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「無理くさくね? 地図でもありゃあ… あ」
ダヒルは閃いた顔をした。
「これが地図なんじゃね?この太ってぇコブみたいなのが、カグア山」
ダヒルは八つの点の上にある太い曲線を指した。
「んで、いっちゃん下のみつコブがテッキンコンの鉱山よ。硝子の採石場も連山の…大体、中辺りの山の麓なんだ。だとしたらよ、俺が見付けた建物跡も、この真四角八点の範囲内と言えなくも無い…大分ギリでだけど。だから、この八点内が埋もれた町ってことよ…!」
興奮したダヒルの声にネオも頷く。
「なら、この地図、帯に沿って真っ直ぐ描かれているけど、真上が北じゃあないんだね。北西が真上か」
カグア山と鉱山の位置に合わせて、ネオは帯を左斜めに傾けた。
「ほうほう… で、こん中のどれが神殿なんだ? 全部の点結んだけどよ、まだ鳥は示してくれないですが」
「この点を結んだ形が鳥ってことなんじゃないのかな」
「うーん… 鳥に見えなくもないけどよ、だったらもっと鳥です!って分かりやすい形にしないかね」
「じゃあ、ダヒルは何の為にこの点を結んだ形を作ったんだと思う?」
「そうだな… 地図だったら、この線を結ぶ通りに行ったら辿り着けるってことじゃね?…けっこう行ったり来たりさせられるけど」
「そしたらこの点に当たる目印があるってことだよね。何だろう… 山とか岩かな?」
「大木とか森かもしれないぜ」
「謎を解くのが何十年、何百年後になるかもしれないんだ。大木とか森だったら無くなる可能性があるだろ。目印は絶対に無くならない物じゃないと」
「すいません。そうですね。
でもよ、カグア山の周りってホント何もねぇよ。連山まではだだっ広い荒野があるだけで… 実際に探索したわけじゃねぇから、絶対に無いとは言い切れねぇけど、目印になりそうな山とかデカい岩は、多分無いぜ。
あーもう… もうちょいなのによ。目印さえ分かりゃ、あとは点を結んだ順に追えば、三段目の右端の点がゴールってことだろ」
「今は暗いから余計に確かめようがないな…」
ネオは上を見上げた。東の空も真っ暗だ。夜明けはまだしばらく訪れないだろう。数え切れない星が輝いている。小さな光だが、その光が行く先を照らしてくれればいいのに。そう行く先を…
「そうだ… 星だ…!」
「星?」
「『神は三度曲がり全ての星を巡り』の星は例えじゃなくて、本当に星を表してるんだよ。星なら時が経っても変わらない。これは星座だ。地上の山の地図と掛け合わせた星座。昨日の夜、ダヒルも言ってただろ。『あれが馬に見えるか?棒人形にもほどがある』『俺なら一級星をどーんと九つ繋いでモッセリ座にする』って。見る人によって違う風に捉えるんだ。国によって星座が違うのは自然だと思わない? 星座ならこの形で鳥だと言ってもおかしくない」
「言われてみれば… 確かに」
季節で変わる星もあるが、毎夜輝く星もある。旅人達の道標。星見法に使われる、九つの一級星。
「危ねえな。間違えて行くとこだったぜ」
「鳥が扉を示すなら、嘴の先… 地図でいうところの欠けた星の辺りを示してるよね。木馬座のロトだよ。ロトの下に合うように距離を計算すれば…」
ネオは星尺分儀で西の一級星を見ながら距離を測る。
「気付いたのが夜で良かったよ。星尺分儀も持って来てて助かった」
ついに向かう先が見えた。いつかの時代の誰かが残した謎を解き明かしたのだ。古から変わらず夜空に輝く幾つもの星。その下で、二人はまだ見ぬ世界に踏み込む予感に体の中がじんわりと熱くなるのを感じた。




