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夜に灯を、魔法に祈りを  作者: 佐藤飴子
第一章 花に露を
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午後、眠りに落ちて

 お昼休みが終わってからどれぐらい経ったのだろう。学院の中で一番のお気に入りの場所を思い描きながら小道を歩く。小道と言っても細い。靴の裏に背の低い草の感触がして、かさ、と音がする。踏んでも気にせず伸びていくのだから、植物はすごいと思う。

 太陽が南の空から少しずつ西に向かうように、のんびり屋さんな温かい風が頬を掠めた。

 風の行先を視線で追いかけると、雲一つない空だった。のっぺりしているようでどこまでも広がっている。水色の絵の具を均一に綺麗に塗ったような。水色って、晴れた日の海の水の色って意味なのに、空と同じ色だなんて不思議。それとも、空が晴れ渡っているから海がご機嫌なのかな。

 春の暖かな空気の中ご機嫌に歩く。でも海の色ってよく見ると青いと思う。水色なのに水の色じゃない、海なのに水色じゃない。不思議。楽しい。うーん、空って何色なんだろう。


 わたし、この時間が一番好き。

 静かで、暖かくて、どうでもいいこと考えて。


 歩き続けると少しづつ坂になっていく。重い足をゆるゆると持ち上げながら目的地に向かっていく。暖かかったのにだんだん暑くなっていき、とうとう我慢できず袖を肘あたりまで捲った。ひんやりとした風が手を掴んでくれたのか、体が少し軽くなる。後少し。

 着いた。

 丘の上に一人で立っている大きな木。緑色と萌黄色の葉をたくさんつけて、かさかさと言っている。わたしの到着を待っていてくれたみたい。箒に乗って飛ぶ時と同じように、体をふわりと宙に浮かせる。程よいところでしっかりと太い枝に止まる。わたし程度の体重じゃびくともしないから大丈夫。

 ゴツゴツとしていてもなめらかな幹に背を預けた。枝がしっかりと入り組んでいるからうたた寝しても落ちたりしない。頼もしい枝をそっと撫でた。これは黄色。


 お気に入りの場所を独占だ。今は授業の時間だから、誰も何も邪魔しにこない。別に授業をしなくたって試験は簡単なのに、どうしてみんなも先生も授業をしたがるんだろう。あんな狭い部屋に何十人も詰めてかわいそうだよ。でも誰もこんなこと言わない。これも不思議。


 目を閉じるといろんな音が聞こえる。全て風が遊んでる音だ。いや、たまに鳥の鳴き声が聞こえる。あとは、どうだろう。ぼんやりと耳を傾けていると、少しづつ聞こえなくなっていった。ほんのりと赤い瞼の裏。暖かい。


 小さな寝息。少女は暖かい空気に包まれながら眠った。

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