23/36
俺に不可能はない
からん、ころん――。
「いらっしゃい」
かわいいドアベルの音、櫻井さんの静かな声。柔らかな紅茶の香りが僕の鼻をくすぐる。
「こんにちは。櫻井さん、美玖さん・・・・・・と、長谷川さんと高梨さん」
「おう」
鷹揚に片手をあげてみせる長谷川さんと、無言で軽く会釈をする高梨さん。
「えっと・・・・・・」
この二人が、何でここにいるんだろうか。
「どうしてこの店のことが分かったんですか?」
にやにやした長谷川さんが、ばちんとウィンクをきめる。日に焼けた頬がひきつり、歪んだ唇から鋭い犬歯が覗いた。幼い子どもなら一発で泣き出すだろう。
「警察に不可能はない。ましてや、この俺だ」
何だかもう意味が分からない。
「それより嬢、どうだ」
がらりと雰囲気が変わった。高梨さんの目が鋭くなり、長谷川さんも心なしか威圧するように身を乗り出している。
『大体のことは分かりました』
稀子は一歩も退かない。堂々とした態度で返し、小さい整った顔に凛とした表情を作る。
「犯人は?」
『いません』
「・・・・・・は?」
長谷川さんと高梨さんがぽかんとした表情で、座っている自分と背丈があまり変わらない少女を見つめた。僕も、あんな表情で稀子を見つめていたんだろうか。




