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「今日は相談したいことがあって。黄金の鳥のことで」
「こいつに聞かせていいのか」
老人はダヒルにじろりと視線を向ける。
「はい。覚悟はあるそうなので。それに、ここへ入れたのでしょう?」
「ふん、厄介事が増えるわ」
ダヒルの頭の中では、この無愛想目力強め爺さんの名前はザキハと言うのか、ネオと知り合いなんて王都も狭いな、ゴロナンさんて誰だ等、一気に情報が駆け巡っていた。しかし、不穏だ。
黄金の鳥の事について二人は何かしら知っているが、それは厄介事で、覚悟が無いと聞いてはいけない様子である。
それに「ここに入れた」というのはどういう意味なのだろう。
「ダヒル、さっきの君の黄金都市の説、話して」
別のことを考えていたダヒルは、ネオに話を振られ、慌てて「黄金の鳥が居たんだから『パライアの火』は実話」説の説明を始めた。
「ええと、黄金の鳥が居るってことは、パライアの火に出てくる滅びた黄金都市もあると思うんすよ。俺、テッキンコンで働いてんすけど、採石場から建物跡が出てきて、それがそうなんじゃないかなーって。近くに大きな黒い山もあるし。それが火を噴いた山で… 建物跡を調べたら黄金がざくざくじゃないかな、的な」
「…………」
沈黙が怖かった。何より、ザキハの顔が怖かった。
「そう思うんなら、さっさと採石場を調べるがよかろう。何故、王都へ来た」
「ネオに… 刺繍を入れて貰おうと思って。お守り的なやつっす。王都で店出したって聞いたし、様子が気になったってのもあるんすけど… 長い事会ってなかったし」
「鳥は良いのか? えらい懸賞金が掛かっとるだろう。あるかどうかも分からん黄金都市を探すより、鳥を追いかけた方が金が手に入るぞ」
「正直、金より… 知りたいんすよ。
黄金都市が本当にあるのか。あったら、見てみたい」
ザキハの眉間の皺が更に深くなった。目を離したらいけないような気がして、ダヒルは圧倒的な圧に耐えた。
「ふんッ」
ザキハは短く鼻を鳴らすと、積み上げられた本の山から二冊抜き取って、台の上に置いた。
「そもそもお前達は、『パライアの火』の話をちゃんと知っておるのか?」
「子供の頃、教会で聞いたんで知ってるっすよ。パライアって女の人が、黄金の鳥を奪って、街が燃えて無くなるんすよね」
「大分色々抜けてるけど… でも、僕も教会で聞いた記憶しか無いです」
「そんな事だろうと思ったわ。神父が教会で話すやつは子供向けに短くしてある。子供は長い話なんぞ聞きゃせんからな。お前達が知っているのは…ほら、これだ」
ザキハが一冊の本を開く。薄明かりの下、ダヒルとネオは顔を近づけて読んだ。




