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旅立ちの二人

夜明け頃、ダヒルは目を覚ました。村に居た子供の頃から日の出と共に起き、日が傾けば家に帰る、という生活を続けていた。それは工業都市で生活するようになった今でも変わらない。習慣というのは大したもので、染みついた時間の感覚が狂うこと無く体を動かす。

深く眠ったのか、水屋から部屋に戻ってきてから夢は見ていない。ダヒルは長椅子から体を起こすと大きく伸びをした。


「ダヒル、起きてる?」


ネオが仕切り布を潜って応接室へ入ってきた。手にしたお盆からは温かい、芳ばしい匂いが漂っている。

昨日の夜遅く刺繍をしていたのに、ネオはちゃんと寝たのだろうか。


「最高の寝心地だったぜ。ネオは? ぐっすり寝れたか?」

「まあ、いつも通りね」


小さな木の机にパンとスープを並べながらネオは答えた。


「…そうか。うわ、美味そうだなあ!」

「昨日とほぼ一緒だけど」

「だから良いんじゃないの」


昨晩も思ったが、ネオの料理は美味い。祖母のボンジュが料理上手だった。村にいた頃はダヒルも何度かお相伴にあずかったものだ。ボンジュのスープの味に似ている。新鮮な野菜と香辛料の香り。スープは酸味を感じた後に旨味が追いかけてくる。昨晩は肉が無いとぼやいてしまったが、不要だった。ミル麦パンも大変美味であった。今朝のスープには生の香草が盛られている。昨夜よりも煮詰まってトロリとしたスープが、途端に爽やかな口当たりとなる。

ダヒルの母はあまり料理が得意ではなかった。作ってくれるだけ有難いと思っていたが、パンは焼いたそばからカチカチになる。

朝餉後は食器等をダヒルが片付け、荷物もまとめなおした。


「じゃあ、ネオ。世話になったな。色々手がかりも掴めたし… いや、謎がいっぱい残ったままだけど」

「僕も一緒に行くよ」

「え?」


ネオは大きな背負袋と外套を手にしていた。


「昨日の夜、荷造りしといたんだ。餞別もまだ渡して無いしね」

「店はどうするんだよ?」

「しばらくは納期がないから大丈夫。それに間に合わなさそうになったら戻ってくるよ。僕も知りたい。黄金都市があるのか。楽しい事は分かち合おうよ、ダヒル」


そう言ってネオは悪戯っぽく笑った。

ネオの申し出は正直、嬉しかった。昨日のザキハの話を聞くに、自分の思っていた以上に厄介なことが山積みなような気がしたからだ。腰帯の謎など最たる物で、一人では解ける気がしない。


「そうだな、黄金都市も見付けたら分かち合おうぜ!」

「じゃあ、腰帯はダヒルが着けててよ」

「マジかよ。汚したらザキハのじいさんに殺されかねねぇから嫌なんだけど」

「罪深き者じゃなきゃ辿り着けないって書いてるからさ」

「罪深かねぇよ!俺の罪は図々しくお前に世話になってる事くらいだよ」


ダヒルは一人で行こうとしてたし、自分で持って行く予定だったから良いけど、などとブツクサ言いながら腰帯を身に着けた。


「鳥は今どうなってっかな。もしかしてもう誰かに捕まってっかも…」

「王都にも組合(ギルド)の合同屋舎がある。そこで依頼が見られるから行ってみよう」


二人は二番街にある組合の合同屋舎に向かった。黄金の鳥の情報を確認するためだ。

どんな職にも大抵組合があって、生産や物流の均衡を保っている。

専門職に就かない者は組合の職員を目指す事が多い。ネオの両親も組合の職員だ。父は製品商業組合の会計事務、母は素材仲卸組合の受付をしている。

組合は仕事の紹介もしており、大きな都市には出先の窓口が設けられている。王都には、そんな各組合の窓口が一つの建物に集約されている場所がある。合同屋舎と呼ばれる建物だ。

古い物件を利用している為、綺麗ではないが、それなりに広い。外見も煤けた灰色でとても地味だ。


稼業紹介組合窓口の依頼掲示板には様々な依頼が書かれた板が打ち付けられている。黄金の鳥関係の物はあいも変わらず、懸賞金の額を各州の領主が牽制し合っている。未だ捕獲もされていない様子だ。最初の目撃から約ひと月。初めは常識的だった懸賞金も、今では二番街の土地が購入出来る程の値が付いている。また、沸騰しているのは懸賞金ばかりではなかった。

中々捕まらない黄金の鳥を神聖化している人達もちらほら居るという。

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