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*新作 完結* 本棚の向こう側  作者: Terra
◆ 指摘の波にビビる櫂 ◆
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         *




 埃のかたまりがひゅるひゅるっと緑色の光に変わり、宙を舞って消えた。一つ、また一つと追って見つめている間に、蟲の聲が微かにきこえると


「えっ!?」


 少し冷えた夏の風が、辺りの木々を揺らして音を運んできた。緑色の光がまた、目の前を糸を引くようにして舞っていく。


「蛍……そんな祭りしてたっけ? っていうか僕、部屋に」


 何故外にいるのか。そして何処の地域にいるのか。辺りを見回してから正面を向き直ると、ぼうっと浮かび上がる灯と二枚扉に気づいた。しかし足が竦んでいる。灯があっても周囲が薄暗いので、何かが出てくるのではないかと身をすぼめてしまう。とその時、ギイイッと音がした。


「ひいっ!?」


 藍斗は後ずさるも、そこを確かめたさに足が止まる。おさげをした人が軽やかに現れたかと思うと、ぺこりとお辞儀をした。


「お待ちしておりました、藍斗さん。こんばんは」


「ええっ!? こ、こん、ばん、は……」


 とりあえず喋ってみれば気が落ち着くだろうかと、藍斗は素直に挨拶をしてみる。


「まだまだ蒸しますので、どうぞ中に。涼しいですので、おくつろぎ頂けますよ。たくさんの本と、お飲み物がございます」


「……ブックカフェ的なところですか?」


「お仲間のようなものです。私は案内を務めます、ヴェーラです。どうぞこちらへ」


 日本語がとても上手だと、藍斗はすっかり力が抜けてしまった。同い年くらいだろうか、どこの国の人だろうかと、恐怖心は湧き出る疑問に変わっていく。


 まだ夏の明るさを残した空が、建物を形作っているようだった。その先に何があるのかと胸が鳴る最中、一筋の光が壁面を走った。


「流れ星!?」


 子どものように声を張り上げてしまうと、ヴェーラが笑い返した。


「はい。今夜はいいことがありますよ、きっと」


 扉が更に開かれると、書籍の香りが涼やかな風と共に流れ出た。藍斗は小さく会釈し、上目遣いで中をきょろきょろと探る。


「お、お邪魔しまぁす……」


 不思議な光がところどころで存在感を放つのを眺めていると、草履が用意された。


「足元が冷えますので」


 言いながらこちらを見上げるヴェーラに、藍斗はギョッと身体が引き締まる。そして、そのキレイな手が離れていくのをちゃんと確かめてから、そそくさとそこに足を通した。






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