17話
大自然に囲まれたココクロ村の夜空には分厚い雲が垂れ込めており、透き通るような青い夜空や煌めく星々の姿は一切ありませんでした。
寝静まっている小さな村の中で、たった一軒の建物からだけ、煌々とした明かりが漏れ、酔っ払いたちの騒がしい声が響き渡っていました。
「おお! バレル様の器が空いているぞ」
「こりゃあいかん、さあさあ、もう一杯どうぞ」
その宴の中心に座る大司教バレルは、すっかりと酔い潰れていました。この村には娯楽がほとんどないため、飲み食いくらいしかすることがないからです。
彼の周りに侍っているのは教会関係者ばかりでしたが、そこに神聖さなどは微塵も見当たりません。敬虔な信者がこの光景を見れば、誰もが眉を顰めるような醜態ばかりが晒されていました。
もちろん、これが普通だというわけではありません。大司教の中には、質素で慎ましやかな生活を送りながら、教義こそが人々に幸せをもたらすと真剣に考えている立派な聖職者も、少なからず存在しています。
しかし、「大司教の豚」こと、オガアクル・ド・バレルは、当然ながらそんな志を持った聖職者ではありませんでした。
彼は誰よりも金と権力を望み、それを手にするための手段として、この職を選んだに過ぎない男だったからです。
「おお! ブリリアントポークの串焼きが来ましたよ、大司教様」
「これは25年物のトアーメワインです。上物ですよ、これは」
時間が経つごとに酒は回り、顔を真っ赤にした男たちは、もはや抱きつくような格好でバレルに寄り添っていました。
「もういい! 私は小便に行ってくる」
バレルが声を張り上げました。
「小便ですか、それなら俺も」
「俺も丁度行きたかったところです」
「私も一緒に行きます」
ほとんどの男たちが一斉に立ち上がりました。
「ついてくるな! 小便くらい一人で行けるわ!」
「しかし、本当に丁度、小便に行きたくなったんですよ」
「俺もです、本当です」
「黙れ! ついてきたら首を刎ねるぞ」
男たちは、バレルが本気で苛立っていることに、ようやく気が付きました。冷え切った宴会場の中で、バレルがのそりと立ち上がります。
「全く、なんなんだこれは。宴会に女が一人もいないとは世も末だ」
壁に手をつきながら、ふらふらの足取りで外へ向かいます。
当初の予定では村の「綺麗どころ」をここに呼ぶ算段だったのですが、女性たちに露骨に嫌な顔をされた上に、バレルの目に留まる女もいませんでした。
その結果、このように男だらけのむさ苦しい宴会となっていたのです。
ぶつぶつと文句を言いながらドアを開けると、夜の冷たい風が強く吹きつけ、熱くなったバレルの顔を冷ましました。
「良い風じゃないか」
苛立っていたバレルの表情が、少し和らぎました。
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