胸の高鳴り
「「え?」」
私と聖くんは思わずお互いの顔を見合わせる。
きっと今聖くんと私は同じ気持ちだろう。
(この子私の名前言った...よね?聖くんじゃないの!?)
予想外の彼女の言葉に困惑してしまう。
「ゆか先輩はるりが中学の頃から憧れだったんです。先輩は高嶺の花なのに最近男の人と喋っているところを見かけて...」
るりちゃん?はぼろぼろと涙を流しながら話を続ける。
「この雑誌だって先輩モデルの人に抱きしめられてるし、彼氏ができたらどうしようって思ったらいてもたってもいられなくて」
正直怖かったけどるりちゃんの話を聞いたらなんだか怒る気にはなれなかった。
こんなに自分を好いてくれていると知ったら可愛く見えてしまう。
「それにしても追い詰めてるようにしか見えなかったんですけど」
聖くんがるりちゃんに向かって言った。
どうやら聖くんはあまり納得してないみたいだ。
「は?あんたには関係ないでしょ。今はるりとゆか先輩の時間なので彼氏でもないくせにでしゃばらないでください」
「お前な〜〜!」
いつもにこにこしている聖くんがここまで感情を出すなんてるりちゃん恐るべし。
「まぁまぁ落ち着いて」
「先輩!いきなり本当にすみませんでした。今思えば怖かったですよね...少しるり焦っちゃってました」
「うーん、確かにファンの子からの逆襲かと思って怖かったかな...だからこれからは普通に話しかけてね、またお話しよう!」
「う〜やっぱり先輩は天使です!大好きです!」
バッとるりちゃんがわたしに飛びついてきた。
さっきまでの恐怖はもうなく可愛い妹のように感じてくる。
「あ、そうだこの手紙るりの気持ちなんで読んでくださいね!あとこの男と関わるのは嫌なんでやめてくださいね」
そう聖くんの方を指さしながらニコッとるりちゃんは言った。
「それは無理だね、僕たち同じクラスだから。どんまい相田さん」
それに聖くんも笑顔で答える。
その笑顔はいつもの優しい笑顔ではなくブラックなオーラを纏っている。
この2人はどこか似ている気がするけど...仲良くなるのは難しそうだ。
「はー?てかなんで私の名前知ってるの、きもいんですけど」
「僕生徒会長だから生徒のことは把握してるんだ。君のことは要注意人物として認識しておくよ」
「やっぱ男はだめです先輩!狼みたいなものなんです。先輩はずっとそのままでいてください」
「なるべく頑張るよ...?」
なんかこの言葉を聞くといつも男は狼だと言っている双葉を思い出す。
てか双葉と雑誌に載ったこともこの原因になってるわけだしまた双葉に相談しとかなきゃな。
「それじゃあこの辺で失礼します!ストーカーみたいなことしちゃいましたけど、るりのこと嫌いにならないでください...」
「大丈夫だよ!誤解も解けたし!それじゃあまたね」
そう言うとるりちゃんは笑顔で走り去っていった。
「なんだか嵐のような子だったね、成瀬さんは優しすぎるよ怖い思いしたはずなのに許しちゃうなんて」
(いつもの聖くんが戻ってきたみたい。さっきまでのレアな聖くんもまた見たいかも)
「あれだけ真っ直ぐに好きだって言われちゃうと責められないや。てか聖くん来てくれてありがとう!聖くんが来てくれた時すごく安心したよ」
「いやいや!帰り道が一緒でよかったよ。僕も少し取り乱しちゃったところ見せてごめんね」
「それはなんか聖くんの新しい姿見れて嬉しかったよ」
「...幻滅されてないならセーフだよな...?」
「ん?何か言った?」
「ううん!なんでもないよ」
聖はるりの態度に思わず素の自分を出してしまったがどうやらゆかには嫌われてなくてほっとする。
(あれ?聖くんの鞄から見えてるのって...)
「ねぇ聖くんそれって...」
私が指さすと聖くんは慌ててそれを隠した。
「バレちゃったか...実は成瀬さんがいるって聞いて僕も買っちゃってたんだ」
(なんと!聖くんにまで見られちゃってたのか)
聖くんの鞄から少し見えていたのは昨日発売したばかりの雑誌だった。
「後ろ姿だけだったけどすごく綺麗だったよ」
そう言って聖くんは優しい目で微笑んでくれた。
(まただ、また胸がドキドキしてる。聖くんの笑顔を見るとなんか身体が熱くなる気がする、まさか病気?)
これがなんなのかまだ私には分からないけど、最近聖くんと話せるようになって楽しい時間が増えた。
来週は修学旅行だしもっと仲良くなれるかな?
ゆかは自分の気持ちに気づかないまま、来週の修学旅行に期待し胸を弾ませるのであった。




