表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校デビューした俺。学校一の美少女を狙うはずが、クラスでは犬猿なのに家では甘々な義妹が邪魔してきて気持ちが揺れてます  作者: 久遠遼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/18

12五分の沈黙と、妹の勝利宣言(怜奈&美羽)

 私はスマホを手に取っては、また机に置く――その繰り返しをしていた。

 若松くんと映画を観て、スタバで話したあと、私たちはすぐに別れた。

 本当は、もっと話していたかった。けれど、若松くんはそういう雰囲気じゃなくて。もし私だけが名残惜しがっているのだとしたら、無理に引き留めるのは違う気がした。


 思い返すと、胸の奥がちくっと痛んだ。

 それは一瞬のことだったけれど、気づけばその小さな痛みが、私の背中を押していた。


 やっぱり、メッセージを送りたい!


 そう思ってスマホに向かってまっすぐ手を伸ばす。

 でも、自分から男の子にメッセージを送るのは初めてで、何を送ればいいのか分からない。

 何度も文章を打っては消して、ようやく決めた。


 ――今日は楽しかったよ。ありがとう。


 それだけ。

 たった一文なのに、送信ボタンを押した瞬間、息を詰めるほど緊張した。

 胸の中に、少し誇らしいような達成感が広がる。


 返事を待つ。

 でも、なかなか通知が来ない。時計を見ると、まだ一分しか経っていない。

 もう一度見ても、三分。まるで時間が止まってしまったみたいだった。


「……遅いなぁ」


 もったいぶられている気がして、ついスマホの画面をつつく。

 そんな時、ようやくスマホが震えた。若松くんからの返信は、私がメッセージを送信してから五分。

 ほんの数分なのに、まるで永遠に感じた。


 ――こっちこそ楽しかったよ。ありがとう。もっと語りたかった。またミステリーの話しよう!


 メッセージのあとに添えられたのは、まるまるとした猫が親指を立ててキメ顔をしているスタンプ。

 シンプルで、まっすぐで、どこか男の子らしい。

 若松くんも、もっと話したかったんだと分かると、胸の奥がくすぐったかった。


 なんだか、落ち着かなかったから、それを紛らわすためにベッドにうつ伏せに転がる。


 そのときふと、思い出す。

 美羽は、どうしてあんなにも若松くんに冷たいのだろう?


 まるで、私と若松くんが話さないように間に入ってくるように見える。

 気になって聞いてみたけど、「そんなことないよ、嫌ってもいないし」と、どこか歯切れの悪い答えだった。


 中学からの親友だけど、あんな美羽は初めて見る。

 彼女は普段、女の子とはよく話すけど、男の子には当たり障りなく、一定の距離を置くタイプ。

 邪険にも、特別親しくもならない――それが美羽らしさだった。


 なのに、若松くんに対してだけは明らかに違う。

 理由は分からない。ただ、その違和感だけが心に残った。


「若松くん……あんなにいい人なのに」


 自分でも驚くほど自然に、その言葉がこぼれた。

 その瞬間、胸の奥にあったちくりとした痛みが、少しだけやわらぐ。


 美羽も、ちゃんと話せば分かるはず。

 二人が仲良くなってくれたらいいな。


 今日の疲れもあって、私の意識はそのまま沈んでいった。


 ※※※


 勝利! 勝利だよ!!

 寝る前の時間、私はベッドの上でごろごろ転がりながら悶えていた。

 だってお兄ちゃんが「ずっと側にいる」なんて、あんな凛々しい顔で言うんだもん!

 あんなの、反則でしょっ!!


 尾行がバレたときは本気で終わったと思った。

 誤魔化すこともできなくて、しかもお兄ちゃんに「怜奈と関わるのが嫌なのか?」って問い詰められた瞬間、心臓が止まるかと思った。

 途中までは完璧な作戦だったのに、ほんのちょっとのミスで崩壊して嫌われちゃうかもって、涙が出そうになった。


 でも、そんな私にお兄ちゃんは、真っ直ぐで、優しくて、少し熱を帯びた声で言ってくれた。

 その言葉が、身体全体に温かく広がっていった。


 私を、一人の“女の子”として見てくれてる。

 そう感じた瞬間、胸がいっぱいになって、息が苦しいくらいだった。


 お兄ちゃんが怜奈のことを好きなのは、きっと変わらない。

 でもね。

 あの瞬間、確かに“距離”は縮まった。

 それだけは、間違いない。


「ふふっ……これは、実質勝利だよね」


 枕を抱きしめながら、ひとりでにやける。

 だって今頃、お兄ちゃんの頭の中は、きっと怜奈より、私のことでいっぱいのはずだから!


 これからもどんどんアピールしていく。

 お兄ちゃんの「好き」という気持ちは、全部、私がもらうんだからっ!


 デートの余韻を邪魔するための作戦は、想定以上の成果。

 私はその勝利を祝うように、普段は我慢している夜のお菓子とジュースで小さな祝杯をあげた。


 けれどこの時の私はまだ知らなかった。

 この日、お兄ちゃんが“妹として大切にする”という宣言をしていたことを。

 つまり私の恋は、前進どころか見事に後退していたという残念な事実に気づくのは、もう少し先の話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ