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(第九章 走馬灯のように駆け巡る思い出)

就職したら、ノルマや接待、異業種交流などの人脈作りに奮闘し、目の前にある問題点の解決に追われ、あっという間に定年退職の年を迎えてしまった。

時が経つのは本当に早い。結婚して子供のいる友人たちは、子供たちの成長と共に過ぎていく年月をリアルに感じることが出来るだろうが、独身だといつまでも学生気分。誰に気を使うことなく見たいテレビを見ることが出来る。お風呂も食事も寝る時間も、誰にも命令されることはない。

一時期、同棲した恋人は女房気取りで、3ヶ月も一緒にいたら面倒臭くなった。たぶん、ひとり暮らしが長かったため、他人にプライベートな時間を邪魔されたくなかったのだ。他の人に気を使って見たいテレビも我慢。行きたい所も相手に断って、気まずい思いをしながら行かなければならないとか、小遣いを決められて、将来のためだと買いたいものも買えず、食べたいものも諦めなければならない生活なんて、まっぴらごめん。

結婚が檻に入れられた動物のような不自由なもののように感じられた。結婚した友人たちも幸せそうには見えなかったし、奥さんに内緒で不倫をしたり、若い女の子に入れ込んだりしている姿を見ていると、結婚は不自由でつまらないもののような気がした。

子供も好きではなかった。一人っ子だったので、大人の中で大きくなった。親戚にも自分より小さな子供がいなかったので、街で泣き叫んだり言うことのきかない幼い子を見るたびに、自分には育てられる自信がないと考えていた。

一人暮らしは寂しいと言う人がいるが、ずっと一人で自由に生きてきたので、今さら誰かと一緒に住むメリットを見つけられなかった。

とはいえ、会社に行く必要が無くなると、友人とか親戚とか仲間とか、コミュニティがどこにもないのに驚いた。どこかに属さなければ、いざ自分に何かあっても誰にも気づかれない。

スポーツジムや整体、男の料理教室などという習い事や、リタイアした人が集まるボランティア、地域のお祭りなどの役などもやってみた。今さら仕事といっても、コンビニか駐車場や工事現場での車の誘導か、マンションの管理人か。条件の悪い仕事しかなかった。

この年で、まだ働かなければならないのか?少ないながら退職金や親が遺してくれたお金で、当分は贅沢さえしなければ生きて行ける。何もしないで、ただテレビを見たりゲームやインターネットをしていたら、あっという間に一日は過ぎていく。

何もこれといってしていなくても、誰ともしゃべらず、社会の中で役にも立たなくても、誰の迷惑にもならず、こうやって日々は何事もなく過ぎていくのだろうか?無性に孤独でいたたまれなくなった。

将来、身寄りもなく面倒を見てくれる人もいない。でも、どうにかなる。今までだってどうにかなった。ありもしない未来への不安に押し潰されて悲嘆に暮れていても仕方がない。

そして、今まで届いても行かなかった同窓会に行くために、故郷神戸にいる。束の間、あの頃の青春の思い出に浸ると、余計に今の自分がみじめで情けなかった。昔の自分は自由奔放に人生を楽しんでいた。

戻れるだろうか?いや、新たな世界へ旅立てるのだろうか?永遠のマドンナ、小林との出会いは?

青春の日々を共にした友人たちとの再会には、きっと何か意味があるのだと期待したい。


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