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「し、知らん…!知らん知らん!何が火の鳥だ。お、黄金の鳥は…王に献上すると言ったのだぞ!」


自分の記憶を信じたくなくて、領主は感情に任せて叫んだ。ゴロナンは落ち着かせるように領主の背をさすりながら諭すように言う。


「領主殿。黄金の鳥、王様に献上する気、無かったですろう」

「……!」

「急に惜しゅうなったのでは?」

「そ…それは…」

「我々も証言致します。屋敷の全員が火の鳥のことを証言してくれるでしょう。堂々と、黄金の鳥は居なくなったとおっしゃればよろしいではにゃいですか」

「それでは… 私の立場が…… ほら吹きだと、いい笑いものにされる…」


世間体と面子を気にし、項垂(うなだ)れる領主。

ダヒルは呆れた。何を言っているのだと思った。領主は覚えている。黄金の鳥を手放す気などなかったことを。耐えきれずに、ダヒルは口を挟んだ。


「まだ黄金の鳥が手元に居たとして、どうするつもりだったんです?」

「………」


領主は黙った。目が泳いでいる。答えることができないのだろう。だが、最後は観念するようにぼそりと呟いた。


「…考えはなかった。ただ、渡さないで済む事を考えるより、渡してはなるものか、という気持ちが膨らんで……」


そこまで言って、領主は助けを求めるかのように三人を見た。


「何とか… 何とか出来ないか?し、信用を失うわけにはいかぬ… 断じて、言い訳だけで済ませる訳には…」

「はてさて、何とか出来ますかねえ。骨一欠片すら残さなかったというのに… 贋物(がんぶつ)を用立てるわけにもいかんですしにゃあ…」


ゴロナンがポリポリと(ほほ)()きながら考えていると、ネオがずいと前に出た。


「ございます。こちらの願いを聞き入れていただければ…」

「願いだと?」

「用意しなければならない物が多くございます。また、献上の際には、我々の同行をお許し下さい。

…それと、お屋敷で騒動を起こした者達、全員不問に…罪に問わないことをご承諾頂けますか」

「……なんだと!」


領主は顔を歪めた。条件を出すなど信じられない、といった様子だった。


「必要な物は揃えよう。ゴロナン君が居るのなら、同行も問題ない。だが、不問とは…受け入れられん。屋敷が…この有様なんだぞ。この部屋がこんなに滅茶苦茶なんだ。下の階も酷いことになっておるのだろう!?……許すものか、断じて」

「お言葉ですが、この部屋には私たち以外、誰も入っておりません。全て貴方がやった事です」

「……それは……いや、だが…………」


領主の目線が再び泳ぎだした。扉を吹き飛ばしたのは魅入られた屋敷の者達だが、ネオは堂々と部屋の惨状は領主がやったのだと言い張った。領主は記憶を辿っているのか、黙り込んで、バツの悪そうな顔をしている。


「領主様と同じく、皆混乱しています。ですが、直に恐れることになりましょう。力の限り暴れ、屋敷を壊し、人を傷付けた自分の行いを。ここで暴れた人達は押し入った者ばかりじゃない。屋敷の方達も等しく、全員を裁くつもりですか」

「できねぇよなぁ… 世間体が…」


ダヒルは小さく呟いた。領主の答えを聞かずとも分かったので、つい出てしまった。全員を裁くとなると、あまりに体裁が悪い。世間は何事かと思うだろう。強盗と同じように内部の者達からも刃を向けられた領主を、不信に思うだろう。全員を罰すれば、たかだか鳥一羽のために、使用人から刃向われるような人物だと思うだろう。だが、全員を裁かなければ、今度は罪人となった者達が黙ってはいない。屋敷中の者達でやった。皆同罪、あの屋敷は罪人の集まりだと、喚き続けるだろう。

面子を気にする領主にはできる筈がない。領主は力なく項垂れた。

そんな領主にネオは言う。


「領主様、そう悲観する必要はございません。先程も申したように、皆混乱しております。全てを黄金の鳥の魅力と、それを焼き尽くした火の鳥のせいだと言えば、貴方は民から称えられるではないですか」

「……称えられるだと?そんな訳なかろう!」

「多少の無理がある筋書きでも、貴方が言えば誰も反論はしない筈です。悪者になりたい者などおりません。誰かの、何かの所為で起きてしまった事だ… 罪の意識を消すため、都合の良い言葉に皆飛び付く筈です」


先程の貴方のように、という台詞をネオは飲み込んだ。


「ですが、それは忘れさせた訳ではない。皆覚えています。そして思うでしょう。暴れて屋敷をめちゃくちゃにして、重い罰を受けるところを寛大な計らいを貰い、多大なる恩情を受けたと」

「いや、しかし… 屋敷の損害に釣り合うとは思えないが…」

「いいえ」


ネオはきっぱりと言う。


「意識の奥で、罪の意識は居座り続けます。屋敷の復興に力を貸して欲しい、と領主様がちょっとお願いするだけで、これまで以上に使えてくれるでしょう。彼らは必ず支払い続けてくれます。代償に見合った、衆望という対価を」

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