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どきどきと自慢の幼なじみ



ゆかは扉の前でふぅっと息をつく。

緊張で体が熱くなってくるのを感じる。


「ゆか、予定変更伝えるだけだからそんなに身構えなくても...」


奏ちゃんが横で肩をぽんと叩いて少し呆れたように笑っている。

自分のクラスはちゃんと自分で伝えなさいって奏ちゃんに言われてしまったからちゃんとしなきゃ!

たくさん甘やかしてくれるけど、こういう時はちゃんと自分でさせるところ昔から変わらない。

ほんとにお兄ちゃんみたいにいつも隣で支えてくれている。


「そうだよね...よしっ!」


私は勇気を振り絞ってその扉を叩いた。

ノックとともに「はーい」と1人の男の子の声が聞こえた。


(あ、この声...)


ゆかはその声を聞くとさっきまでの緊張とは別でまたドキドキと心がはねた。


「あ、成瀬さん!」


部屋から出てきたのは聖くんだった。

眼鏡をかけていつもとなんだか違う様子の彼に鼓動が早くなる。


(ちゃんと話せる聖くんが来て安心してるのに、なんでドキドキが止まらないんだろ)


経験したことの無い現象を不思議に思いつつゆかは口を開く。


「明日の予定変更があったから伝えにきたの」


(声裏返らなかった...よかった)


「そうだったんだ!わざわざありがとう」


やっぱりそこにいるのはいつも通りの優しい聖くんだ。緊張なんてしなくていいはずなのに。

心にもやもやを抱えていたけど、私は手早く予定を伝えることが出来た。


すると


「わ!成瀬さんだ...」

「え!?なんだって!」


その声とともに聖くんの後ろからクラスの男の子たちが集まってきた。


「成瀬さんは委員の仕事で予定変更を知らせに来てくれたんだ」


そう聖くんがみんなに説明する。


「わざわざあの成瀬さんが!」

「「「ありがとう!」」」


ふふっみんなに感謝されちゃった。

私はただ予定を伝えただけなのに。


(そういえば一条くんはいないみたいだな...)


体調に変わりがないか気になってたんだけど、今は部屋にいないようだった。


「よし、じゃあ行くか」


その奏ちゃんの言葉とともに私はその場を立ち去ろうとした。


しかしその時


「おい、立花だけずるいぞ」

「てかいたんだ」


となにやらクラスの子たちに奏ちゃんが引き止められている。


「なんだとお前ら!ずっといただろうが!」


(奏ちゃん楽しそう)


なんだかその状況が面白くてつい笑みがこぼれる。

てかうちのクラスの人とも仲良いんだな〜


「成瀬さん、明日はどうするの?」


奏ちゃんたちのやり取りを見ていたら聖くんが話しかけてくれた。

明日は2日目の自由行動の日だ。

朝から夜ご飯の時間まで時間さえ厳守すれば何をしてもいい。

近くに遊園地があるからそこに行く人が多いみたいだけど...


「明日は琴葉ちゃんとお土産とか見て回る予定だよ!」


私は明日琴葉ちゃんと2人で街を観光する。調べたら食べたいものも買いたいものもたくさん見つかったからすごく楽しみだ。


「そうなんだ!それはたくさん楽しんでね」


「うん!聖くんは?」


「僕もそんな感じかな。クラスのやつらと観光する予定」


てっきり遊園地に行くんだと思ってた。

自由行動中にも会えたりするのかな...


「ゆか、今度こそ行くぞ」


すると奏ちゃんたちのやり取りが終わったみたいで声をかけられる。


「うん!」


私は動き出した奏ちゃんの後を追いかける。


「成瀬さんまたね、おやすみ」


別れ際に聖くんが手を振ってそう言ってくれた。


「おやすみ!」


私の言葉に聖くんが微笑んで扉を閉めた。


そして私は奏ちゃんの横へ急いだ。


(おやすみなんてなんだか不思議...)


「嬉しそうにしやがって...」


私を見て奏ちゃんが何かを呟いた気がした。


「ん?奏ちゃん何か言った?」


奏ちゃんの方を見上げて聞くと、奏ちゃんは「なんでもない」といつもの笑顔で誤魔化された。


(気になるけど大したことじゃなかったのかな?)


そんなことを考えていると私たちはあっという間に女子の部屋に着いた。

私はさっきと同じように扉をノックして、出てきたクラスの子たちに予定変更を無事に伝えることができた。

緊張はもちろんしたけれど、女の子は話しやすかった。みんな優しく聞いてくれたし。

あと奏ちゃんパワーが凄かった。

私の拙い説明を隣でフォローしてくれたし、そんな奏ちゃんにみんなの視線釘付けって感じだった。


(奏ちゃんほんとにモテるんだな〜〜)


奏ちゃんのモテっぷりに感心しつつも、そんな人が幼なじみなんだと自慢したくなるゆかだった。


その後女子部屋ではゆかの相手に奏もありだと大いに盛り上がったのだが、ゆかはもちろん知るはずもない。



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