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ヤだ
「ねえ、稀子。教えてよ」
『嫌だ』
「即答かよ! まだ何か言ってないじゃないか!」
『嫌だ』
サーモンとアボガドのサンドウィッチをちょっとずつ齧りながら、稀子がぷいっと明後日の方を向く。
僕はマスコミ対策について聞くのを諦め、自分のチキンとサニーレタスのサンドウィッチに集中することにした。
昼食を食べ終えた僕らは、稀子の提案でマンションへ戻る道を歩いた。時間帯的には一日で最も暑い筈だけど、迷路道はじめじめとした日陰ばかりで涼しい。
「どこへ行くの?」
『マンションの向かいに、小さな家があっただろう』
「え? うん、あるよ。北側の北川さん家だね」
『洒落だな』
稀子がくすりと笑う。普段の老成した表情とは違う、柔らかな女の子らしい表情がとってもかわいい。
「普段からそういう表情、すればいいのに・・・・・・」
『うん? 何か言ったか?』
「いや、何も」
僕は慌てて笑いをおさめる。稀子はそんな僕の様子を不思議そうに見つめ、ちょっとだけ首を傾げた。




