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「やった...のか…?黄金の鳥はどうなったんだ?」

「金ピカ鳥は燃え尽きたみたいやにゃ。綺麗さっぱり」

「また何か壊したら目覚めるとかないんすか?」

「うむ、封印やのうて、消滅やにゃ。嫌な臭いが全然せん」


ゴロナンは焦げ跡に鼻を近付けてふんふんとしながら言った。


「昔は大仕掛けでも封印だったんすよね。今回は消滅したんすか?俺には違いが分かりませんよ」

「昔は何かが足りんかったがやろうねぇ。自然の力か、人の力か…

ようやったにゃあ、ネオ君。さあ、もうちょっとだけ頑張れるかえ?」

「はい…」


ネオは汗だくで酷く疲れた顔をしていた。

油断はできなかった。ワザワイノツカイを倒す魔法が上手くいくかどうかなど分からなかった。今回はワザワイノツカイに直接命を奪われる恐怖はなかったが、失敗すれば怒り狂った暴徒に殺されていただろう。

緊張の糸をほどき、大きく息を吸うと、ネオは黄鉄を打ち鳴らす。パライアの名を呼びながら。

火花は再び鳥の姿に燃え上がった。明々と燃える火の鳥は窓を抜けて外へ、星散らばる夜空へ羽ばたいた。ゆったりと屋敷の上を旋回すれば、翼から火の粉がはらはらと舞い散る。煌めく火の粉は屋敷に降り注ぎ、未だ覚めぬ者達の呪いを解いていった。

屋敷に満ちていた熱は狂気から正気へ、怒声は驚嘆へと変わっていく。

人々はしかと見た。赤く燃え盛る美しい火の鳥を。舞い散る火の粉が闇を染め、光の跡を残しながら南の空に消えるのを。


「領主サマ、死んでねぇよな?」


ぐったりと床に転がる領主を見てダヒルは言った。


「ふんふん… 大丈夫、気い失っただけやにゃ。どれ、硬い床は可哀想なき、寝椅子に座らいちゃろうかね」


三人は領主を床から引き上げ、寝椅子に(もた)れさせてやった。程なくして、領主は目を覚ました。


「君たちは何だね… お…黄金の鳥は…?」


黄金の鳥の事は気にしているものの、領主の目から狂気は消えていた。声は弱々しく(かす)れてはいるが、気持ち悪さは感じない。魅了の呪いは解けているようだ。


「我々は騒ぎを聞きつけて来た、王都の魔法学院の者です。…領主殿、お忘れでしょうか?わたくし、ゴロナンですにゃ」

「ああ、そう言えば顔に見覚えが…

……! な、何だね!この有様は…っいたたたたっ!」


領主は体を起こした拍子に全身の(きし)むような痛みを感じ、そして部屋の惨状を見て唖然とした。調度品はひっくり返りバラバラ、扉は破れて粉々。服はヨレヨレで体は(あざ)だらけだ。


「ひとまず手当てを… 酷い顔色ですにゃあ」


お体もさぞ痛いですろう、と言いながらゴロナンは南十字のペンダントを持ち、もったいぶって祈りを捧げる。ゴロナンの体がうっすら輝くと、領主の顔色は段々と良くなっていった。


「黄金の鳥がこの屋敷にいると知った者達と領主様の攻防があったようでして。…しかしここへ現れたのは人だけではにゃく………」

「何だ?早く言い給え…!」

「火の鳥です。火の鳥が現われたのです」

「…火の鳥?」


領主はポカンとし、そして鼻で笑った。


「火の鳥だと? …そんなもの、おるはずなかろう」

「押し入った者達も、この屋敷使えの方達も、そのせいで大混乱となったがです。惨状が物語っておるでしょう」


部屋を見渡しながらゴロナンは説明を続ける。領主と目の合ったネオとダヒルも頷いた。


「領主様をお守りするため、我々は押し入った者達へはここには領主様は居ないと言い、屋敷使えの方達へは争いが起こっている所へ助けに行ってくれるよう頼みました。

しかし、肝心の黄金の鳥ですが… 残念にゃがら、我々が駆けつけた時には…手遅れでした。どうやら火の鳥は天敵だったようです。襲われ、既に燃え尽きておりました。その後火の鳥は南の空に逃げて行きまして…」


ゴロナンは悲しげな表情で、床の焦げ痕を示した。


「そんな……な、何てことだ…」


領主は焦げ痕を見て、折角良くなった顔色を青くし始めた。


「その話が本当だとして、一体誰が信じる?私とて、信じられん。黄金の鳥が燃え尽きたなど… 火の鳥など居るはずが…」

「黄金の鳥が実際に居たのです。火の鳥が居てもおかしくはありませんでしょう。それに、領主殿も火の鳥を見たのではにゃいですか?」


領主は口籠(くちごも)った。鳥の形をした炎を、(かす)かに見たような気がする。しかし、記憶が曖昧だ。

はっきりと記憶していたのはどこまでだっただろうか。今日の明け方、屋敷の近くに黄金の鳥が居たと使用人の誰かが騒いでいた。

そうだ、その後黄金の鳥は屋敷に入ってきて、広間の(はり)で羽を休めているとの話が上がってきた。幸運だ。屋敷の扉と窓を閉めてしまえば、逃げる事は出来まい。方々(ほうぼう)へ捕獲をするよう手配していたあの黄金の鳥が、手に入った。

黄金の鳥を王に献上する。早速伝令の早馬を飛ばした。これで自分には格別な取り計らいがあるだろう。もしかしたら、他の州の統治も任されるかもしれない。

気が付くと、いつの間に来たのか、黄金の鳥が目の前に居た。スッと舞い上がると、我が手にとまった。なんと美しい。なんと優雅な。瞳まで光り輝いているではないか。瞳まで…

なんだか屋敷が騒がしい。

まさか、私の黄金の鳥を盗もうとする不届きものが…

許さん。この鳥は私のものだ。渡してなるものか。皆罪人だ。私から鳥を盗もうとする罪人だ。渡してなるものか。誰にも渡してなるものか。守らなくては。王に献上するのだから…

王に…

王に…?

……………

…この鳥は私のものだ。渡してなるものか…誰にも…

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