きを取り戻した。


「まったく……まずは美羽から事情を聞かなくちゃね。

 若松くん、明日のお昼空いてる?」


「えーと、弘毅と食べる予定だけど」


「成宮くんは、二人が兄妹だって知ってるの?」


「うん、つい最近話したばかりだよ」


「ならちょうどいいね。明日、四人でお昼食べましょう。いろいろ整理しなくちゃ」


「……了解。弘毅にも伝えとくよ」


「うん、それじゃあまた明日ね!」


 笑顔で手を振る柳瀬さん。

 さっきまでの迫力が嘘のように、穏やかな彼女に戻っていた。


 去年は、彼女のこういう一面を知ることなんてできなかった。

 それがこの短期間で色々な面を知ることができた。

 

 それを思うと、胸の奥に不思議な高揚感が湧いてくる。


 それが、喜びなのか。

 それともこの先の日常がどう変わるのかという、期待なのか。


 自分でもよくわからないまま、俺は静かに息を吐いた。

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