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外に出ると、雪は柔らかに冷たさを躍らせていた。
「あの、ここにはいつでも来られるんでしょうか?」
紫穂は玄関灯を少し過ぎた先で、ヴェーラを振り返る。
「はい。きっとまた」
ヴェーラはにっこり笑い返すのだが、思い出したように言い足した。
「ああでも、ぐうぜん辿り着く方もいらっしゃるんですよ。模様替えをしたり、掃除をした時とか。本棚の裏側に落としてしまったものを拾うのに、本をどかした時とか」
紫穂は笑ってしまった。けれども、ふと想像してみる。今までにも掃除をしたことはあるが、辿り着いたことはない。となると、何かしらの条件が重ならねばならないのではと思った。
「ところで紫穂さん。戻られてからは執筆ですか?」
ヴェーラはいつの間にか、ふわりふわりとしたステップでレンガの地面に足跡をつけていく。
「はい。すぐにでもパソコンに向かっちゃうと思います。何だか書けそうな気がして」
来た時はとても寒かったけれど、今は身体の芯から温かい。いや、熱いのだ。熱いものが全身に巡り、いきいきと漲っている。もっとスパイスを効かせられるような刺激を取り入れてしまっていいのかもしれない。生きることに刺激はつきもので、それがあるから選択が生まれる。そう思いつくと、紫穂はブックマーカーを握り締めた。
「それはいいですね。ではやはり、その勢いで穴の中から踏み出してみるのはいかがでしょう? せっかくですから」
その言葉に、紫穂はパッと顔を上げる。ところが、先ほどまで目の前にいたヴェーラがどこにもおらず、わたわたと辺りを見回した。そしてくるりと背後を向いた時、一体いつ戻ったのか、ヴェーラは玄関扉の鉄輪を握ってニコやかに手を振っていた。
「紫穂さんの物語、引き続き読ませていただきますね。矛盾してしまう心模様、とてもリアルでドラマチックです。自分以外の人にも、不完全さや矛盾した気持ちがあるんだと思わせくれるのは、とてもホッとします。そういった方は、世界中にもいらっしゃいます」
「え!? 読んで下さってたんですか!?」
ふふふっと笑いに合わさりながら、扉はいよいよ閉まろうとする。
「ああちょっと! ヴェーラさん、私どうやって――」




