黄金の鳥献上
三日後の朝、王都の大通りにはいつも以上に人が溢れていた。
ここしばらく話題の中心となっていた、あの黄金の鳥が王へ献上される。城までの道すがら、鳥を掲げて練り歩くらしい。黄金の鳥を皆一目見たいのだ。王都の内外から、仕事をそっちのけで、早くから良い場所を陣取ろうと人が集まっていた。三番街と二番街では屋台が金儲けの匂いを嗅ぎ付けて、いつもに増して張り切っている。
王都の門が開く。鳴り響く甲高いラッパの音。屋根で休んでいた鳥は飛び立ち、通りに溢れた群衆は期待の声を上げる。一行の先頭は城の警邏隊。警邏隊に守らせていることから、王の期待度が計り知れた。
濃紺の隊服が朝の光を吸い込み、影を深めて動く。そして、華やかな白い衣装を身に着けた踊り子が行列を盛り上げている。その後ろで、輿に乗った金色に輝くもの。チカチカと光の欠片が舞う姿は後ろの方からもよく見えた。
「あれが黄金の鳥…!」
「いや…あれは…」
「どけ!オラァ!」
目をひん剥いた大柄な男が人垣を押し退けて割り込む。力づくで無理矢理体を捻じ込み、前へ出て来る。以前教会で争っていた黄金の鳥に魅入られた一人だった。神父に治療されても、黄金の鳥を欲しい気持ちは数日すれば元通り。手に入れることを諦めていなかった。城までのお披露目が絶好の機会だ、奪ってやろうと思っていたのだ。それなのに。
「どういう事だ…!」
男は信じられなかった。行列の中心で担がれているのは、黄金に輝く鳥の骨だった。
鳥を強奪しようと考えていたのは、その男だけではなかった。同じように目の色を変えた男達がワラワラと前に出てこようとする。群衆は列を崩し、騒ぎが広がっていく。警邏隊が鎮めようと動くが、全く収まらない。
「ちょっと落ち着いた方がえいにゃあ」
踊り子の後ろから飛び出したのは白い洒落た服を纏ったゴロナンだった。争い合う人の間を縫うように踊る。カァンカァンと手に持ったかぎ針のような鉄具と黄鉄の塊を打ち鳴らして。鉄具と黄鉄が音を立ててぶつかる度、眩い光の粒がチカチカと舞う。
「あつッ!」
ゴロナンが打ち出す光は火花だった。降り注ぐ火花に触れた男達は、チクリとした熱を感じた後、急にポカンとする。呆然とする者、力が抜けた様に崩れ落ちる者、皆一様に「え?」という顔をしていた。暴走する男達を止めようとしていた警邏隊は当惑したが、当人達はもっと理解できないでいた。
頭の中を支配していた黄金の鳥への強い所有欲がサッパリと消えていたのだ。
急に大人しくなった男達。警邏隊は人の群れに男達を戻し、他の者へも下がる様に注意すると、元のように大通りには通り道が出来た。ゴロナンは変わらず火花を撒きながらクルクルと踊っている。
ネオも列の中に居た。鳥の輿の後方で同じように黄鉄を打ち、火花を撒いて行進していた。ゴロナンのように達者に踊れないので、歩くだけだった。城へ続く大通りには両脇に人の群れが縁取るようにずっと続いている。鳥献上の一行が近付くと、誰かが騒いで火花を浴び、大人しくなって道を空ける。これの繰り返しだった。
こうして一行は無事に城まで辿り着いた。派手な一団はゴロナンを先頭に、最低限の人数で城内へ行く。踊り子たちは観衆向けの演出で、警備の厳しい城の中へ連れて行く必要はない。ネオとダヒルも城の門の側で待った。きっとゴロナンがうまくやってくれる筈だ。




