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ピンチです




私、成瀬結華はたった今ピンチをむかえています。

目の前にいるのはすごく怖い顔をした女の子。

なんなら殺意まで感じられそうな勢いでじりじり迫ってきています。


さっきまで琴葉ちゃんといつも通り帰ってたのに...


放課後、私と琴葉ちゃんはお互い部活に入っていないからいつものように帰ろうとしていた。


「よし、今日はゆかちゃんを家まで送ってくよ!心配だし!」


「え!いいの?」


「何かあったら怖いもん!」


「それは助かる...何かあったらどうしようって思ってたから」


琴葉ちゃんが家まで送り届けてくれると言ってくれたのはほんの10分前のお話。

それなのになぜ私が今1人なのかと言うと...


「ゆかちゃん〜学校に明日までの課題置いてきちゃった...」


「え!それは取りに戻らなきゃ!」


「ごめんね...」


琴葉ちゃんはそう自分の前に手を合わせて謝っている。


「私の家もうそこの道曲がったところだから大丈夫だよ!ここまで送ってくれただけでも心強かった」


「それなら大丈夫かな...?とりあえず私が行ったらダッシュで帰ってね!」


「うん、じゃあまた明日!」


そう言って琴葉ちゃんは今来た道を急ぎ足で戻っていった。

琴葉ちゃんの後ろ姿を見送って前を向いた時、そこには同じ制服を着た女の子が仁王立ちで立っていたのだった。


「えっと?」


「やっと邪魔者が行ったわね...」


そうして今に至る。

もう家はすぐそこだというのに...。

どうやら私が1人になるのを待っていたみたいだ。

ずっと近くにいたはずなのに全然気が付かなかった。


(たぶん双葉のファンの子だよね...?どうしよう逃げられそうにはないかな)


「この雑誌の人先輩ですよね?」


そう言ってその女の子は私と双葉が載っているページを見せる。


「それは...」


「隠さなくても分かります、ずっと先輩のこと見てましたから」


ずっと見てた?まさか双葉の姉だってバレてたとか?


「少し前までは弟さんとしか関わってなかったのに最近男の人といるのをよく見てムカついてたんです。弟さんは血が繋がっている姉弟だからまだ許せてましたけど」


「それはだって友達だし...」


どうやらこの女の子は私が色んな男子と話していることに怒っているらしい。

私が色んな人と話しているのを見て嫌な気持ちになったのかな...

ということはいつも話してくれている3人のファンなのかもしれない。


「そう思ってるのはきっと先輩だけですよ?株が下がるのでいつも話している人達と関わらないでください」


確かに私と話してくれる人達は琴葉ちゃん情報によるとすごくモテる。

株が下がると言われてしまうと何も言い返すことができない。


「私が1番見てたんですよ?なのにこんなチャラチャラした人に取られるなんて...」


そう言って女の子はぎゅっと雑誌を握りしめる。


「だから私決めたんです...今まで何もしなかったからこうなったんだって知ったから」


すごくやばい気がする。

というかやばいよねこれどう考えても。


女の子はじわじわと私に近づいてくる。

私も一歩一歩後ろに下がるが、後ろは壁だ。


ピタッと自分の背中が壁に当たったのを感じた。

完全に追い込まれてしまったのだ。


「これで逃げられませんね?」


そう言ってその女の子は少し不気味な笑顔を見せた。

そして何かを取り出そうとしている。


(まさか刃物とか...?これ絶対逃げられないしどうしたら...)


「成瀬さん!」


もうダメだと思ったそのとき私は突然手を掴まれ、その人に手繰り寄せられた。


「何してるの?どう考えても追い詰められてたけど...」


そこに現れたのは聖くんだった。

聖くんは私の肩にそっと手を乗せ、もう大丈夫と落ち着かせてくれた。

その顔に不思議と胸がドキドキとした。


「それで君は何してたの?」


聖くんはそう言いながら女の子を睨んでいる。

こんなに怒っている聖くんを見るのは初めてだ。


「...」


女の子は俯いて肩を震わせている。

その様子を見ると聖くんのファンだったのかもしれない。


「なんで邪魔するんですか!?」


女の子はぱっと顔を上げそう言った。

その顔は涙で溢れている。


「私が1番先輩のこと見てたのに!急に現れたあんたみたいなのがほんとに嫌なのよ!」


その声が私の胸にズキズキと響く。

彼女の聖くんに対する一途な思いを実感した。

私は自分の気持ちもよく分からない、だからこそ彼女のことが少し羨ましいと感じた。


「私が...私が1番ゆか先輩のこと大好きなのに」


そう言って彼女が取り出したのは刃物ではなく可愛らしい封筒の手紙だった。


「「え?」」



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