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初めて見る顔




「お姉ちゃん!?」


その双葉の声により、一斉にスタジオにいた人たちがこちらを向いた。

うぅ、視線が痛い。てか撮影止めちゃってるけど大丈夫なのかな...。


すると突然


「サプライズ大成功!」


とカメラマンさんが言ってスタジオ内に拍手があがった。

その場にいたみんなが拍手をして笑っていた。


(え、みんな知ってたの?)


「実はスタジオの皆さんにも事前にお知らせして協力してもらってたんだ。この現場の方々は本当に優しくて助かったよ」


「そうだったんですね!暖かい現場なんですね」


なるほど、そういう事だったのかと感心していると、さっきまで驚いて固まっていた双葉がこちらに向かってきた。


「お姉ちゃん!びっくりしたよ...!急に来るなんて思ってなかったから本当に幻だと思った...」


「えへへ石崎さんが連れてきてくれたの!双葉のお仕事してる姿見てみたかったんだ」


「そういう事だったのか!どうりでさっき石崎さんを探していた時いなかったわけだ〜」


「それはごめんよ双葉、僕が外に出ること伝え忘れてた。でもいいサプライズだっただろ?」


「それはもう...!お姉ちゃんが見に来てくれるなんてすごく嬉しい!」


「さっきの双葉めちゃめちゃかっこよかったよ!本当に自慢の弟よ」


そう言うと双葉は少し照れくさそうに笑った。

やっぱり場所は違っても話している時はいつものかわいい双葉だ。

なんだか子犬みたいで撫でてあげたくなる。



「君が双葉くんのお姉さんなんだね」


カメラマンさんがこちらにやってきた。

優しい顔をしていてすごく話しやすそうなおじいちゃんだ。


「実は双葉くんのお姉さんが来るのは知っていたけど、どこにいるかまでは把握してなかったんだ。サプライズは成功したようで何よりだよ」


「今回は協力ありがとうございました。双葉のかっこいい姿が見れて大満足です!」


「本当に双葉くんはこれからも伸び続ける才能があるよ。僕は君にもその才能があるような気がするけどね」


「え!?」


「それはだめです!お姉ちゃんがメディアに出たら大混乱になっちゃう!!」


とすかさず双葉の話を遮ってきた。


まぁ確かに双葉の姉だとバレてしまったら何かと大変そうだ。

というか私にモデルなんて絶対無理だと思うし。

でもカメラマンさんに才能があるなんて言われるのは素直に嬉しい。

なんでそう思ったのかは検討もつかないけど...。


「それなら後ろ姿だけでいいから双葉くんと撮らせてくれないかい?きっといい画になると思うんだ」


「まぁそれなら...お姉ちゃんどう?」


「私なんかが入ってもいいの?こんな機会ないだろうから撮ってもらいたい気持ちもあるけど...」


「じゃあ撮ってもらおう!僕もお姉ちゃんと撮影できるなんて嬉しいし!」


そんな流れで私は人生初のモデルの体験をさせていただくことになった。

それから衣装に着替えたり化粧をしたりして、撮影ブースに移動した。


「双葉緊張するよ...」


「大丈夫!僕に合わせてくれたらいいから!顔とかは写らないしありのままでいいんだよ」


その双葉の姿はいつもの甘えんぼうではなく、すごく頼りになる一人の男性のように感じた。

そこにいるのは紛れもない弟なのにすごくドキドキする。


「それじゃ撮り始めるよ!」


そのかけ声で撮影が始まった。


「お姉ちゃん大好きだよ」


「え...」


すると双葉にそっと抱きしめられた。

抱きしめられるなんてよくあることなのに、きっと今の私の顔は真っ赤になっているだろう。


双葉は本当にすごい。

その姿に自然と引き込まれる、そこにいるのはいつもの弟の姿はなく、しっかりとモデルさんなんだと実感させられる。


「よし、いい感じに撮れたよ!」


「ありがとうございました!」


「それにしても今の双葉くんの表情今までで1番だ。やっぱりお姉さんがいるからかな?」


「大好きな人の隣で撮れるってすごく幸せに感じました。いつも以上に楽しかったですね」


そう双葉が笑って言っていた。


(ちょっと〜恥ずかしいでしょ!)


相変わらずストレートな言葉に少し呆れてしまう。

恥ずかしげもなく姉を大好きだと言えるなんて、弟に好かれているのは嬉しいけど、恥ずかしいからもう少し抑えて欲しいものだ。


少し疲れたので、話している双葉の傍をそっと離れお水を貰いに行く。

スタッフさんがそこに座ってていいですよと言ってくれたので遠慮なく休憩させていただくことにした。


「双葉のお姉さん後ろ姿もすごくよかったですよ!モデルさんになれちゃうぐらいには!」


「わっ林さん!」


後ろから突然林さんに話しかけられてびっくりしてしまった。


「モデルさんは恐れ多いです...!わたしほとんど立ってるだけでしたし」


「さすが姉弟って感じがしましたよ!息があってるというか...」


「…ありがとうございます!」


撮影の間もずっと見ていてくれたみたいだ。


「というか敬語使わなくていいですよ!俺の方が年下だしもっと気軽に接してくれると嬉しいです」


「え!年上だと思ってました!」


「俺双葉と同い年なんです!だから俺のことも弟みたいなもんだと思ってくださ...って痛」


「何やってんだよ和磨、お姉ちゃんにちょっかいかけるなよ」


さっきまでカメラマンさんと話していた双葉がゆかと和磨が話しているところを目撃し、焦って和磨の頭にチョップしにきた。


「え〜だって仲良くなりたいし!」


「はー?お姉ちゃんは僕のものなんで仲良くならなくていい!」


(なんだかこんな双葉も新鮮だなぁ。今日は色んな双葉の顔を見れた気がする...)


モデルをしている双葉も、こうして同い年の子と戯れている双葉も普段ならなかなか見られない。

だから今日色んな双葉を知れてすごく嬉しかった。


「ということでお姉さんまたどこかで会ったら話しましょうね!俺次の仕事があるんでこの辺で失礼します!」


林さんは双葉にも「じゃあな」と軽くちょっかいをかけながら行ってしまった。


まさか林さんが年下で双葉と同い年だったとは...!

すごく大人っぽい雰囲気を纏っていたから絶対年上だと思っていた。


「お姉ちゃん!男と喋っちゃだめでしよ!」


「男って...双葉の友達じゃない」


「それでも男なんだから!」


といつものことながら説教された。

これも何回目だろう...。


「あ、ゆかちゃん!双葉くんとのツーショット来月の雑誌で使われるらしいから楽しみにしててね」


「え、石崎さんほんとですか?」


「カメラマンさんもすごく気に入っていたからね!」


こうして双葉のお仕事潜入は無事終わった。

でもまさかこの写真があんなことを巻き起こすとはこの時の私は思ってもいなかったのだけれど...。



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