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王は謁見の間で一行の到着を待ち侘わびていた。


「苦しゅうない。表を上げい」


ゴロナンが恭うやうやしくお辞儀をして、挨拶を述べる。勿論、鉄具と黄鉄は外へ置いてきた。

謁見の間には、豪華な椅子に座す王のほか、取り巻きの大臣達に近衛兵、他州の領主達が居た。


「偉大なるオーゲン王よ、お納め下され」

「おお…」

「ご覧の通り、黄金の鳥…の骨です。長き間、伝承上の存在でありました黄金の鳥に相違ございません。骨の姿なのには理由が… 実は三日前、領主殿の屋敷に火の鳥が現われたがです」

「なんと」

「領主殿は勇敢にも黄金の鳥を守ろうと、火の鳥に立ち向かわれました。しかし無情にも火の鳥は黄金の鳥を焼き、外へ飛び立ったとのことです。後に残ったのが、この骨だけということでございますにゃ」

「火の鳥が本当に居たのか」

「黄金の鳥が居たのです。火の鳥が居ても不思議ありますまい。わたくしも見ましたきにゃあ… また、赤く輝く火の鳥が夜空の彼方へ消えるのを見たと、領主殿の屋敷に居た者も言うております」

「そうであったか…」


王は残念そうに頷いた。すんなりと信じたのは、王も火の鳥の話を耳にしていたからだ。臣下からの報告によれば、ゴロナンが言うように、多くの者が夜空に燃える鳥のような姿を見たと言う。


「領主殿は体調がまだ良うない為、治療に当ったわたくしが参じた次第です」

「待ちたまえ。これが本物の黄金の鳥の骨だと?証拠はあるのかね?」


王の側に控えていた大臣が目をしかめながら言う。領主達もざわつき始めた。皆、鳥を献上したのが他人なのが面白くないのだ。


「わたくしが駆けつけた時には、もう骨の姿でしたので… ですが、信じるに足りると判断致しました。人の手で作るのは不可能かと」


そう、ゴロナンが言っても、(ざわ)めきは収まらない。大臣も領主達も身を乗り出して、口々に言う。


「ただの鳥の骨に金を塗ったのでは?」

「いや、職人に作らせたのではないか?」

「お疑いにゃらば近くでよくご覧になって下さい」


皆は輿の上の骨に詰め寄った。骨は全身揃っており、一見完璧であるが、よく見ればヒビの入っている所もあれば、欠けている部分もあった。割れて内部の空洞、骨髄の部分が見える所もある。それは何とも美しかった。空洞の内側に向かって針状の金色の小さな結晶が覆っている。骨の表面は(しお)れたように細かな(しわ)が刻まれ、染み込んだように金色に輝いていた。表面に塗っただけではこうはならないだろう。その姿は人の手で作った金属的な磨かれた美しさではなかった。荒々しさのある石のような無骨な美しさだった。


「塗装を疑うなら、表面を削って頂いて結構。鋳造(ちゅうぞう)を疑うなら、同じ物を作れる職人を探して頂いて結構。ただ… 作り物でなかったと証明された時、傷付けた責任を負う覚悟は…当然あるがですにゃ?」


ゴロナンは目を細めて、大臣達にゆっくりと言ってやった。

あら探しをしようと詰め寄った者達は穴が開くほど見てみたが、自分で考えられる作り方では全く同じ物を作れる気がしなかった。それに、手を掛けた挙句、偽物と証明できなかった時は、地位剥奪(はくだつ)や領地返上だけでは済まないかもしれない。唯一無二の存在への対価には、資産など足りないように感じた。自身の全てをかけてまで、他人の鼻を明かしてやろう、という気概のある者はこの場に居なかった。

見終わった者達は先程と打って変わって、人の手では作り出せないくらいの美だの、神の業だの、次々に褒め始めた。ゴロナンはニヤリとした。これで黄金の鳥は死に、その骨が王の元へ捧げられた、という筋書きで騒動が収束するだろう。


「大儀であった。領主は養生せよ」


と、王より見舞いの品がお下りとなることとなった。


「もう一つ、ご報告ですにゃ」


謁見の間を退出する間際、ゴロナンは部屋の中に居る者全てに向かい、言った。


「カグア山の付近で巨大なアメイロオオヤマネコが目撃されたとのことです。アレは動く物はなんでも襲いますゆえ… しばらくは近付かん方がえいですろう」


深々と頭を垂れ、後ろ向きに摺すり足で下がり、扉を閉める。扉の向こうの騒めきに目を細めて、ゴロナンは改めてニヤリとした。


「ゴロナンさん!」


城門で待っていたネオは、帰還したゴロナンに駆け寄る。表情より、鳥の骨の献上は上手くいったようだと、ネオと一緒に待っていたダヒルは察した。


「さて、領主殿には後で報告するとして… 首を長くして待ちゆう、知りたがりじじいの所へ行くとするかにゃあ」


ゴロナンは二人に左目でパチリとウィンクを飛ばした。誰が聞いているか分からない所では出来ない話をするのだ。まだ圧の強いザキハに慣れていないダヒルは、あの鋭い目付きを思い出して、溜息を吐いた。

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