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花と散るならこの場所で〜王都に散った花は、再び咲く〜  作者: ヒトガタナリ
第一章 幼児期
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第六話 小さな炎、大きな影

ユリウスは俺に冷たい視線で刺したまま押し黙っている。

そんな目をしないで欲しい。まだ、3歳だぞ?


「兄様、何故そんなに黙っているのですか?」

ジークは首を傾げる

ジークの目にはただただ疑問以外は感じられない。無邪気な少年の目をしている。


「ジーク、僕は……ただ、フィーマが賢いと思っただけだよ」

ユリウスはそう答えたが何か言いたげだ。


――この人には何が見えているのだろうか?


「ユリウス、ジーク、朝食が冷めますよ」

母――ロザリアが柔らかく遮る。



「アルベルト、今日は何処か散歩に行きませんか?」

母は私を見てと言わんばかりに父に言い寄る。

計算か。それとも本心か。

王族の結婚に恋愛など、期待する方が愚かだ。


「わかった。ロザリア。そうだな、朝食後に軽く行くとするか。」

ただただ父は無愛想に答えた。


「はい!アルベルト!楽しみにしておきますね」

母は笑顔で父の方を見ている。

いつもの蝋人形のような笑顔ではなく、本当に笑っているように見えた。


―――


父と母はダイニングから二人でくっつきながら出ていった。母は恍惚の表情をしていた。



朝食会もとい社長面接も終わりひと段落つこうとしていた。

が、俄然ユリウスの視線は俺を刺したままだ。


「ユリウスおにいさま!なにかおはなししませんか?」

俺はユリウスにとって悪なのか否かを見極めるため、『お話』という手段で聞き出そうと試みる。


「いいよ、フィーマ。何についてだい?」

ユリウスは優しそうに、だが真面目にセラフィマと向き合っている。


「うーんと、ユリウスおにいさまは"なにか"にこわがっているようにみえるのです!ですからにいさまはなにがこわいのですか?」 

探りを入れつつ、自分はただの知りたがり屋の3歳ですよーという感じでユリウスに聞く。


ユリウスは目を細めた。

「怖いものか……沢山ある。」


短い沈黙。だが、空気は重い。

「一つは魔法だな。あれは人類が使うには難しすぎる。そして、危険だ。」

ユリウスの目はセラフィマを写している。

それは、セラフィマが生誕祭で見せた太陽のような閃光が原因か、はたまたさっきの会話に起因するのか。

どちらにしても俺はわからない。


ユリウスは続ける。

「そして――最も恐怖すべきものは才能だ。俺は才能があると自負していたが自分以上を見るとやはり怖い。才能は与えられるものも多いが、壊すものも多い。フィーマこれだけは覚えておきなさい」

ユリウスは優しい声色で言う。

だが、向けられている主はセラフィマではないように感じる。


自分以上の才能とは恐らく俺のことだろう。やはりこの身体には計り知れない"なにか"がある。

だが俺にはその"なにか"はわからない――。


―――


「兄様のパン食べないのなら頂いてもよろしいですか?」

その目には悪意はない。ただ、“当然”という確信だけがあった。

それと同時に俺は、ジークが置いてけぼりになっていたことを思い出す。


「いいよ。ジーク」

――優しい声色ではあるが、何かが違う。

何が違うのだろう?


「ジークはこの後は何をするのだい?よかったら剣術を一緒にやらないかい?稽古をつけてやる」

ユリウスはジークに向かって笑顔とは言えないが真顔とも言えないなんとも言えない顔で言った。


「はい!兄様!ありがとうございます!」

ジークはテーブルの下でバタバタと足を揺らしはしゃいでいる。


「ジーク、お行儀が悪いよ」

ネジを締めるように、鍵をかけるようにジークに言い放つ。


ジークも

「はい兄様!」

そう答え、朝食会は終わった。


―――


「フィーマ様、今日は何をしましょう?」

リリアが問う。それは何も企んでいない目だった。

こう言うのが欲しかったんだよ!

だいたいさっきまでのはなんなんだよ!

家族間で探り合いだなんて…そんなの家族ではないだろ。ふぅ。こんなもんにしておこう。


俺は即座に答える。

「今日は太陽魔法についてでお願いします」


「はぁ、フィーマ様何度も何度もお伝えしていますがそれだけはダメです。」


「どうしても無理ですか?」

俺は目をキュルキュルさせながら最大限の可愛さを出す。

中身がおっさんだと知ったらリリアはどう思うのだろうか?


「フィーマ様、それなら今日は火炎魔法についてではいかがでしょうか?太陽魔法よりも使いやすく、実用的です。現に私もよく使いますし」

よく使う???

まぁ、それは置いておいて「太陽魔法は全ての魔法の祖である。」そう建国記に記されているほどにこの国にとって太陽魔法は重要視されているのだ。

だから他の魔法を学ぶのは当然のことである。


「わかりました。リリア。今日は火炎魔法についての授業お願いします」

俺たちは教本を片手に演習場へ向かう。


―――


リリアが授業を始める。

「フィーマ様、火炎魔法は全ての魔法と同じくイメージが大切です。まず指先から炎を出せるようにしましょう」

リリアの手のひらには俺が知る表現法的にはヒトダマサイズの火が乗っていた。

すごくかっこいい。


まず、適当に俺はイメージをする。

指先に血液を集約させてそれを空中に爆散させるように……よし!

できる。


手の先からマッチ棒ほどの火がついた。

うん。なんか違う。敵と戦うとか以前の問題だ。圧倒的火力不足。何もできないガキだと思い知らされる。

だが、成功は成功だ。


「フィーマ様。流石です!身体中の魔力を手のひらに一点集中させるのです。そのあと、その魔力にイメージを届けてください」

そう言えば詠唱とかはないのだろうか?

リリアがやってないからないものだと思っていたが、本当はあるのかもしれない。

まぁ.どうだって良い。


俺は手のひらに血液を媒体として魔力を送る。

よしきた。それに炎が出るイメージ。


その瞬間。


チャプチャプどヒトダマサイズの水玉が落ちた。

なんでこうなるのだろう?

不思議だ。


だが俺は即座に仮説を立てる。


もしかしたら、イメージの中に不純物を入れると他の魔法になってしまうのでは?


今度はイメージに何も遮らないように全集中する。




ボワッ


成功だ!


「やりましたね。フィーマ様」

リリアが褒めてくれている。単純に嬉しい。

褒められることはやはりいいことだな。


もう一度同じように魔法を放つ。

ボワッ、と炎が弾ける。

先ほどより明らかに大きい。

熱量も、密度も違う。


「……フィーマ様」

リリアの声が一瞬、揺れた。

その時、俺は気づいた。


炎の中心が――白い。


赤でも橙でもない。

ほんの一瞬だけ、太陽のような白。


その刹那、視界が暗転する。


最後に浮かんだのは、

朝の食卓で俺を見ていたユリウスの目だった。


――やはり、壊すのは才能の方か。


闇に沈みながら、そんな声が聞こえた気がした。





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