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「おうおう、でかしたにゃ!」


ゴロナンは嬉しそうな声を上げ、パッと壁の隙間に入った。ネオも慌ててその背を追う。


「ここは…」


隙間の先は更に狭い通路だった。ネオが入ると、ゴロナンは壁を内から押し戻した。真っ暗になると思いきや、上の方に光が見える。等間隔に灯った幾つもの線のような光。そのおかげでうっすらと通路の形が分かる。三人が一度に入れるような幅はなく、直ぐに上へ向かう階段となっていた。


「隠し通路よ。でかい屋敷には大概あるもんやからにゃあ。この上がやけにやかましいし…」


ゴロナンは鼻先にシワを寄せてフンッと鳴らした。


「古い油みたいなギトギトした匂いがするにゃあ...」


一番前に居たダヒルはゴロナンにホレホレと背をつつかれ、階段を上がる。ネオも二人の後に続いた。

下から見えた細い光は、壁に空いた隙間から漏れているものだった。恐らく、向こう側の部屋の壁に、縦縞の飾り線があるのだろう。その線に沿って、気付かれない程度に細い隙間が開いている。

階段を登りきると、喧騒がネオとダヒルにも聞こえた。微かに震える壁。大勢の人の叫び声、物がぶつかる音が混ざった雑音がくぐもって聞こえる。何だか壁を何枚か隔てたような、距離を感じる聞こえ方だ。壁の向こうはどうなっているのだろうか。ダヒルは壁に顔を当てて目を凝らすが、隙間が細過ぎて、向こう側の様子は覗えない。


「壁のどっかに仕掛けがあるはず...」


囁きながら、しゃがんだゴロナンが壁をサワサワと触りだした。ネオとダヒルもそれに倣う。

ネオの手に何かが触れた。おかしな出っ張りがある。引いてみたが動かない。右に押すとずれる手応えがあった。

そして、壁がズリ…と動いた。


「……!」


向こう側の様子が分からないのに、開いてしまった。しまった、見つかるか…!と三人は身構えたが、部屋の中には誰も居なかった。人だけでは無い。物も無い。


「開けろぉ!開けねぇかぁ!」

「俺の鳥を返しやがれえぇ!」

「何だとテメェ!あれはオレのもんだ…!!」


くぐもった叫び声とドンガンと力任せに叩く音の方を見ると、大きな箪笥や重そうな机で塞がれた、大きな扉があった。それをぶち破らんと、黄金の鳥に魅せられた者達が向こう側から叩いている。部屋の調度品は、扉を固める為に集められていた。

三人は開いた仕掛け口から部屋に出る。仕掛け口は床から腰くらいの高さに開いていた。どうやら、壁掛けの肖像画がずれる仕掛けだったようだ。肖像画は胸を反らした(しか)めっ面の領主の姿が描かれている。


「居る…」


部屋に降りたネオは、嫌な気配を感じる方を向いた。あの、冷たい手で触られたようなぞわりとする感覚。部屋にはもう一つ扉があった。叩かれている扉の対面、部屋の奥。重厚な扉から不快な気配が漏れ出ている。


「こっちか!」


ダヒルはネオの目線を追い、奥の扉に飛び付いた。


「っ…開かねぇ…!」


ギシギシと音がするばかりで、三人で押しても引いても全く動かない。


「こりゃあ、鍵だけじゃねぇな… 多分あっちでガチガチに固めらてっぞ。…そりゃそうか、こっちだってこうなんだから」


ダヒルはガンガンと煩い後方の扉を見た。


「でも何とか鍵だけでも壊せたら…」


ドォオオオンンンンンツッッ……!!!!


ネオの言葉に被せるように、後方から凄まじい音がした。男達のわめき声が途切れ途切れに鮮明になる。扉を押さえつけている机や箪笥がガタガタと揺れた。


「そうやにゃ…!」


ゴロナンはネオとダヒルの背中を押し、隠し通路に押し込んだ。絶えずドンドンと鳴る凄まじい音。二人を押し込んだと同時に扉が破られ、大きな丸太と大勢の暴徒がなだれ込んできた。


「領主ぅ!どこだあぁ!」

「どご隠れやがっだぁ!!」


目を血走らせた者たちに向かい、ゴロナンが扉を指差す。


「黄金の鳥と領主様はあの中にゃ」

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