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高校デビューした俺。学校一の美少女を狙うはずが、クラスでは犬猿なのに家では甘々な義妹が邪魔してきて気持ちが揺れてます  作者: 久遠遼


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20/40

20兄の胸に芽生えたそれは恋?

「ねぇ、お兄ちゃん……」


「ん? なんだ?」


 夕飯を済ませてソファーでくつろいでいると、美羽がどこか緊張した面持ちで声をかけてきた。

 なにかを決意したような、ただならぬ雰囲気に、思わず俺は身構える。


「今度の休み、買い物に付き合ってよ」


 けれど、美羽の口から出たのは、予想に反して“買い物に付き合ってほしい”という言葉だった。


「今度の休みって言ったら、ゴールデンウィークか……」


「一緒に行くの……嫌?」


 今まで、美羽と一緒に出かけたことなんてほとんどなかった。

 今日の放課後、一緒に寄り道したのだって初めてだ。


 やっぱり、あの日、互いに気持ちを打ち明け合ってから何かが変わったのだろう。

 美羽も、今までできなかった“兄妹の時間”を作ろうとしてくれているのかもしれない。


 その気持ちが嬉しくて、俺は自然と笑顔になった。


「いや、そんなことない。一緒に行こう! 美羽と買い物に行くの、初めてだし楽しそうだ」


 その瞬間、強ばっていた美羽の表情がパッと明るくなり、嬉しそうに頬を染める。

 うん、やっぱり美羽にはこの笑顔が一番似合う。


「うん! そうと決まったら予定考えておかなくちゃ!」


「……なにも決めてなかったのに、買い物に行くつもりだったのか?」


「そうだよ? 目的がなかったら買い物に行っちゃダメ?」


「いや、別にダメじゃない。俺は基本的に目的がないと行かないタイプだから、ちょっと不思議でさ」


「よかった! じゃあ荷物持ちよろしくね?」


 俺は自分の二の腕を軽く叩き、キリッとした顔で言う。


「陰キャオタクの力、舐めんなよ。そんなに持てないからな?」


「誇らしげに言うところじゃないから!」


 美羽がクスクスと笑う。

 初めての兄妹二人きりの休日ショッピング。胸の奥に、優しい温かさが広がっていった。

 だけど、その時一度変に心臓が跳ねて、息が一瞬しずらくなった。


 俺はそれに首を傾げる。

 体調が悪いとかじゃない、その感覚は、最近どこかで味わった気がするけれど、思い出せない。


 ただ不思議と、美羽から目が離せなかった。


※※※


 あーもう、本当に恥ずかしかった……!

 自分の部屋で、今日一日のことを思い出しながら、火照った顔を枕に埋める。


 お兄ちゃんと怜奈が新入生歓迎祭の委員に立候補した瞬間は、本当に驚いた。

 二人が授業中に手紙をやり取りしたり、私に隠れて家でこそこそメッセージを送り合っているのは知っている。


 しかも、あんなに息ぴったりに同時に手を上げるなんて……絶対示し合わせたでしょ!

 とにかく、お兄ちゃんと怜奈が二人で委員をやるなんてことにだけは、阻止したかったから私も「どうしよう、立候補しようかな」って迷っていた。


 その時だった、今まで誰も立候補しなかったのに、男子たちまで次々と手を上げだして、余計に驚いた。 


 これで上手く、お兄ちゃんと怜奈が委員になるのだけは防げれば、なんて思ってたけど、そんな願いは一瞬で砕かれた。

 怜奈の機転で、男子たちはあっさり手玉に取られ、結局二人が委員に決まってしまったのだ。


 むむ……怜奈も、お兄ちゃんとの時間を作るためなら手段を選ばなくなってきてる!


 だから、私ももう手段を選んでいられなかった。

 お兄ちゃんが怜奈とデートした時と同じように、放課後デートで“嬉しさ”を上書きしようと思ったのだ。


 家の外でお兄ちゃんと過ごすのは、正直少し不安だった。

 学校で関わると恥ずかしくて、つい冷たくしちゃうから。

 でも、学校の外なら少しは素直になれる気がした。

 不安はあった、だけどそれ以上に“兄妹であること”がバレるかもしれないスリルもあって、ドキドキして楽しかった。


 カフェから出た後も、ずっと楽しかった。

 初めてのデートは怜奈に先を越されたけど、“制服デート”は私が初めてだよね?


 制服姿で並んで帰る家までの道。

 思えば、二人で横に並んで歩くなんて、今までなかったかもしれない。


 家族になりたての頃、私はお兄ちゃんを拒絶していた。

 そのせいで、よく知らないまま“家族”の時間が過ぎてしまったのが、少し寂しい。


 でも、今日手を繋いだ瞬間、その寂しさが少しだけ埋まった気がした。

 家族として過ごした時間は短い。私が心を開くのが遅かったのもあるけど、すぐに“家族”じゃなくて“一人の男の子”として好きになってしまったのも原因のひとつ。


 でも今日、家の外でお兄ちゃんに甘えられたのが本当に嬉しかった。

 またこんな風に一緒に出かけたい。


 たまたま今日は、家にいる時みたいに素直に甘えられただけかもしれない。

 また外に出たら、ツンツンした態度に戻るかもしれない。

 けれど、このままじゃダメだ。

 お兄ちゃんに“女の子”として見てもらうには、今までの日常を変えないといけない!


 だから私は、勇気を振り絞って休日の買い物に誘った。

 その時、お兄ちゃんが一瞬だけ目を見開いて固まったから、正直焦った。


 怜奈という好きな子がいるのに、他の女の子と出かけるのは嫌だったかな……って。


 けれど、お兄ちゃんはふっと笑って「一緒に行こう」って言ってくれた。


 デートOK!? しかも「楽しみ」って言ってたよね!?

 間違いない! お兄ちゃんの中で、私への気持ちも確実に大きくなってる!

 怜奈との距離が縮んでるってことも、しっかり実感できた!


 よーし、今度の休みはお兄ちゃんをドキッとさせるために、おしゃれ完璧に決めていかないと!

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