現場検証二回戦と困る警察官
佐々木さんの部屋は昨日のままになっているらしく、鍵も窓も開け放されたままだった。カーテンは昨夜の荒れ様が嘘のように穏やかに揺れ、ふんわりとベランダの稀子を見せたり隠したりしている。
稀子の身長と柵の高さは大体同じくらいだった。蒸発しきっていない雨水が、高級若竹の物干し竿を濡らし、日の光に輝いて見える。昨日の強風で上段のフックから外れてしまったのだろう。佐々木さんの足元で震えていた様子を思い出し、背筋がうっすらと寒くなった。
発泡スチロールの箱も、物干し竿と同じように転がっている。何もかもが昨日のまま。
「ん?」
僕の足が、何かを踏んだ。
「稀子、ちょっと」
稀子が振り返り、とてとてとこちらへ向かってくる。手にはなぜか発泡スチロールを持ち、思いっきり顔をしかめていた。
『何か見つかったのか?』
「うん。夏奈宛の手紙だと思う」
長谷川さんと高梨さんが、僕の手元を覗き込む。高梨さんが「指紋が・・・・・・」と呻いていたような気がするが、聞こえなかったことにする。
『貸して』
稀子は、その封筒を日に透かしたり、匂いを嗅いだりと不審な行動をとり続けていたが、やがて長谷川さんの方をちらりと見た。
封を切ってもいいか、と尋ねているのだろう。
二人とも渋い顔をしたが、やがてぱちぱちとアイコンタクトを取り始め、一分後に揃って首を縦に振った。
稀子は満足げに封筒を開けた。かわいらしいアニメキャラクターのシールで留めてあったその封筒は、既に開封されていたようだ。稀子が形のいい爪をかけると、簡単にシールは剥がれ、中から淡いピンク色をした便箋が滑り出してきた。
「差出人の名前はなし、ですか」
高梨さんが独り言を呟く。稀子は頷き、画面を見せた。
『読んでみて欲しい。事件の大筋は分かった』
僕たちは手紙を覗き込む。
「え・・・・・・?」
頭から一気に血の気が引いて、一瞬くらっとした。
誰が、こんなことを――?




